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本編
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その日は、とても楽しい夢を見て目が覚めた。
でも、それと同時に涙が俺の頬を伝い、何故だか分からないが胸の奥に何か重たいものが突っかかっていた。
「おはよう。ルーク」
「リアムさん!おはようございます!」
いつもと同じ朝。
慣れた手つきで俺の身の回りの世話をする。
それは、嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
「すまないが、今日も·····」
「大丈夫です!」
すまない、とまた言い眉を下げる。
その顔に不覚にも嬉しい、と思ってしまった。
街に出掛けてからというもの、リアムさんは忙しい。
朝は会えるが、その後の時間はほぼほぼ会えない。
そして、それが少し寂しい。
俺と共に朝食を済ますと、リアムさんは俺の額にキスを落とし部屋から出ていった。
さて、何をしようか。
今の俺は暇を持て余している。
ここに住ませてもらっている立場なのに、お手伝いをしたいと言うと、返ってくる言葉は毎回決まっている。
王妃様も国王様も、時間がある時は俺に会いに来てくれる。
何故そこまでして面倒を見てくれるのかが分からないが、恐らくこの見た目だろう。
俺はこの髪が嫌いだ。
この目が嫌いだ。
好きになれない。
人を不幸にさせる。
俺をダメにさせる。
生きている価値ってなんだろう。
リアムさん達は俺に良くしてくれる。
もちろんメイドの人達も。
でも、もしこの見た目だからといってここまでしてくれていたら?
俺の存在価値はそれ?
あぁ、そうかも。
だって、
『汚らしい』
俺には、
『早く死んでくれないかしら』
それ以外
『早く行け、悪魔が』
取り柄がない。
きっと俺は毒されている。
1度考えてしまうと、もうそうとしか思えない。それは、誰がなんと言おうと変わらない。
胸の中にもう1人の俺が現れる。
次第に存在感を増していくそれは俺の気持ちを全て落とす。
そして、頭の回転が異様に速くなる。
リアムさんは違う。
『そんなことは無い』
あの人は安心出来る。
『どうせすぐ裏切る』
ちゃんと俺自身を見てくれる。
『それはただの思い込み』
俺の、見た目だけじゃない。
『見た目以外に何があるのさ』
それは、
『ほら、言えない』
そんなこと、
『ない。なんて、言えないよね?じゃあ何が出来るの?』
もう1人の俺は、俺の言葉を全て否定する。
『料理?掃除?勉強?どれも出来ないよね?君の見た目なら、娼館にでも行けば儲かるんじゃない?』
もう、
『これでもまだ、迷惑かけるつもり?』
これ以上
『早く去りなよ』
聞きたくない。
俺は、真っ黒に染った心を静かにしまい、いつも通りの顔に戻した。
でも、それと同時に涙が俺の頬を伝い、何故だか分からないが胸の奥に何か重たいものが突っかかっていた。
「おはよう。ルーク」
「リアムさん!おはようございます!」
いつもと同じ朝。
慣れた手つきで俺の身の回りの世話をする。
それは、嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
「すまないが、今日も·····」
「大丈夫です!」
すまない、とまた言い眉を下げる。
その顔に不覚にも嬉しい、と思ってしまった。
街に出掛けてからというもの、リアムさんは忙しい。
朝は会えるが、その後の時間はほぼほぼ会えない。
そして、それが少し寂しい。
俺と共に朝食を済ますと、リアムさんは俺の額にキスを落とし部屋から出ていった。
さて、何をしようか。
今の俺は暇を持て余している。
ここに住ませてもらっている立場なのに、お手伝いをしたいと言うと、返ってくる言葉は毎回決まっている。
王妃様も国王様も、時間がある時は俺に会いに来てくれる。
何故そこまでして面倒を見てくれるのかが分からないが、恐らくこの見た目だろう。
俺はこの髪が嫌いだ。
この目が嫌いだ。
好きになれない。
人を不幸にさせる。
俺をダメにさせる。
生きている価値ってなんだろう。
リアムさん達は俺に良くしてくれる。
もちろんメイドの人達も。
でも、もしこの見た目だからといってここまでしてくれていたら?
俺の存在価値はそれ?
あぁ、そうかも。
だって、
『汚らしい』
俺には、
『早く死んでくれないかしら』
それ以外
『早く行け、悪魔が』
取り柄がない。
きっと俺は毒されている。
1度考えてしまうと、もうそうとしか思えない。それは、誰がなんと言おうと変わらない。
胸の中にもう1人の俺が現れる。
次第に存在感を増していくそれは俺の気持ちを全て落とす。
そして、頭の回転が異様に速くなる。
リアムさんは違う。
『そんなことは無い』
あの人は安心出来る。
『どうせすぐ裏切る』
ちゃんと俺自身を見てくれる。
『それはただの思い込み』
俺の、見た目だけじゃない。
『見た目以外に何があるのさ』
それは、
『ほら、言えない』
そんなこと、
『ない。なんて、言えないよね?じゃあ何が出来るの?』
もう1人の俺は、俺の言葉を全て否定する。
『料理?掃除?勉強?どれも出来ないよね?君の見た目なら、娼館にでも行けば儲かるんじゃない?』
もう、
『これでもまだ、迷惑かけるつもり?』
これ以上
『早く去りなよ』
聞きたくない。
俺は、真っ黒に染った心を静かにしまい、いつも通りの顔に戻した。
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