騎士団長の溺愛計画。

どらやき

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「大丈夫か?もう泣かなくて良いんだよ?」  
「っ、はい」

あれ程泣いていたのに、クルーウェルさんの腕の中はとても落ち着き、いつの間にか涙は引っ込んでいた。

俺は今、クルーウェルさんに姫抱きをされていて、部屋まで向かっている。

「どうして逃げたんだ?」  
「·······こ、わかっ、た····」
「メイドが?」
「ち、がう。」
「人が?」
「コクン」

怒られると思っていたから、ここまで優しい聞き方をされて正直驚いた。

長い廊下をゆっくりと歩いて部屋に向かっていると、1人の男声と目が合った。
その人は、俺を見るなり目を輝かせていた。

(·········誰?)

気になりクルーウェルさんを見上げる。
すると、クルーウェルさんも彼のことを見ていた。

「ニール」

(·····え····ニールって、兄様と同じ····)

混乱している頭を回してよく考えた。

(同姓同名?······でも、この国にいるはず、ない····)

ゆっくりとこちらに寄ってくる彼に少し恐怖を覚えた。彼が怖いのではなく、単に人が怖いだけだ。

俺はクルーウェルさんの、服にギュッと力を入れて顔を埋めた。

そして、優しく背中を叩いてくれた。

「·······ルーク?」

(····今、俺の名前·········)

思わず反応してしまい、顔を上げる。

「あぁ、お前の弟だ。」

(え、ってことは·····)

「に、さま?」
「あぁ。」 

彼の代わりにクルーウェルさんが答えてくれた。

俺は、兄様とは会ったことがないから顔は分からないし、どんな人なのかも知らない。

でも、どこか懐かしい気持ちになる。

「ルーク」

兄様は、俺のほうに寄って、頭を軽く撫でた。怖いはずなのに、俺の脳がこの人は安全だと言っている。

「·····っ、にぃ、さ、まっ·····」

俺はクルーウェルさんの腕の中から、両手を兄様に伸ばした。

兄様は、俺の脇を優しく掴むとそのまま抱っこをしてくれた。

「ごめん。ごめん。ルーク」
「ううんっ、······会い、たかった····」
「うん。俺も。」

兄様が、俺を避けていたと聞かされていたけど、この様子だとそれはないと確信した。

その後、3人で少し話をしたけど、兄様の抱っこは、なんか違った。

(············クルーウェルさんが、良い)

そう思い、次は両手をクルーウェルさんに伸ばした。

「ん?」

クルーウェルさんはきっと分かっているけど、ニヤニヤしながら聞いてきた。

「········抱っこ······」
「ふっ、ああ」

そう言って抱き抱える。

(あ、やっぱ安心する······)

その様子に兄様は、

「リアムめ。妬けるな~」

と呟いていた。
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