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ルークside
眠っていたはずが、廊下の物音によって目が覚めた。
(·····ん·····何·····)
廊下は何があったのか分からないが、複数人の足音が響いていた。
そして、その音に体がすくむ。
あの家に居た頃、廊下が騒がしくなるのは決まって俺に何かが加われる時だけだった。
(······怖いよ·····寒いよ·····もう、嫌だ····)
一粒の涙が俺の顎を伝う。
そして、もうどれほど泣いたのだろう。俺の感情なんか無視をして次々と溢れてくる涙と声。
必死に抑えようと、両手を口に当て、その手を目に持っていく。
そのせいで、目がどんどんと痛くなる。
「ぅ·······ふっ·····っ」
思わず上の歯で唇を強く噛む。
(誰か······1人にしないで········)
怖くて逃げたくせに何言ってんだ、と自分でも思う。
(···········誰か····················あ)
その時、俺の脳裏に浮かんだのはクルーウェルさんだった。あの笑顔が好き。
あの人は安心出来る。
あの人と一緒がいい。
あの人じゃなきゃ嫌だ。
(·········会いたい·····)
俺は、まだ人を完全に信じることが出来ていない。いや、信じられない。
信じて裏切られるのが怖い。
裏切られるくらいなら、最初から信じなければいい。
俺の何色でもない世界に、一筋の光が差したとする。そして、それがいつか閉ざしてしまうのなら、俺の世界は一生真っ黒でいい。
1人ひざを抱えてうずくまっていると、聞き慣れた声が聞こえた。
「ルーク?居るか?」
(···········え·····)
いつもの優しいノック音が聞こえた。
そして、ドアが開く。
クルーウェルさんは、きょろきょろと部屋を見渡して、俺を見つけるととても安心したような顔を見せた。
「ルーク?俺だよ。リアムだよ。」
俺の聞きたかった声が、優しく俺の名前を呼ぶ。
クルーウェルさんは、まるで俺の目線に合わせるように膝を床に着いた。
その行動ひとつひとつに、温かさをかんじる。
「······あ、···ぅん···うぅっ」
思わず溜め込んでいた涙と声が詰まりながら出てきた。
そして、迷うことなくクルーウェルさんの胸に飛び込む。
「·····ルーク?」
もう一度そう呼んで、今度は俺を抱き締める。
「大丈夫。怖くないよ。」
不思議と、止まらず涙が溢れ出た。
眠っていたはずが、廊下の物音によって目が覚めた。
(·····ん·····何·····)
廊下は何があったのか分からないが、複数人の足音が響いていた。
そして、その音に体がすくむ。
あの家に居た頃、廊下が騒がしくなるのは決まって俺に何かが加われる時だけだった。
(······怖いよ·····寒いよ·····もう、嫌だ····)
一粒の涙が俺の顎を伝う。
そして、もうどれほど泣いたのだろう。俺の感情なんか無視をして次々と溢れてくる涙と声。
必死に抑えようと、両手を口に当て、その手を目に持っていく。
そのせいで、目がどんどんと痛くなる。
「ぅ·······ふっ·····っ」
思わず上の歯で唇を強く噛む。
(誰か······1人にしないで········)
怖くて逃げたくせに何言ってんだ、と自分でも思う。
(···········誰か····················あ)
その時、俺の脳裏に浮かんだのはクルーウェルさんだった。あの笑顔が好き。
あの人は安心出来る。
あの人と一緒がいい。
あの人じゃなきゃ嫌だ。
(·········会いたい·····)
俺は、まだ人を完全に信じることが出来ていない。いや、信じられない。
信じて裏切られるのが怖い。
裏切られるくらいなら、最初から信じなければいい。
俺の何色でもない世界に、一筋の光が差したとする。そして、それがいつか閉ざしてしまうのなら、俺の世界は一生真っ黒でいい。
1人ひざを抱えてうずくまっていると、聞き慣れた声が聞こえた。
「ルーク?居るか?」
(···········え·····)
いつもの優しいノック音が聞こえた。
そして、ドアが開く。
クルーウェルさんは、きょろきょろと部屋を見渡して、俺を見つけるととても安心したような顔を見せた。
「ルーク?俺だよ。リアムだよ。」
俺の聞きたかった声が、優しく俺の名前を呼ぶ。
クルーウェルさんは、まるで俺の目線に合わせるように膝を床に着いた。
その行動ひとつひとつに、温かさをかんじる。
「······あ、···ぅん···うぅっ」
思わず溜め込んでいた涙と声が詰まりながら出てきた。
そして、迷うことなくクルーウェルさんの胸に飛び込む。
「·····ルーク?」
もう一度そう呼んで、今度は俺を抱き締める。
「大丈夫。怖くないよ。」
不思議と、止まらず涙が溢れ出た。
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