13 / 26
11
しおりを挟む
リアムside
「では、話を始めよう。」
俺たち3人は用意された椅子に座り、固い空気の中話を聞くことになった。
「今日集まってもらったのは、他でもない、あの少年についてだ。····あの少年の名前は、ルーク・ウィバースという。」
(·········え)
「「····ウィバース?」」
俺の声に被さるように、ニールの声が重なった。
(まさか、お前も知らなかったのか?)
隣にいるニールを見ると、顔が青ざめ、膝上に置かれている拳は血が出るほど強く握り締められ、白くなっていた。
「·····えぇ。ニール、貴方の弟よ。」
そう言ったのは、国王様ではなく王妃様だった。
その声に、いち早く反応したのは、ニールだった。そして、王妃様の声を聞くなり、涙を浮かべた。
「······は、母上?」
弱々しい声だった。
(·······母上?王妃様はニールの母に当たる人なのか?)
何も分からない俺とアルベルトは共に顔を合わせ首を傾げた。
「久しぶりね。ニール。」
「·····っ、はい久しぶりです。お元気でしたか?」
「ええ。貴方は?」
「とても充実していました。」
「そう。良かったわ。」
2人は共に微笑みあって、とても幸せそうだった。そして、国王様も幸せそうだった。
「······あの、よく分からないのですが··」
アルベルトが挙手をして質問をした。
「ごめんなさいね。私が、一度離婚を経験しているのはご存じよね?」
「はい」
「その離婚相手は、ニールの父、つまりアシタナ王国のウィバース公爵家の当主とだったの。」
「その人は、ルークの父にあたる人ですね?」
「ええ、そうよ。」
王妃様の声が段々と低くなり、顔も苦しい顔になった。
(····ウィバース·····)
俺はその人に対して怒りが止まらなかった。そして、それは同じくニールもだった。ニールは額に青筋を浮かべていた。
「ニール、貴方はルークと会わせて貰えなかった、で宜しいですか?」
「はい」
「何故だか分かりますか?」
「大体の予想は付きますが、詳しくは分かりません。」
「そう。じゃあ、全て話していくわ。」
王妃様は、今から言うことは他言無用で、と言い話し始めた。
「リアムさんは、もう知っていますが、ルークはウィバース公爵家の人達から暴力を受けていました。恐らく、暴力だけでなく精神的なものもあると思います。暴力の身体的影響は大きく、腕と足の骨折による、腫脹や皮下出血。頭蓋内出血、火傷、そして臓器機能低下、日常的に行われてきたと思われるお腹の痣など、沢山残っていました。」
凛とした声で、隠すことなくハッキリと話すその姿はとても威厳があった。
「···っ、あの野郎·····」
ニールの口からは、普段にこやかなニールから出たとは思えないほど低く響く声が出た。
「ニール、今あの人達を恨んだ所でルークが傷ついた事実は変わりません。」
「····っ、はい」
「ですので、私達と手を組みませんか?」
「手を組む?」
王妃様に変わって、国王様が答える。
「あぁ。そうだ。ニール、そなたはアシタナ王国の騎士団長をやっているらしいな?」
「はい」
「アシタナ王国の住民達に聞くと、そなたはさぞかし好かれているらしいな。」
「······それは、····」
「そなたは、国のため、住民のため、自分を捨ててまで人を助けようとしたことが何度もある。それは、我々の国でも有名になっておる。」
「·····光栄です。」
確かに、スプロンドゥ王国でも、ニール騎士団長の話は騎士団の中でも持ち切りになっている。
そして彼は、多くの国で好評を受けている。その事実は本物だ。
「私は、ウィバース公爵家当主の性格に耐えきれず離婚を望みました。ルークとニールを私が引き取ろうとしましたが、この有様です。」
そう言って王妃様は、右腕の傷を見せてくれた。そこには、刃物で刺されたような痛々しい傷跡が残っていた。
「これは、当主に刺された時のものです。私はまだこの傷のお礼を返せていません。ですので、落とすという考えに至りました。」
(·····落とす?)
つまり、
「爵位を奪うという事ですか?」
気が付けば勝手に声が出ていた。
「ええ、そういう事よ。アシタナ国王は、ルークの存在に気づいていなかった。でも、ウィバース公爵家の社交界での動きから、何かを察したようで少しずつ罠を仕掛けていってくれたの。」
「罠、ですか。」
「簡単なものだけどね。でも、その小さな事で彼らは反発をルークに向けた。ウィバース公爵家には、クレイというメイドがいるのだけど、その子が証言してくれたわ。」
王妃様の手の周りが早すぎて、この場にいる皆が何も物を言えなくなった。
それほど、ウィバース公爵家に怒りを持っているということだ。
普段温厚で、優しい王妃様だけど、ここまで怒っている王妃様は初めてで新鮮に感じた。
「では、話を始めよう。」
俺たち3人は用意された椅子に座り、固い空気の中話を聞くことになった。
「今日集まってもらったのは、他でもない、あの少年についてだ。····あの少年の名前は、ルーク・ウィバースという。」
(·········え)
「「····ウィバース?」」
俺の声に被さるように、ニールの声が重なった。
(まさか、お前も知らなかったのか?)
隣にいるニールを見ると、顔が青ざめ、膝上に置かれている拳は血が出るほど強く握り締められ、白くなっていた。
「·····えぇ。ニール、貴方の弟よ。」
そう言ったのは、国王様ではなく王妃様だった。
その声に、いち早く反応したのは、ニールだった。そして、王妃様の声を聞くなり、涙を浮かべた。
「······は、母上?」
弱々しい声だった。
(·······母上?王妃様はニールの母に当たる人なのか?)
何も分からない俺とアルベルトは共に顔を合わせ首を傾げた。
「久しぶりね。ニール。」
「·····っ、はい久しぶりです。お元気でしたか?」
「ええ。貴方は?」
「とても充実していました。」
「そう。良かったわ。」
2人は共に微笑みあって、とても幸せそうだった。そして、国王様も幸せそうだった。
「······あの、よく分からないのですが··」
アルベルトが挙手をして質問をした。
「ごめんなさいね。私が、一度離婚を経験しているのはご存じよね?」
「はい」
「その離婚相手は、ニールの父、つまりアシタナ王国のウィバース公爵家の当主とだったの。」
「その人は、ルークの父にあたる人ですね?」
「ええ、そうよ。」
王妃様の声が段々と低くなり、顔も苦しい顔になった。
(····ウィバース·····)
俺はその人に対して怒りが止まらなかった。そして、それは同じくニールもだった。ニールは額に青筋を浮かべていた。
「ニール、貴方はルークと会わせて貰えなかった、で宜しいですか?」
「はい」
「何故だか分かりますか?」
「大体の予想は付きますが、詳しくは分かりません。」
「そう。じゃあ、全て話していくわ。」
王妃様は、今から言うことは他言無用で、と言い話し始めた。
「リアムさんは、もう知っていますが、ルークはウィバース公爵家の人達から暴力を受けていました。恐らく、暴力だけでなく精神的なものもあると思います。暴力の身体的影響は大きく、腕と足の骨折による、腫脹や皮下出血。頭蓋内出血、火傷、そして臓器機能低下、日常的に行われてきたと思われるお腹の痣など、沢山残っていました。」
凛とした声で、隠すことなくハッキリと話すその姿はとても威厳があった。
「···っ、あの野郎·····」
ニールの口からは、普段にこやかなニールから出たとは思えないほど低く響く声が出た。
「ニール、今あの人達を恨んだ所でルークが傷ついた事実は変わりません。」
「····っ、はい」
「ですので、私達と手を組みませんか?」
「手を組む?」
王妃様に変わって、国王様が答える。
「あぁ。そうだ。ニール、そなたはアシタナ王国の騎士団長をやっているらしいな?」
「はい」
「アシタナ王国の住民達に聞くと、そなたはさぞかし好かれているらしいな。」
「······それは、····」
「そなたは、国のため、住民のため、自分を捨ててまで人を助けようとしたことが何度もある。それは、我々の国でも有名になっておる。」
「·····光栄です。」
確かに、スプロンドゥ王国でも、ニール騎士団長の話は騎士団の中でも持ち切りになっている。
そして彼は、多くの国で好評を受けている。その事実は本物だ。
「私は、ウィバース公爵家当主の性格に耐えきれず離婚を望みました。ルークとニールを私が引き取ろうとしましたが、この有様です。」
そう言って王妃様は、右腕の傷を見せてくれた。そこには、刃物で刺されたような痛々しい傷跡が残っていた。
「これは、当主に刺された時のものです。私はまだこの傷のお礼を返せていません。ですので、落とすという考えに至りました。」
(·····落とす?)
つまり、
「爵位を奪うという事ですか?」
気が付けば勝手に声が出ていた。
「ええ、そういう事よ。アシタナ国王は、ルークの存在に気づいていなかった。でも、ウィバース公爵家の社交界での動きから、何かを察したようで少しずつ罠を仕掛けていってくれたの。」
「罠、ですか。」
「簡単なものだけどね。でも、その小さな事で彼らは反発をルークに向けた。ウィバース公爵家には、クレイというメイドがいるのだけど、その子が証言してくれたわ。」
王妃様の手の周りが早すぎて、この場にいる皆が何も物を言えなくなった。
それほど、ウィバース公爵家に怒りを持っているということだ。
普段温厚で、優しい王妃様だけど、ここまで怒っている王妃様は初めてで新鮮に感じた。
68
お気に入りに追加
2,918
あなたにおすすめの小説

総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

お前ら、、頼むから正気に戻れや!!
彩ノ華
BL
母の再婚で俺に弟が出来た。義理の弟だ。
小さい頃の俺はとにかく弟をイジメまくった。
高校生になり奴とも同じ学校に通うことになった
(わざわざ偏差値の低い学校にしたのに…)
優秀で真面目な子と周りは思っているようだが…上辺だけのアイツの笑顔が俺は気に食わなかった。
俺よりも葵を大事にする母に腹を立て…家出をする途中、トラックに惹かれてしまい命を落とす。
しかし目を覚ますと小さい頃の俺に戻っていた。
これは義弟と仲良くやり直せるチャンスなのでは、、!?
ツンデレな兄が義弟に優しく接するにつれて義弟にはもちろん愛され、周りの人達からも愛されるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる