騎士団長の溺愛計画。

どらやき

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リアムside

「では、話を始めよう。」

俺たち3人は用意された椅子に座り、固い空気の中話を聞くことになった。

「今日集まってもらったのは、他でもない、についてだ。····あの少年の名前は、ルーク・ウィバースという。」

(·········え)

「「····ウィバース?」」

俺の声に被さるように、ニールの声が重なった。

(まさか、お前も知らなかったのか?)

隣にいるニールを見ると、顔が青ざめ、膝上に置かれている拳は血が出るほど強く握り締められ、白くなっていた。

「·····えぇ。ニール、貴方の弟よ。」

そう言ったのは、国王様ではなくだった。

その声に、いち早く反応したのは、ニールだった。そして、王妃様の声を聞くなり、涙を浮かべた。

「······は、母上?」

弱々しい声だった。

(·······母上?王妃様はニールの母に当たる人なのか?)

何も分からない俺とアルベルトは共に顔を合わせ首を傾げた。

「久しぶりね。ニール。」
「·····っ、はい久しぶりです。お元気でしたか?」
「ええ。貴方は?」
「とても充実していました。」
「そう。良かったわ。」

2人は共に微笑みあって、とても幸せそうだった。そして、国王様も幸せそうだった。

「······あの、よく分からないのですが··」

アルベルトが挙手をして質問をした。

「ごめんなさいね。私が、一度離婚を経験しているのはご存じよね?」
「はい」
「その離婚相手は、ニールの父、つまりアシタナ王国のウィバース公爵家の当主とだったの。」
「その人は、ルークの父にあたる人ですね?」
「ええ、そうよ。」

王妃様の声が段々と低くなり、顔も苦しい顔になった。

(····ウィバース·····)

俺はその人に対して怒りが止まらなかった。そして、それは同じくニールもだった。ニールは額に青筋を浮かべていた。

「ニール、貴方はルークと会わせて貰えなかった、で宜しいですか?」
「はい」
「何故だか分かりますか?」
「大体の予想は付きますが、詳しくは分かりません。」
「そう。じゃあ、全て話していくわ。」

王妃様は、今から言うことは他言無用で、と言い話し始めた。

「リアムさんは、もう知っていますが、ルークはウィバース公爵家の人達から暴力を受けていました。恐らく、暴力だけでなく精神的なものもあると思います。暴力の身体的影響は大きく、腕と足の骨折による、腫脹や皮下出血。頭蓋内出血、火傷、そして臓器機能低下、日常的に行われてきたと思われるお腹の痣など、沢山残っていました。」

凛とした声で、隠すことなくハッキリと話すその姿はとても威厳があった。

「···っ、あの野郎·····」

ニールの口からは、普段にこやかなニールから出たとは思えないほど低く響く声が出た。

「ニール、今あの人達を恨んだ所でルークが傷ついた事実は変わりません。」
「····っ、はい」
「ですので、私達と手を組みませんか?」
「手を組む?」

王妃様に変わって、国王様が答える。

「あぁ。そうだ。ニール、そなたはアシタナ王国の騎士団長をやっているらしいな?」
「はい」
「アシタナ王国の住民達に聞くと、そなたはさぞかし好かれているらしいな。」
「······それは、····」
「そなたは、国のため、住民のため、自分を捨ててまで人を助けようとしたことが何度もある。それは、我々の国でも有名になっておる。」
「·····光栄です。」

確かに、スプロンドゥ王国でも、の話は騎士団の中でも持ち切りになっている。

そして彼は、多くの国で好評を受けている。その事実は本物だ。

「私は、ウィバース公爵家当主の性格に耐えきれず離婚を望みました。ルークとニールを私が引き取ろうとしましたが、この有様です。」

そう言って王妃様は、右腕の傷を見せてくれた。そこには、刃物で刺されたような痛々しい傷跡が残っていた。

「これは、当主に刺された時のものです。私はまだこの傷のお礼を返せていません。ですので、という考えに至りました。」

(·····落とす?)

つまり、

という事ですか?」

気が付けば勝手に声が出ていた。

「ええ、そういう事よ。アシタナ国王は、ルークの存在に気づいていなかった。でも、ウィバース公爵家の社交界での動きから、何かを察したようで少しずつ罠を仕掛けていってくれたの。」
「罠、ですか。」
「簡単なものだけどね。でも、その小さな事で彼らは反発をルークに向けた。ウィバース公爵家には、クレイというメイドがいるのだけど、その子が証言してくれたわ。」

王妃様の手の周りが早すぎて、この場にいる皆が何も物を言えなくなった。

それほど、ウィバース公爵家に怒りを持っているということだ。

普段温厚で、優しい王妃様だけど、ここまで怒っている王妃様は初めてで新鮮に感じた。




 


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