騎士団長の溺愛計画。

どらやき

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その日は、目覚めが悪かった。

体は至る所が痛んで、お腹を見れば複数の痣で埋め尽くされていた。

時期は冬だというのに、薄っぺらな布団一枚で俺はなんとか朝を迎えている。
よれた服を着せられ、湯浴みもろくにさせてもらえない。

唯一、俺は水の魔法を使えるから、お湯に変えてシャワーとして使うことができる。

でも、このことは家族は知らない。

知っているのは、クレイとセバスだけだ。

すると、ドアがコンコンとノックされた。静かに入ってきたのは、父だった。

父は俺の前に立つと、笑みを浮かべた。非常に気味が悪かった。

「ルーク、お前にはここを出てもらう。」

たったその一言だけだった。

でも、その言葉で理解してしまった。

出たいと、この生活から抜け出したいと思ったのは、俺だ。

こんなこと言うなんて、矛盾していると思う。でも、ここから出たらどこに行けばいい?

嬉しいはずなのに、心配の方が大きくて下を向いた。
父は、俺の腕を強引に引っ張り部屋から出そうとした。

俺は、抵抗はしなかったが、母から貰ったネックレスだけ手に取った。

腕を強く引っ張られ、俺の後ろには義母と義姉がニンマリと笑っていた。

「あら、もうお別れですの?寂しいですわぁ。」
「ええ、ダリアの言う通りよ。ごめんなさいねぇ、こんな母親で。」
「·····さっさと行け。悪魔が。」

思ってないことをスラスラと口にする義母達。俺を軽蔑の目で見る父。

俺は言われるがままに家を出た。

(こらから、どうしよう·····)

俺は5歳の頃から外の世界に出たことがない。故に、頼れる人が居ない。
不思議と、母との記憶が蘇る。そこには、優しく微笑む父の姿。

「ふっ·······ぅ、っ······」

冷たい空気と涙が俺の頬を伝う。雪が降っていないのが不幸中の幸いだ。

行く宛のない俺は、森へと足を運んだ。

パキパキと裸足で小枝を踏む音が響く。

一体何分歩いたのだろうか。
ここは何処なのだろうか。

裸足で追い出され、薄い服を着せられ、俺の体には、いくつもの傷口が出来ていた。傷口から出血した血は寒さであまり流れなかった。

喉が痛くなり、咳をする。

「げほっ、····お、ぇ·······え」

1度しただけで口から血が出ていた。そして、口の中は鉄の味がした。

寒さや痛さで震える足を、必死に動かして大きな木の陰に入る。

意識が朦朧としていて、目の前の景色がぼやけて見える。

(···あぁ、ここで死ぬんだ·····)

吐く息の量が少なくなり、手足の先は感覚がなかった。

そして俺は、木に体を預けるようにして眠りに落ちた。

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