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SIDE 会長
しおりを挟む昼食を取る料亭に車は止まった
外からドアが開けられ、俺と穂高と咲良が降りる
前の車に乗っていた旬と光一も既に降りている
「静流、ちょっといいですか?」
旬が俺の腕に張り付いたままの咲良に視線を向けると咲良は大人しく手を離し穂高の元へ行く
「どうした?」
「璃一君が途中で体調が悪くなり晶達と車を降りたそうです。ホテルをとったそうで、これからは別行動をするとの事でした。」
「そうか……ん?晶"達"??」
「セイ君も晶達の車に乗ってたそうですよ。」
「は?お前達と一緒じゃなかったのか?」
「それはこちらのセリフですよ。何故セイ君を放ったらかして咲良とイチャついてるんですか?」
旬は冷たい目で俺を睨む
「イチャついてなんか「傍から見れば仲睦まじい恋人同士のようでしたよ。彼女の事、セイ君達に紹介しました?もし紹介もしてないなら……セイ君はどう思ったでしょうね?」
俺の言葉に被せ話す旬の言葉に頭を殴られた
紹介………してないよな…
食事の時に紹介しようと思ってたから…けど別行動ってことは食事に来ない…
急いでセイのスマホに電話する
呼び出し音が流れるだけでセイは出ない
「…クソッ………」
セイの元へ行こうと踵を返す
「何処に行くつもりですか?」
尚も冷たい視線を向けてくる旬
「何処ってセイの所に決まってるだろ!」
「場所も知らないくせに?それに、この後食事が終わったら吾妻組長へ挨拶をしに屋敷へ向かい、その後はパーティーへ出席予定でしょう?そんな時間ありませんよ。」
「…旬」
「私はセイ君のホテルを教える気も予定を変更する気もありませんよ。せっかくスケジュール調整して貴方達が一緒に過ごせるようにしたのに、自分から放棄した貴方に私は怒っていますから。
セイ君を大切に出来無いなら、初めから手を伸ばすべきじゃない。」
旬の言っていることは正論だ
セイに会えて浮かれてた
咲良に気づいた時にちゃんと話しておけば良かったんだ
セイはあの時何を思った?
そんなつもりが無くても、セイを傷つけ蔑ろにした………
電話に出ないのは俺に呆れた?嫌いになった………?胸が痛い…セイは泣いてないか?……いや、璃一の前では泣いたりしないだろう…仮面を被って普通の顔をしているのか………
「さぁ、さっさと行きますよ」
旬の言葉に黙って従う
セイ………セイ……ごめん………傷つけてごめん………一人にしてごめん…不安にさせてごめん……それでも…手を離したくない……
穂高達が待つ所へ向かうと、穂高が俺の顔を見て眉を潜めた
「おい……アイツらは?」
「璃一君が体調を崩し途中で車を降りました。彼らはホテルを取り別行動をするそうです。」
俺の代わりに旬が答える
「しーくん、やっと戻ってきた!」
嬉しそうにこちらへやってくる咲良に、穂高がストップをかける
「咲良、いい加減にしろ。静流に纏わり付くな。」
「そんな言い方酷いわ!!しー君だって嫌がってへんもん!」
「嫌がる嫌がらないの話じゃない。子供じゃないんだ、TPOを弁えろ。それにお前は勝手に付いてきただけだろ。邪魔をするなら今すぐ帰れ。」
ピシャリと言う穂高に、咲良は泣きそうな顔になる
「静流に必要以上に近寄るな。俺の言う事が聞けないならお前であっても力ずくで従わせる。わかったか?」
穂高がそう言うと、コクコクと首を振る
「静流…咲良が悪かった。食事は気にしなくて良い、親父にも伝えておくから行って来い」
「穂高、それは……」
旬が止めに入ると
「旬がもう説教したんだろ?だからこそ静流の顔が死人みたいになってやがる。こんな顔で親父の前に行かせれるわけねーよ」
穂高が苦笑いし俺の荷物を組員に持ってこさせる
「行って来い。でも帰ってくる時は必ず連れて来いよ?でないと敷居はまたがせねーからな。」
俺は荷物を受け取ると礼を言う
「ほんとに…穂高は静流に甘いですね。静流、虎がセイ君達の荷物を渡しに晶と待ち合わせています。虎!静流も連れて行ってください!」
旬が大きな声で虎を呼ぶ
虎は荷物を持ったままこちらに走ってきた
「畏まりました。会長のボディーガードは?」
…そうだった
俺を一人で外を歩かせてくれない旬
チラっと見ると旬と目が合い深い溜め息を吐かれた
えー…いや、俺は一人で構わないんだけど…
「虎、申し訳ないんですが貴方が運転手とボディーガードを兼用して下さい。もう一人連れて行っていいので。」
「わかりました。鷹!来い!」
虎がそう呼ぶと、背が小さめの男にしては可愛らしい顔の男がトコトコ走ってくる
鷹は見た目に騙されたら痛い目を見るタイプの奴で、喧嘩は強く武器を持たせたら相手は確実に病院送りになる腕前だ
「虎兄、どうしましたか?」
なかなかの身長差で鷹は虎を見上げる
「予定変更だ。今から会長のボディーガードの仕事に変わった。すぐ装備しろ」
「りょ…了解しました!」
凄い勢いで車へと走り去っていった鷹を見ながら
「初めての会長のボディーガードなのでテンパってるようですが、すぐにもとに戻るのでご安心を。」
と虎が言うので頷いておいた
「静流、車はこれを使え。元々晶と璃一は明日から別行動の予定だったんだろ?」
「そうらしい。セイは俺のパートナーとして紹介する予定だった。」
「なら、晶にはレンタカーを準備しておいてやった方が気も使わずゆっくり出来るだろう。お前は必ずセイを連れて来いよ。アイツが楽しみにしてるから。」
「…頑張る………」
「いつになく弱気じゃねーか」
「…セイに嫌われたかもしれない」
そう言うと、旬も穂高も呆れた顔をする
「本当に嫌われたなら、また振り向いて貰える努力をしろ。いいんじゃねーの?人に振り向いてもらう為に努力するなんて初めてだろ。」
穂高はケラケラ笑う
「アドバイスをするなら、晶を味方につけた方がやりやすいって事ですね。今回はセイ君が言い出した訳じゃなく晶がセイ君の為に動いてますから。」
「……………わかった」
殴られる覚悟はしておこう
こうして俺はまずは晶に会いに行く為、虎が運転する車に乗り込んだのだった
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