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SIDE ボディーガード
しおりを挟む舎弟頭が部屋に連れてこられた
俺達の顔を見るなり驚きの表情をしたが直ぐに取り繕った
「そこにかけてください。早速ですが、今後の事はどうなさりますか?」
旬がにこやかに尋ねる
「勿論組長に付いていきます。」
「そうですか。貴方は確か舎弟頭でしたよね?」
「はい。…それが何か?」
「随分組長に可愛がられてるそうですね。今回の事も当然知っていましたよね?」
「今回の事とは?」
旬が言ったように、コイツは嘘を息をするようにつくことができるタイプだな
「ふふふっ…トボケなくていいんですよ。それ、無駄ですから。」
そう言って旬は半ヘルを舎弟頭に装着し、右の小指にリングを通した
「…何をするんです?」
警戒心を隠すことなく舎弟頭は旬を見る
「今から質問には全て『イイエ』と答えてください。」
「……これ、嘘発見器的なやつですか?」
「そうですよ。龍洞財閥が開発した最新型です。貴方が嘘をつけば電波が出て脳に信号を送ります。その信号は脳細胞を焼き殺し、次第に脳が壊れていく物です。
貴方の指に付けているものは貴方が故意に虚偽の報告をすればリングの中にある刃が徐々に指を切断していきます。」
楽しそうにニヤニヤ笑いながら旬が説明する
あの半ヘル、相談役のジジイがハゲだしたのを見て『頭皮に刺激を与えれば髪も生えてくるかも?』とか言いながら電流が流れる様に改良したオモチャだ
龍洞財閥が嘘発見器なんて開発するわけがない
「これじゃあ拷問じゃないですか?俺は面談に来たはずですけど。」
強がる舎弟頭に笑いそうになる
「だから?勘違いしないでくださいね。会長は無関係な組員を救済する為にチャンスを与えただけです。
無関係ではない、当事者の貴方がチャンスを貰えるわけがないでしょう。
何年この世界で生きてるんですか?落とし前くらいキッチリつけなさい。」
冷たい視線で睨みつけ、「さてセイ君、始めてください」とセイ君を促した
「では始めます。
質問です、貴方は組長を尊敬していますか」
「…………イイエ」
セイ君を睨み付け答える
「貴方は本部長と共に上納金を誤魔化していましたか」
「………イイエ」
「貴方は上納金を誤魔化す手伝いをする事で報酬を得ていましたか」
「………イイエ」
「貴方は佐山と共に矢沢を陥れましたか」
「………イイエ」
「矢沢を陥れる時佐山と共に計画を立てましたか」
「…………イイエ」
「貴方は佐山と計画を立てる時、第三者と手を組みましたか」
「……イイエ」
「貴方は最初の質問以外全て嘘をついてますね。」
セイ君は落ち着いた様子で淡々と話を勧めている
「はぁ?ついてねーよ。つか、何でお前がここに居るわけ?若頭の次は麒麟会に取り入ったのか?」
「貴方に質問の許可は出ていませんし、お答えするつもりもありません。」
「何様だテメェ…。どうせ会長に色目でも使ったんだろ?その気持ち悪い目で、会長に迫ったんだろ?
会長、コイツはすぐ男を誘惑するような奴です。うちの組員が何人も誘惑されましてね。本当に迷惑な話ですよ。
あまりにもしつこいから、組員で廻してやろうかって言ってたんですよ。
会長も気をつけたほうがいいですよ?コイツは見た目はか弱そうで庇護欲を駆り立てるタイプみたいですけど、実際は正反対のビッチですから。」
舎弟頭は勝手にペラペラと喋りまくる
チラリと静流を見ると、能面の様な顔で舎弟頭を見ている
あー…これヤバい気がする……
旬を見ると、般若の様な顔で舎弟頭を睨んでいる
「ビッチ………か。お前、手を出したのか?」
「え?いや、まだです…けど……」
返事が返って来るとは思わなかったのか、静流に話しかけられソワソワしだす
「まだ、と言う事はこれからその予定があったのか?」
「予定って言うか、橘組の性奴隷にしても良いと許可がおり………いや、何でも無いです。」
おいおい…性奴隷ってなんだよ……
セイ君は目を見開き固まっている
「性奴隷にしても良いと誰が許可したんだ?」
静流が殺気を放ち、旬が準備していた拷問具から静流愛用のナイフを取り出した
うわっ…あれ取り出されたら止めるの無理だぜ……俺まで下手したら殺される…
「いえ……その……………」
静流の殺気を前面から浴び顔を真っ青にしている舎弟頭は言葉に詰まる
「さっさと答えろ」
止める隙もなく、舎弟頭の右手の掌にナイフが突き刺さった
「ぁ………ぁあ…………っう…」
掌から血が流れ始める
「誰が許可した?」
ナイフをグリグリと左右に回す
「うぅっ…………姐さん……が…………」
「ほう。で?誰がセイに色目を使われたって言ったんだ?」
なおもナイフを回すのをやめない静流
「あ……姐…さん……に………付いてる……組…員です」
「そう。
旬、セイ。このまま俺が尋問していい?コイツに時間割いてる暇無くなったから。」
「会長、落ち着いてください。」
姐さんとやらを殺しに行きたそうにしている静流に声をかける
「落ち着いてるよ。逆に冷静すぎるくらい。コイツが死なない程度にいたぶるから大丈夫だよ。」
目だけで殺せそうな静流に睨みつけられ舎弟頭は「ヒッ!!!!」と息を飲んだ
「質問には正確に全て答えろ。もし答えなかったら、指を一本づつ切り落とす。
これは脅しじゃない。お前が生きようが死のうが俺にとってはどうでもいい。
出血多量になる前に全て話せ。」
舎弟頭はブンブン縦に首を降る
「いつから上納金を誤魔化してた?」
「会長が…就任してからです」
「理由は?」
「姐さんの金遣いが荒くて………組長も愛人に何でも買い与えてて……シノギは上手くいかなくて、でも出て行く金は日に日に増えて…」
「矢沢を陥れた理由は?」
「最初は末端の組を…潰して金にしようと…」
「で?」
「……………」
言葉に詰まる舎弟頭の小指に付けたリングがギギっと音を鳴らした
「ゔああぁぁぁぁああああ!!!!」
ポンっと指がテーブルに落ちた
リングが締まったままのせいで血が吹き出す事は無かったけど、いつ見ても酷いな……
「お前に黙秘権はない。」
「き…麒麟……会………の名を………落とさせ…て、徐々に…組長の……味方を……増やして……麒麟会を……乗っ取ろうと………」
「乗っ取ろうと言い出したのは誰だ」
「さ…山と……手を…組んだ……傭兵…隊長……」
「傭兵部隊はどこの国の奴だ?」
「色々な…国………」
「隊長の名は?」
「し…知らない……いつ…も佐山……が連絡を…」
「他に知ってることは?どんなことでもいい。組長や本部長、姐の情報を話せ。」
「姐さんは……自分…の……体を…使って……若い…組員を…手駒にしてて……本部長…は……親父に…恩が…あるから…絶対…裏切れないらしくて……親父は……本当は姐さん…じゃあなく……その姉妹を……娶りたかった…らしい……って…事くらいしか……」
指と掌の激痛に耐えながら必死に口にする舎弟頭の顔は汗が滴っている
「佐山については?」
「さ…やま………あぁ、そうだ……元々…何処かの……お坊ちゃん……で、親が……自殺して……ゴミ捨場で……死にそうに…なってたのを……組長……に拾われたって……」
「親の自殺の原因が麒麟会か?」
「本人に…直接聞いた……わけじゃ……ない…から……」
「ふーん……。セイ、聞きたいことは?」
静流はフッといつもの顔に戻り、優しげにセイ君に話を振った
「えっ……と。」
静流の変わり様に戸惑ったのか言葉が詰まる
「あ……貴方は矢沢の件、どんな事をしたんですか?」
「……俺は…佐山…から言われた……通りに……動いた…だけだ………上納金の……催促………脅迫状……あ、あとホテルに……電話を……かけた………」
「ホテルに電話。…それって、荷物を送ったから部屋に運んどけってやつですか?その荷物、中身を知ってましたか?」
セイ君の質問に首を振る
「ただ……電話しろと………傭兵が………準備した………会長を………殺す為の………大事な物……だから……ってだけ……」
「…会長を殺す………?」
セイ君は一気に青褪めるご身を乗り出し舎弟頭へ詰め寄る
「他には?他には何か聞いてない??」
「ほ…か………あ…矢沢……が…思って…たのと……違う……行動を…取り始めた………って…佐山が…怒ってた………」
「違う行動…」
「何が……違うのか……は知らない………」
セイ君はもう質問する事なく考え込み始めた
そんなセイ君を見ていた静流は「じゃあ終わり。」と言うと、ナイフを舎弟頭の掌から抜いた
その拍子にゴプリと血が溢れ出す
舎弟頭は唸りながら傷を逆の手で押さえていた
俺は直ぐに表に居る麒麟会の組員に舎弟頭を地下に連れて行くよう指示したのだった
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