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SIDE若頭
しおりを挟む親父に部屋へ呼ばれた
呼びに来た組員は顔面蒼白で会長達も一緒にお越しになっているとインターホン越しに伝えてきた
セイは既に戻ってきており、璃一の隣の部屋に荷物を運び入れた
「兄ちゃん、これ。」
「ありがとう」
渡されたのは、彼奴等に突き付ける地獄への招待状
「気をつけてね」
「あぁ。セイももしもの事があれば…わかってるな?榊は今麒麟会に拘束されているからな。」
「うん。準備は抜かりないよ。大丈夫。」
セイをギュッと抱きしめる
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
心配そうな顔をするセイの額にキスをしてから部屋を出た
応接室の前に着くと、麒麟会の組員が扉の前に立っていた
俺を見ると軽く会釈し扉をノックする
直ぐに中から返事がして、麒麟会の組員が扉を開け中に入るよう促す
俺も軽く会釈し、扉をくぐった
応接室の一番奥に一際鋭い殺気を纏う若い男が座っている
彼が麒麟会の会長なんだろう
隣に立つのはボディーガードか?
他にも知らない顔が3人座っている
壁際にも数名の麒麟会の組員が立ち、親父と龍崎は下手の席に座っている
「お初お目にかかります。橘組若頭橘晶です。遅くなり申し訳ございません。」
一礼し会長らしき人物を見ると、その男はジッと俺を見た後殺気を引っ込めニヤッと笑った
その顔に違和感を覚えた
「初めまして。麒麟会会長の龍洞静流だ。旬の隣に座って。」
そう言い、どう見ても仕事の出来そうなサラリーマンに見える男を指差す
指差された男は立ち上がり
「喜多川旬です。龍洞会長の補佐兼秘書をしております。どうぞこちらへ」
と隣を薦めてくる
「ありがとうございます」
補佐ってことは麒麟会のNO.2かよ
確か機械オタクで機械を使った拷問が得意な鬼畜野郎って聞いてたが…人は見かけによらないな
座りたくねぇ…と思いつつも座るしかない
隣に腰掛けると意味深な笑みを向けられた
……これはあれか?
よくもうちの会長を試す様なことしてくれたなぁっていう笑いか??
「さて、まずは晶。君が作った書類、本当に良く出来ていた。」
「ありがとうございます」
「で、俺達がここに来たのはね。足らないんだよね。」
「足らない…ですか?」
「君が明記した15億7500万。実際組長達が持ってきたのは1575万足りなかったんだよ。」
誰かがくすねたのは榊からの報告で知っていたが額までは知らなかった
俺はずっと黙ったままの親父と龍崎を見る
二人共何も言わず拳を握りしめている
「…100万の束から1万づつ抜かれていたと言うことですね?」
「そうそう!話しが早くて助かるよ。でね、その犯人に心当たり無いかな?」
嘘は許さないと語る目で俺を見る会長は、質問している癖に本当には犯人の目星はついているように見える
「上納金は全て金庫に入れてありました。その金庫を開けれるのは俺と組長、龍崎、姐さんの4人だけです。組長と龍崎がやってないなら…姐さんでしょう」
「晶!!!」
親父が怒りの形相で立ち上がり俺を睨む
「橘、俺はお前に発言の許可は出していない。黙れ。」
会長が冷たい眼差しを親父へ向けると親父はハッとした顔をして「申し訳ございません」と言い座った
「晶、お前の所の姐さんはお金に困っているのか?」
「困っている……ある意味困ってはいますね。」
「ある意味?」
「姐さんはホストクラブを数店舗経営しているんですが、そこのホストにオーナーとしてではなく客として通い詰めています。」
「客として?」
会長はバカにしたように笑った
「どのくらい使っているかは知りませんが、各店舗に一人お気に入りが居る様なので金額にすれば相当かと思いますよ」
「なるほど。その姐さんは今どこに?」
「今日も昼営業を行っているホストクラブへ行っているはずです。そうだよな?龍崎。」
俺はあえて龍崎に話しを振る
龍崎は頷いた
「連れてこい」
会長は壁際に立っていた組員に指示するとニッコリ笑った
「金の事は姐さんが戻ってきてから話を進めよう。で、次なんだけど。ねぇ晶。矢沢組が薬に手を出した経緯を教えてもらえる?」
会長の眼が光る
俺にチャンスをくれるようだ
「組長が報告したことですので重複しますがよろしいですか?」
わざとそう言うと、会長は口端を釣り上げた
「構わない。さぁ、話して?」
その言葉に誘われるように俺は口を開いた
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