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SIDE 若頭
しおりを挟むセイの薦めでやった人生ゲームは璃一と要がデッドヒートを繰り広げ、僅かに資産が高かった璃一が要に勝った
俺は億万長者状態だった為、2人からつまらないと言われてしまった
ゲームなのに…解せぬ…………
沢山遊びはしゃいだせいか、璃一は大分眠たそうだ
コンコンーーー
ノックの後セイが部屋へ入って来る
「あ!セイせんせいだ!」
璃一はベッドの中から嬉しそうに笑う
「璃一、沢山遊んでもらった?」
「うん!セイせんせいがもってきてくれた、じんせーげーむやったよ!たのしかった!」
「そっか、難しくなかった?」
セイは璃一を寝かせながら尋ねる
「かいしゃ?とかほけん?とかよくわかんなかったけど、おかねかせぐのはわかったよ!おかねとられちゃうのはいやだー」
ぷくっとほほを膨らませる璃一の頭を撫でながら、セイは話を聞いている
「じゃあ次はもっと簡単な遊びをしようね。考えておくよ」
「ありがとう、セイせんせい」
「さぁ、少し寝ようか。早くケガを治してお外でも遊ぼう」
「なおったら、おそとでれる?」
「うん、だからいっぱい食べていっぱい寝ようね?」
セイは点滴の準備をしながら璃一に優しく話す
「はーい!」
「じゃあお薬を身体にいれまーす。おやすみ」
「セイせんせい、おやすみなさい。あきらぁ…」
もう目がトロンとなった璃一は必死に俺へ手をのばす
俺はその手を握り、璃一の額にキスを落とした
「おやすみ璃一。起きたら一緒に夕飯を食べような」
「ん……………」
睡魔の限界が来たのか璃一は寝息を立て始めた
「…若頭、今のは何です…?」
要が驚いたような顔で俺を見る
「何って…おやすみのキスだ。挨拶だよ」
たまに寝るのを嫌がってグズる時があり、小さい頃セイが泣くとあやす為にしていたキスをしてみたら、璃一もグズるのを止めて大人しく寝るようになった
それからは璃一が寝る時は必ず額にキスをするようになっただけだ
「…若頭ってそんなキャラでしたっけ?子供には甘いんですか?」
「璃一は特別なんだよ。他のガキには興味ねぇよ。」
どんな勘違いだ
俺が甘くなるのはセイと璃一にだけだ
「…そうですか」
何だか一気に疲れたような顔をした要を放ってセイと部屋を出る
要も急いで後を追ってきた
ソファーに腰掛けて一息つく
「人生ゲームはいかがでしたか?」
要が居るから他人行儀に話すセイ
「本人が言っていたように、社会の常識を理解していないようだな。結婚ってなぁに?って聞かれたぞ。」
見た目は17~20歳程の璃一だが、あまりに常識を知らなすぎる
「そうですか…」
調査はあれから進み、璃一はオークションに出品されていた訳では無いことがわかった
矢沢があのホテルで密会していたのは偽名を使った人間
防犯カメラに記録された部屋に入った人間はホテルマンが2人
大きなトランクケースを一人が押し一人が部屋の鍵を開け入り、出てくる時は何も持っていなかった
その1時間後に矢沢がボディーガードの組員と入りトランクケースを押して出てきた
部屋に入ったのはこいつ等だけだった
直ぐにあのトランクケースを誰から預かったのかホテルに確認したが、部屋を借りた偽名の男が電話で『ホテルにトランクケースを送ったから、部屋に寝かせて置いといて欲しい。手紙も送ったから、テーブルに置いといてくれ』とだけ伝え電話は切れたそうだ
今セイにはトランクケースがどのルートでホテルに届いたか追跡してもらっている
もしかしたら海外から運ばれた可能性も否定できないからだ
「若頭、料理長に夕飯の人数をお伝えしてきます。セイさんもこちらで召し上がられますか?」
要がセイに聞くと、セイは横に首を振る
「俺は自室で食べますのでお気になさらず」
「…そうですか」
要は残念そうにそう言うと部屋を出ていった
セイは知らないのだろうが、この組の大半の組員はセイの事が好きである
幹部が居ない時、カタギではあるが頼れば何でも解決してしまうセイに一目置いている組員達
医者を派遣してもらう程ではない怪我をした時も直ぐに自ら治療してくれ、大怪我を負った者には手厚い看護をしてくれる
普段は笑わない、喋らない、自分達に興味を示さないセイだが、そういうしっかりした所が人気らしい
それに、指示を仰ぎたい時に幹部が居ない時はセイの指示に従うよう組員には言い聞かせているのも人気の一つらしい
普段はお互い興味を示さず、俺に至ってはとても冷たく接するくせに、絶対的信頼をセイに持っているのは組員達にも伝わっているようだ
組員の事も信用はしているが、信頼を得ているのはセイだけだと組員達は認識している
「ねぇ、兄ちゃん。上手くいくかな?」
珈琲を淹れてきたセイは俺の前にカップを置く
「そうだな。会長が平和ボケしてなければ上手くいくだろう。上手くいけば、これからこの組は崩壊に向かうか白虎系列が一つに纏まるかの分岐点になるだろうな。あれの準備はできてるんだろ?」
そう問えばセイはニヤリと笑う
「完璧だよ」
「流石セイだ。念の為お前は榊から離れるなよ。逆上した奴らがお前を狙うかもしれないからな。」
「うん。けど榊さん本当に良かったのかな…ヤクザの世界に入ったの俺のせいでしょう?」
「セイのせいじゃない。俺がセイと引き離され自暴自棄になってた時にアイツは大阪で手がつけられないほど大暴れしてた奴だ。瀧本さんでさえ手を焼いていた」
「そんな榊さんと意気投合して親友にまでなっちゃう兄ちゃんもある意味手が付けれないね」
セイは苦笑いを溢す
榊と出会ったのは俺が17歳の時で、家出同然で大阪に身を寄せた時だ
自分の感情をコントロール出来なくなっていた俺は、当時族の頭をしていた榊とケンカになった
タイマン張って、お互い本気の殴り合い
結局勝負が着かずお互いが地面に倒れた
その後お互いを手当てしている中で榊が族の頭になった経緯を聞いた
榊には4歳年下の弟が居たが、借金返済の為に両親に殺された
用意周到に準備し、榊がいない隙にレンタカーで弟を海に連れ出し、絶壁の岩場から突き落とした
警察には久しぶりの遠出ではしゃいだ息子が足を滑らせ落ちたと説明した
借金の事もあり、警察は両親を疑ったが殺した証拠はなく今ものうのうと生きているらしい
榊はそんな両親を怨み復讐の機会を待っているのだという
弟を失った悲しみや何も出来なかった自分への怒り、絶望を日々喧嘩する事で抑え込む
そんな事を繰り返していたらいつの間にか族の頭になっていた
そう語る榊の目が自分と重なった
自然と俺も自分の話をしていた
榊はセイを自分の弟と重ねたのかもしれない
『俺にも守らせて欲しい』と言ったのだ
俺達は約束した
セイを守り抜く事、お互いの両親に復讐する事
お互いが相手の剣であり盾であり続ける事
それから暫くして俺は組を取り込む為東京へ戻り、榊は時期が来たら東京へ
セイがここへ戻ってくるまで俺達は二人三脚で歩いて来たのだ
「でも狙われるのは俺じゃなく璃一かもしれないよ?」
セイの言葉に頷いた
どちらかと言えばその可能性のほうが高い
奴に初めて見せた俺の『弱点』の璃一
だからこそこの離れに璃一を囲ったのだ
セイの離れを改装する際、もしもの時の事を考えてこの離れ自体がシェルターの役割をするように改装した
外から火をつけられても問題ない
何かあった場合は遠隔操作も可能で、シェルター仕様に変えることができその解除は俺かセイのみができる
網膜と指紋、暗証番号を入力しないといけない
備蓄の食料も水も新しい物に全て替えた
1年程は引き籠もれるようになっている
「璃一の離れは大丈夫だろ?一応今日からシェルターに替えておこう。セイも基本的にここで過ごしてくれ」
「俺も?でも俺にはボディーガードの榊さんがいるよ?」
セイはキョトンとする
「いくら榊が強くても相手が銃や数人がかりで一気に襲ってきたらお前も巻き込まれるかもしれない。夜中に火をつけられたらどうしようもないしな。」
「……………まぁ、そうだね。」
一応は納得したのか頷いた
「数日分の衣類と必要な物を持って来い。榊には連絡入れておく。」
そう言ってスマホを取り出すと、メールが届いていた
開くと榊から
今日、監視の為に親父と会長の所へ動向させている
やはり何かあったか?
メールを開き読んでいく
「セイ、急いで準備しろ。会長が動いたぞ。こっちに向かってる」
「はっ!?…え?会長自ら?」
セイは目を見開く
「あぁ。どうやら、手癖の悪い鼠が上納金から金を抜いたようだ。その事もあって会長自ら乗り込んでくるらしい。急げ。」
セイは走って出ていった
俺は直ぐにここをシェルターに替える
まさか会長が来るとは思わなかったな
これでは璃一との飯の約束を守れそうにない…
仕方ない、寂しがらないように手紙でも書いておくか
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