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しおりを挟む「凄い反響だよ」
パッドでSNSの呟きを見せられる
【警察まじクソ!彼方君無事で良かった!】
【響って中身までイケメンとかズルすぎる】
【夕日集間二度と買わん!ただのゴシップ誌とかしたな】
【相田彼方、めっちゃ可愛い!12月の映画楽しみ!】
【元マネージャーはどんな顔かな?公開捜査にしてくれたらいいのに。ホント警察って動かないよな。】
他にも色々と、記者会見を見た人達が呟いている
警察や週刊誌への文句から、僕や叶さんへの意見というか応援してくれていると伝わる呟きが大多数だった
もちろん、悪意のある言葉を呟く人もいた
それを叶さんが見た時、僕を心配してくれたけど僕は全く気にならなかった
誰しも全ての人から好かれるわけじゃない
それに、僕が嫌いならいちいち呟かなければいいのにとか、僕が例え世界中から絶賛されるような演技をしたとしても、こういう人は文句や嫌味を言うのだろうと理解している
そんな人達に構ってる暇は僕にはない
「彼方君、ファンの人達からシンデレラエンジェルって呼ばれてるよ」
笑いながらそう教えてくれた志乃さんからファンレターを貰った
あの記者会見の後、一気に叶さんと僕のファンクラブ会員が増えたらしい
シンデレラエンジェル……何故そのネーミング?誰が考えたんだ……
当日の呟きも叶さんと僕の名前が検索ワードで上位を占め、1位は『ひび かな』だったらしい
因みに3日ぶりの舞台稽古に行けば、皆から熱い抱擁を受けたり、叶さんと僕が共演するCMやファッション雑誌のオファーが沢山舞い込んだ
記者会見の影響がそんな所まであるとは思わずガクブル状態である
頼さんが正式に僕のマネージャーになってくれ、体調を崩さない程度に仕事を受けてくれる
毎日稽古と他の仕事をして、叶さんと2人ヘトヘトになりながら帰宅する
叶さんのスケジュールは、今年は舞台関係だけだったのに、次々と仕事が舞い込み僕よりも多忙だ
それでもいつも僕を気遣ってくれる
そんな中、『PEP主催舞台インペリオスペシャル』と名うった特別生放送の番組の撮影が行われた
3時間を予定されているこの番組は、稽古前の俳優達の様子や、インタビュー、稽古中の様子を映すらしい
けど皆いつも通りの格好で、綺麗に化粧したり繕ったりしない自然体だった
ただ何故か皆カンパニーで作ったTシャツを着ていて、僕と叶さんはたまたまお揃いのズボンを持ってきていたので、皆から総ツッコミされてしまった
主演の2人や出演者がインタビューを受けている間に僕達は稽古を続ける
『もう無理なんだ...私達に助かる道はない......』
『ヴェルサ……』
ガイアに抱きしめられ泣く僕
『最期の時まで共にいよう...この命が無くなろうとも、体が朽ち果てようとも……俺はお前の傍を離れたりしない……』
『ガイア……ああ……共に居てくれ……私を離さないで……』
「はい、OK。照明はこの時徐々に暗くしてセリフが終わると共に暗転な。タイミング間違うなよ。」
「分かりました」
最終確認の作業へ移っている現在、音響や照明のタイミングの難しい場面を何度も稽古する
「彼方、目冷やして」
叶さんから冷えたタオルを渡され瞼に当てる
「カナちゃんって泣く演技完璧だよね。いつでも泣けるじゃん」
隣からガイア役の六花君の声が聞こえる
「そうですね……感情移入するんで泣けはしますけど、泣きすぎて目が腫れちゃうのが難点です」
同じシーンを繰り返すとすぐ赤くなってしまう
だから最近は頼さんや志乃さん、2人が居ない時は叶さんがすぐ冷えたタオルをさっきみたいに渡してくれる
事務所の先輩に何させてるんだって感じだ
「すみません、次叶さんと相田さんインタビューお願いできますか?」
番組のADさんがそう声をかけてきた
ADさんの後に続きインタビュースペースに入ると、テレビ局のスタジオと中継が繋がっているらしく大きなテレビ画面とカメラがあった
『お忙しい所すみません~!スタジオの葛西です!お疲れ様でーす!』
元気にそう挨拶してくれたのは、有名なアイドルグループの人だった
アイドルだけではなく、ドラマに出たりバラエティーにも出たり司会もするらしい
「初めまして。叶響です。」
「こんばんわ、相田彼方です。」
『うわ~!本物のひび かな!!』
葛西さんがそう言うとスタジオでは笑いが起こり突っ込まれている
『お2人の今回の役どころは叶さんが物語を語る学者さんで、相田さんが、物語の鍵を握る神官の役だと伺いました。
演じるにあたって難しい点はどう言った所でしょうか?』
「そうですね…私は物語を語っていくので冒頭に見る人を物語の中に引きずり込まなければなりません。
台詞1つで与える印象は変わってしまうのでとても難しく、台詞の強弱や演じ方は凄く研究しました。」
「僕はとにかく感情を顔に出さない事ですね。」
『感情を出さない?』
「はい、演技の勉強を始めてから喜怒哀楽が顔に出やすくなったみたいで...」
「彼方の役はあまり感情を表に出さないので、指摘されてからは毎日家でも鏡の前で無表情の練習してるんですよ」
叶さんがクスリと笑う
「何で叶さんが知ってるんですか!え?見られてた??」
叶さんが帰ってくる前にしかしてないのに...
「私が帰って来ても気づかないくらい集中してる事はよくあるからね。この前なんて、長時間練習してたのか『顔が固まったぁ!』って言いながら顔のマッサージしてただろ?」
「うわぁ~...恥ずかしい......」
つい顔を両手で隠す
絶対顔が真っ赤になってる...
『いや~本当にお2人は仲が良いんですね!ではそんなお2人に、視聴者さんから事前に質問を頂いていますので答えて貰いますね~!
ズバリ、相手の好きな所は?』
「え...好きな所?そんなの全部です。優しくて漢気があって、演技は上手い、顔も良い、体格も憧れるし、こんなパーフェクトな人なのに驕った所がなくて、後輩にもスタッフにも気を使ってくれるんですよ!
僕、今まで出会った人の中でこんなにも全てが素晴らしい人は初めて会いました!!」
つい力んで答えると叶さんが吹き出した
葛西さんは画面越しにニヤニヤ笑っている
『いや~凄い愛の告白ですね!いかがですか?叶さん!』
「本当に嬉しいですね。可愛い後輩にこんなにも想ってもらって。」
『ですよねー!では叶さんは相田さんのどういった所がお好きですか?』
「彼方は凄く真面目でどんな事でも努力を欠かさないんです。集中力も凄いし、まだ俳優になって半年なのに演技も素晴らしい。
初めて共演した時に、この子ともっと色んな作品で共演したいと思わせてくれるくらい、私は彼の演技が好きです。」
そう言って僕に微笑む叶さんに、またもや赤面してしまう
『うわぁ...相思相愛ですねぇ......砂糖吐きそうです......では逆に苦手なところはどこでしょう?』
苦手な所............?
じーっと叶さんの顔を見る
苦手な所あったっけ?
「うーん...苦手と言うか、辞めて欲しい事が1つだけ。彼方は頑張りすぎる所があって、ちゃんと見てないとご飯を食べずに1日中台本を読んで演技の練習をしてたり、怪我をしても無理に動こうとするので、もう少し自分を大事にしてもらいたいです。」
『あ~、この舞台のオーディションの時に安静にしておかないといけないのに、歩いたり物を蹴ったり走ったりしたんですよね?ニュースで見ました!
後ほど、オーディション映像が流れますので楽しみにしててくださいね!!』
マジか...アレを生放送で流されるのか......
『相田さんは先輩である叶さんの苦手な所はありますか?』
「えっと...そうですね............あ!超絶過保護な所ですね!」
『超絶過保護??』
「はい、怪我をしてた時、松葉杖無しに歩こうとしたら、いつもすぐ抱えられてソファに運ばれたんです。
今でも台本読んでてちょっと寝るのが遅くなったら、台本を取り上げられてベッドまで抱えて連行されたり......凄い子供扱いと言うか...」
「彼方はある意味小学生だからね。熱中すると時間を忘れちゃうから、私はたまに彼方の母親なのかな?と思う時があるよ」
叶さんはクスクス笑う
「......響ママ?」
「せめてお兄ちゃんがいいんだけど?」
「んー...でもパパっぽい時もある」
「5歳しか変わらないんだけど?」
「精神年齢がおじいちゃ」
おじいちゃんじゃないですか?と言おうとしたらほっぺを抓られた
「いひゃい.........」
「帰ったらお仕置な」
ニヤリと笑った叶さんに「ピィエッ!!」と変な声がでた
『苦手な所を聞いたはずが自然とイチャつくこの2人......きっと既にスタジオと中継してること忘れてますね』
抓ってくる手をペシペシ叩いていたらスピーカーからそんな声が聞こえる
「いえいえ、私達はこれが通常運転なので。」
叶さんはニッコリと笑う
『ずっと見ていたい所ですが、次は皆様がお待ちかねの貴重なオーディション映像です!そちらの稽古場の皆様にも一緒に見て頂けるよう準備がされてますので、お2人も楽しんでください!
インタビューありがとうございました!』
手を振る葛西さんに2人で手を振り返す
中継が終わり、またADさんに連れられ稽古場へ戻った
稽古場では大きなテレビ画面が設置され皆がテレビを囲うように地べたに座っている
スタジオでは、オーディション内容について説明がされていて僕達も床に腰を下ろした
『ではオーディションなんですが、平野さんと相田さん以外が受けた内容がこちら!』
クリップボードがアップで映し出される
『台本を10分で覚えて演技をする!しかも台詞は長文!!』
ん?僕のと違う??
首を傾げていると叶さんが耳元に顔を寄せてきた
「頼から聞かされただろ?彼方の役は決まっていて、それを演じる力があるかの確認だったから、他のメンバーとは内容が違ったんだよ」
なるほど......えー...でも僕もこっちが良かった......1人エチュードは本当に心細かった......
オーディション映像が流れ始め、皆真剣にその映像を見ている
他の人のオーディションへの立ち入りが禁止だったから、皆言葉には出してなかったけど、ライバルの演技が気になっていたのだろう
同じ台詞を言っているのに、演じる人が変われば印象が変わる
やっぱりみんな凄いな......
平野さんのオーディションは台詞がなく、動きのみで『お姫様』を演じるというとても難しい物だった
平野さんの『お姫様』は、可憐でいて力強さを内に秘めた魅力的なお姫様だった
「平野さん凄い......」
ボソッと呟けば
「うん、彼女の表現力は素晴らしいね。」
と叶さんが肯定してくれる
「お!次カナ君だ!!俺当日仕事でオーディションの時間間に合わなかったから見れなくて、楽しみにしてたんだよねー!」
そう大きな声を出したのは、王様役の三宅君だ
『いやー、平野さんの演技凄いですね!続いては相田彼方さんのオーディションです!皆さん、見る前に注意事項があるそうですよ!』
『え?何?注意事項??』
画面の向こうでのやり取りに首を傾げる
注意事項?何だろ??
『えーっと、この映像を提供してくださった記者さん曰く、これは演技で現実じゃありません。しかしオーディションを見ていた私達はあまりの演技にオーディションだと言うことが頭から抜けてしまいました。見る時は演技であると頭に叩き込んでから見てくださいとの事です!』
『え~?何それ!』
スタジオでは笑いが起きている
全くだ...何だその注意事項は...
『では早速見てみましょう!ノーカットです!相田さんのオーディションは、3役を1人で演じるエチュード。エチュードは先程説明したから大丈夫ですよね?では参りましょう!!』
葛西さんの満面の笑みでオーディション映像へと切り替わった
映像は、僕が頼さんに支えられて椅子に座る所から始まった
稽古場の皆は真剣に画面を見ている
右下にスタジオの人達の顔がワイプで映されている
演技が始まるとワイプに映る人達も真剣な表情で映像を見ていた
自分のエチュードを見るなんて初めてだ
しかもあの日は周りで見ている人達がどんな顔をして見ていたのかなんて記憶になく、映像に映る人達が僕の演技を見て反応してくれているのを見ると、僕のエチュードの内容がすぐ理解できたのだと少し安心した
映像が終わると稽古場の皆は拍手をしてくれた
「やっぱすげー!!」とか「演技ってわかってても手に汗かいた...」とか口々に感想が飛ぶ
スタジオの人達は逆に静まりかえっている
『皆さん大丈夫ですか??現実に戻って来てください~』
葛西さんは苦笑いだ
『あ...オーディション映像ですよね......やば...マジで怖かったんですけど...』
『相田さん、さっきのインタビューと全然雰囲気違うじゃないですか!えー.........』
『凄いですよね!僕も先に見せてもらった時、あまりの恐怖に一時動けませんでした!今回は2度目なんですが、それでもあの走って来る相田さんに恐怖を覚えます!
叶さんのカットがかからなければどうなっていた事か......続きが見たいような見たくないような...』
『この映像って、審査員視点ですよね?自分が審査員で、目の前でこれを見せられたら数日は夢に出てきそう......』
色々なコメントが飛びかっている間に僕達は舞台の宣伝の為に2列に並ぶ
『皆さんお忙しい中本日はありがとうございました!
インペリオの舞台は12月20日からで、チケットは明日の10時から販売です!!
では最後に、この方達が出演する舞台や映画のお知らせです!皆さんお願いします!』
葛西さんが振ってくれ、僕達は宣伝を始める
今回の舞台の事や、個人のイベントや出演するドラマや映画をクリップをもって宣伝し、詳しくは事務所のホームページを見てください!と締めくくった
時間もギリギリで、最後は皆で手を振って生放送を終えた
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