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王族が食事をとるリビングで、最愛の番と食事をしていると廊下からドタバタと足音が聞こえノックも無しに扉が開きました
リビングに居た騎士達は音が聞こえてすぐに剣を素早く抜き、私も番を背に隠しいつでも攻撃できる態勢をとっていました

しかし飛び込んできたのはモア王子についている騎士でした


「カイン様が!!ハァ…ハァ…じ…陣痛…が始まった…と!!」

ここまで全速力で走ってきたのでしょう

息も絶え絶えの様子で、報告した後騎士は崩れ落ちてしまいました

重い甲冑を着ての全速力はさぞかし大変だったでしょう

場内警護の時は分厚く重い甲冑を、外部での警護の時は結界を使う事を前提にしているのでマントの下は剣を通さない細かい楔形の鎧になっていて大分軽いのです

訓練は基本外部での警護などを想定して行っているので、この重い甲冑で全速力で走ったことがあるのは彼だけではないでしょうか


ノックも挨拶も忘れるくらいに焦っていたのでしょう、騎士は咳き込み近くに居た騎士が駆け寄りました


「そうかそうか、報告ご苦労であった。その者を、そこのソファーで休ませてあげなさい。ここまで全速力で来たのでしょう。誰か、この者に水を持ってきてあげて」


私の背からひょこっと顔を出した女王はニコニコしています

周りの騎士は剣を収め、王女の指示に従いました


報告の内容が内容なだけに、今回の礼儀を欠いた騎士の失態は水に流すようです

私もその意思に賛成です

本来は処罰する所ですが、カインの出産はこの国にとってとても大きな意味があります


私は直ぐに城の各部署に手紙を書いて送りました


カイン達の部屋の階は立ち入り禁止

外の警戒を増やし、これからモア王子達が部屋から出てくるまでは海外からの出入国の制限

城の敷地内の攻撃魔法の禁止

など多岐にわたります


出産時、父親になる者は番と子供を守る為に普段より警戒心が高くなります

ましてや運命の番ともなれば、部屋に近づく者は敵とみなされてしまうでしょう

しかも父親があのモア王子なのです、逆燐に触れればこの城なんて吹き飛んでしまうでしょう


此方もそうならないように、万全の状態にしなくてはならないのです


カイン達が部屋から出てくるのは早くて1週間はかかるはずです


子供の目が開き、まずは親子の絆を結ぶ事から始まります

子供は親の匂いを覚え顔を覚えます

子供が親に慣れて初めて第三者が面会する事が出来るのです

その第三者を子供が受け入れれるようになってから家族で外に出てくるという過程を踏まなくてはなりません


家族が出てくるまで勝手に中に入ろうとすれば父親に殺されても、勝手に入ろうとした者の方が悪いと判断されるのです


これは獣人の常識ですが、初めてソウ様に話した時は大そう驚かれておられました


出産はそれほど獣人にとって大切なものなのです

普通子供の種は1つしか貰えません

なので子供が誘拐されたり殺されたり、昔はよくあったのです

その事があり、出産時と出産後は外に出てくるまでは近寄ってはならないと暗黙の了解となったわけです

そして近づく者は子供に害をなす気なのだと判断され、父親がその相手を殺しても罪には問われないのです

エデン神の時からそれは変わっていません


招かれていない者は死にたくなければ部屋に近づいてはならないのです



特に今回は王族の誕生です

刺客が紛れていてもおかしくないのです

なので、誰であろうと王子達の居住区には立ち入り禁止

常に騎士が立ち、魔術師が廊下に結界を張ります

きっとモア王子自身が強めの結界を張っているでしょうが念には念を…と言う事です


城への出入りも制限を掛けたり、王子達の予定をずらしたりと調整もしなくてはなりません


他国にも連絡をしないと……

私の補佐官を呼び手分けをしていきます

はぁ……せっかく久々に番とまったり食事ができていたのに…また仕事になるだなんて…


「ダレク、たまには我も宰相の仕事を見学したいのだが……いいか?」

上目使いに尋ねられれば、愛する番です…駄目なんて言えるわけがありません


「もちろん。でも私の側を絶対に離れてはいけませんよ?」


腰に腕をまわし引き寄せると、頬を赤く染める番に満足します


「き…騎士も居るのにか…?」


「私の番を他の者に守らせる訳がないでしょう?貴女を守るのは私ですよ」


額にキスをすればさらに真っ赤になり、「そ…そうか……」ともごもごしています


あー…私の番はどうしてこんなにも可愛いのでしょう?

ここが自室なら我慢なんてしないのに……

さっさと仕事を終わらせましょう



私欲の為に最速で仕事を終わらせ、さっさと番を連れ自室に籠ったのは言うまでもありません












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