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王宮からまっすぐ進んだ先にある大きな広場が通称『建国記念広場』だ。今の国王がこの場所で新たなザダ王国が誕生したことを宣言したことに由来する。
そして戦争責任を問われた多くの罪人が処刑された場所でもある。
ナキスと別れたカイルはここに足を向けた。
自分の気持を整理するために来る必要があったのだ。
広場の目立たない一角にある石碑、そこにはたった一文、
『愚か者達の終焉』
と記されている。
少し前までのカイルは、これを見るたびに心の中で憤っていた。
誰が愚か者なのか!
かつての主君は名を残すことを永遠に禁じられた、それはこの場所で処刑された全員も同様だ。先祖代々が眠る墓所に埋葬することが許可されたのがせめてもの救いだろうか。
石碑の前には多くはないが花が手向けられていて、カイルも同じように花を置く。どんな花が相応しいか検討もつかなかったので目についた青い花にした。
そういえば王太子の瞳は青かった、騎士団長の息子は緑だったような、封印していた記憶を解いていき、ようやく石碑をじっくり眺める。
愚か者達、それがカイルに突き刺さる。
誰よりも自分に相応しいではないか。
上辺だけの美しさをいつまでも胸に抱いて、たまに感傷に浸っていた。知ろうとすればいくらでも知ることが出来たのにそれをしなかった。
「よく今までやってこれたものだなぁ」
自嘲めいた笑みと一緒に吐き出す。
勝手に被害者ぶって罪悪感に酔っていただけ、美しい思い出を特別な物にしたかっただけ。
レオノーラは無慈悲にもそれを現実という形で上書きした。
ザダ王国を残すため奮闘したレオノーラ、あんな目に合ったのにどうしてそんなことが出来たのだろうか。
いくら考えてもカイルは答えに行き着かない、ようやく突きつけられた己の愚かさは考えることすら奪ったように思う。
どれほどそこにいたのだろうか、気づくと人々の足が王宮に向かっていた。
建国記念日は日が沈む前に王宮のバルコニーで国王の演説が始まる。滅多に見ることの出来ない高貴な姿を一目見ようと多くの国民が集まるのだ。
戦後復興を見事に成し遂げた国王の人気は不動のものとなっている、カイルもその手腕は尊敬している。
しかし、どうしても感情の部分で受け入れられなかったカイルはそこに参加したことはなかった。喧騒を遠くに聞きながら自室で静かに一人で過ごすことにしていた。
今はどうだろうか?いや、これからはどうだろうか?
もういない人達との美しい思い出に浸るのはやめて、これからどんどん復興していく新たなザダ王国と共に、華々しい建国記念日を祝ってもいいだろう。
「さようなら…」
たった一言の決別、それだけを残してカイルは人々の波に乗り王宮へと足を向けたのだった。
そして戦争責任を問われた多くの罪人が処刑された場所でもある。
ナキスと別れたカイルはここに足を向けた。
自分の気持を整理するために来る必要があったのだ。
広場の目立たない一角にある石碑、そこにはたった一文、
『愚か者達の終焉』
と記されている。
少し前までのカイルは、これを見るたびに心の中で憤っていた。
誰が愚か者なのか!
かつての主君は名を残すことを永遠に禁じられた、それはこの場所で処刑された全員も同様だ。先祖代々が眠る墓所に埋葬することが許可されたのがせめてもの救いだろうか。
石碑の前には多くはないが花が手向けられていて、カイルも同じように花を置く。どんな花が相応しいか検討もつかなかったので目についた青い花にした。
そういえば王太子の瞳は青かった、騎士団長の息子は緑だったような、封印していた記憶を解いていき、ようやく石碑をじっくり眺める。
愚か者達、それがカイルに突き刺さる。
誰よりも自分に相応しいではないか。
上辺だけの美しさをいつまでも胸に抱いて、たまに感傷に浸っていた。知ろうとすればいくらでも知ることが出来たのにそれをしなかった。
「よく今までやってこれたものだなぁ」
自嘲めいた笑みと一緒に吐き出す。
勝手に被害者ぶって罪悪感に酔っていただけ、美しい思い出を特別な物にしたかっただけ。
レオノーラは無慈悲にもそれを現実という形で上書きした。
ザダ王国を残すため奮闘したレオノーラ、あんな目に合ったのにどうしてそんなことが出来たのだろうか。
いくら考えてもカイルは答えに行き着かない、ようやく突きつけられた己の愚かさは考えることすら奪ったように思う。
どれほどそこにいたのだろうか、気づくと人々の足が王宮に向かっていた。
建国記念日は日が沈む前に王宮のバルコニーで国王の演説が始まる。滅多に見ることの出来ない高貴な姿を一目見ようと多くの国民が集まるのだ。
戦後復興を見事に成し遂げた国王の人気は不動のものとなっている、カイルもその手腕は尊敬している。
しかし、どうしても感情の部分で受け入れられなかったカイルはそこに参加したことはなかった。喧騒を遠くに聞きながら自室で静かに一人で過ごすことにしていた。
今はどうだろうか?いや、これからはどうだろうか?
もういない人達との美しい思い出に浸るのはやめて、これからどんどん復興していく新たなザダ王国と共に、華々しい建国記念日を祝ってもいいだろう。
「さようなら…」
たった一言の決別、それだけを残してカイルは人々の波に乗り王宮へと足を向けたのだった。
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