7 / 12
7. 五月十日:信仰の自由
しおりを挟む※このお話は三回目の2022年7月18日、慧が占ってもらう前です。時系列としては11話の直後となります。
タイトルでも申し上げましたが、心臓の弱い方は閲覧注意です。心臓が並の人は平気だと思いますが、念の為お昼 に読んで下さい。ホラーが大好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。
俺はあれから慧と会えていない。共通の知人に聞いてみるが、嫌な顔をするだけで誰も教えてはくれなかった。
(あの噂のせいで…! 恵奈の奴…今度会ったら、ただじゃおかねえ!!)
今、慧のアパートまで来ている。
これが何回目なのか…彼女に会おうと何度訪ねてみても、呼び鈴の音が反応するだけで慧が部屋から出てくる事はなかった。
(今日も留守か…。もしや…引っ越したのか…?)
何の手掛かりも得る事は出来ず、俺は慧の住むアパートを後にした。
(慧が何より大切だったはずなのに…いつの間にか忘れていた。失ってから気付くなんてな……。)
沈んだ気持ちで薄暗い路地裏を歩く。慧のアパートから帰る時はいつもこの道を通るのだ。
「こんばんは!」
背後から声を掛けられる。
突然の事に驚き振り向くと、魔法少女のコスプレをした女の子が立っていた。
彼女はとても愛らしく、その独特な魅力に惹かれそうになるが俺の勘が待ったをかける。
(今の今まで人の気配なんてまるで感じなかったのに……。)
「慧ちゃんの幼馴染だよね?」
(慧…だと…?)
「慧を知ってるのか? 教えてくれ! 彼女は今どこにいるんだっ!?」
「そんな事知ってどうするの?」
「会いに行くに決まってる!」
彼女の手掛かりをようやく掴んだのだ。俺は居ても立っても居られなくなり、その少女を問い詰める。
「ダメだよ。個人情報保護ってやつだね!」
「くそっ!」
(周りには誰もいない…それならっ!)
周囲を見回し人がいない事を確認する。
「良いのか? 今ここには俺とお前しかいないんだぜ?」
俺は少女に凄んでみせる。こうして脅しつけてやれば素直に話すと思ったのだ。
しかし……。
「それで?」
少女はどこ吹く風といった様子で、笑顔を崩さない。まるで親しい友人と会話しているかの如く、俺の脅しなど気にもとめていない。
「…お前が今襲われても誰も助けちゃくれない。」
フフッと笑い、平然と距離を詰めて来る少女。
「そうは言うけどさ……。それはアナタにも同じ事が言えるよね?」
その態度が気に入らず俺は少女に掴み掛かろうと腕を振り上げ……。
ボタっ
(腕が上がらねえ……。それになんの音だ…?)
音の発生源を確認すると、腕に感じた違和感の正体がそこにはあった。
俺の腕が地面に転がっていたのだ。
(なん…で……?)
全く痛みを感じなかった。何故俺の腕が地面にあるのかも分からない。
(コイツは何だ……?)
少女に対する恐怖が沸き上がって来る。
「待て! 待ってくれ! 俺に何をした!?」
少女は笑顔を浮かべるだけで、俺の質問には答えない。
「助けてくれ! なっ? なっ? お、お前も捕まるのは嫌だろ?」
俺の命乞いは全く無価値なのか…少女は笑顔のまま、良くわからない事を言い出した。
「実はね…女神様が君みたいな人は嫌いなんだって!」
「俺を…殺す気……なのか?」
相当ヤバイ状況にいる事を俺は自覚したが…既に遅かった。
「私もやり直しは飽きたし、アナタが居なければもっと上手く事は運ぶかもしれないの……。」
(何……を言って……。)
「た…たすけ……」
「だ・か・らぁ……。」
ニタリと笑った後、突然目の前から少女の姿が消失する。
(消えた…? いったいどこ…)
「死んでね?」
俺の耳元で小さな囁きが…清涼な声でやけに強く響き渡る。
驚いて振り返ろうとするが……。
突然、地面が自ら動いているように迫り来る。
顔面が叩きつけられ…強い衝撃の後グルグルと世界が回り……。
(なんで…俺の体がそこにあるんだ?)
俺は自分の体を地面から見上げるような恰好になっていた。
「お掃除完了! 良い仕事したなぁ。」
「…ぇ…ぇ……。」
「あれ? まだ生きてるの?」
(なんで声が……生きてるってどうゆう事だ?)
俺は…何故か全く声を出せなかった。
「もしかして自分が死んでる事に気付いてないの?」
不思議そうな顔で俺を見る少女。
(死ん……だ……?)
「面白ーい!! 活け造りのお魚みたいだね!?」
俺が最後に見た光景は…少女の花が咲いたようなとびきり…笑顔だ……た……。
「あー楽しかった!」
少女は男の死体に未知の液体を振りかけた。
「今日の一言! バカは死んでも気付かない!!」
すると、最初から何もなかったかのように男の体が消失する。
「この人は…過去、現在、未来、全ての時間軸において存在し得ない人物になっちゃった。」
これでもうあの三人を邪魔する人は居なくなったなぁ…。
少女はそう呟き…。
「あれ?」
「もしかして貴方…………今の見ちゃった?」
「画面の向こうに居るよね……。」
「見てるんでしょ? スマホ? タブレット? それともPC?」
「貴方は……死んでる事に気付くかなぁ…………?」
タイトルでも申し上げましたが、心臓の弱い方は閲覧注意です。心臓が並の人は平気だと思いますが、念の為お昼 に読んで下さい。ホラーが大好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。
俺はあれから慧と会えていない。共通の知人に聞いてみるが、嫌な顔をするだけで誰も教えてはくれなかった。
(あの噂のせいで…! 恵奈の奴…今度会ったら、ただじゃおかねえ!!)
今、慧のアパートまで来ている。
これが何回目なのか…彼女に会おうと何度訪ねてみても、呼び鈴の音が反応するだけで慧が部屋から出てくる事はなかった。
(今日も留守か…。もしや…引っ越したのか…?)
何の手掛かりも得る事は出来ず、俺は慧の住むアパートを後にした。
(慧が何より大切だったはずなのに…いつの間にか忘れていた。失ってから気付くなんてな……。)
沈んだ気持ちで薄暗い路地裏を歩く。慧のアパートから帰る時はいつもこの道を通るのだ。
「こんばんは!」
背後から声を掛けられる。
突然の事に驚き振り向くと、魔法少女のコスプレをした女の子が立っていた。
彼女はとても愛らしく、その独特な魅力に惹かれそうになるが俺の勘が待ったをかける。
(今の今まで人の気配なんてまるで感じなかったのに……。)
「慧ちゃんの幼馴染だよね?」
(慧…だと…?)
「慧を知ってるのか? 教えてくれ! 彼女は今どこにいるんだっ!?」
「そんな事知ってどうするの?」
「会いに行くに決まってる!」
彼女の手掛かりをようやく掴んだのだ。俺は居ても立っても居られなくなり、その少女を問い詰める。
「ダメだよ。個人情報保護ってやつだね!」
「くそっ!」
(周りには誰もいない…それならっ!)
周囲を見回し人がいない事を確認する。
「良いのか? 今ここには俺とお前しかいないんだぜ?」
俺は少女に凄んでみせる。こうして脅しつけてやれば素直に話すと思ったのだ。
しかし……。
「それで?」
少女はどこ吹く風といった様子で、笑顔を崩さない。まるで親しい友人と会話しているかの如く、俺の脅しなど気にもとめていない。
「…お前が今襲われても誰も助けちゃくれない。」
フフッと笑い、平然と距離を詰めて来る少女。
「そうは言うけどさ……。それはアナタにも同じ事が言えるよね?」
その態度が気に入らず俺は少女に掴み掛かろうと腕を振り上げ……。
ボタっ
(腕が上がらねえ……。それになんの音だ…?)
音の発生源を確認すると、腕に感じた違和感の正体がそこにはあった。
俺の腕が地面に転がっていたのだ。
(なん…で……?)
全く痛みを感じなかった。何故俺の腕が地面にあるのかも分からない。
(コイツは何だ……?)
少女に対する恐怖が沸き上がって来る。
「待て! 待ってくれ! 俺に何をした!?」
少女は笑顔を浮かべるだけで、俺の質問には答えない。
「助けてくれ! なっ? なっ? お、お前も捕まるのは嫌だろ?」
俺の命乞いは全く無価値なのか…少女は笑顔のまま、良くわからない事を言い出した。
「実はね…女神様が君みたいな人は嫌いなんだって!」
「俺を…殺す気……なのか?」
相当ヤバイ状況にいる事を俺は自覚したが…既に遅かった。
「私もやり直しは飽きたし、アナタが居なければもっと上手く事は運ぶかもしれないの……。」
(何……を言って……。)
「た…たすけ……」
「だ・か・らぁ……。」
ニタリと笑った後、突然目の前から少女の姿が消失する。
(消えた…? いったいどこ…)
「死んでね?」
俺の耳元で小さな囁きが…清涼な声でやけに強く響き渡る。
驚いて振り返ろうとするが……。
突然、地面が自ら動いているように迫り来る。
顔面が叩きつけられ…強い衝撃の後グルグルと世界が回り……。
(なんで…俺の体がそこにあるんだ?)
俺は自分の体を地面から見上げるような恰好になっていた。
「お掃除完了! 良い仕事したなぁ。」
「…ぇ…ぇ……。」
「あれ? まだ生きてるの?」
(なんで声が……生きてるってどうゆう事だ?)
俺は…何故か全く声を出せなかった。
「もしかして自分が死んでる事に気付いてないの?」
不思議そうな顔で俺を見る少女。
(死ん……だ……?)
「面白ーい!! 活け造りのお魚みたいだね!?」
俺が最後に見た光景は…少女の花が咲いたようなとびきり…笑顔だ……た……。
「あー楽しかった!」
少女は男の死体に未知の液体を振りかけた。
「今日の一言! バカは死んでも気付かない!!」
すると、最初から何もなかったかのように男の体が消失する。
「この人は…過去、現在、未来、全ての時間軸において存在し得ない人物になっちゃった。」
これでもうあの三人を邪魔する人は居なくなったなぁ…。
少女はそう呟き…。
「あれ?」
「もしかして貴方…………今の見ちゃった?」
「画面の向こうに居るよね……。」
「見てるんでしょ? スマホ? タブレット? それともPC?」
「貴方は……死んでる事に気付くかなぁ…………?」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

武田信玄救出作戦
みるく
歴史・時代
領土拡大を目指す武田信玄は三増峠での戦を終え、駿河侵攻を再開しようと準備をしていた。
しかしある日、謎の刺客によって信玄は連れ去られてしまう。
望月千代女からの報告により、武田家重臣たちは主人を助けに行こうと立ち上がる。
信玄を捕らえた目的は何なのか。そして彼らを待ち受ける困難を乗り越え、無事に助けることはできるのか!?
※極力史実に沿うように進めていますが、細々としたところは筆者の創作です。物語の内容は歴史改変ですのであしからず。
【短編】輿上(よじょう)の敵 ~ 私本 桶狭間 ~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
今川義元の大軍が尾張に迫る中、織田信長の家臣、簗田政綱は、輿(こし)が来るのを待ち構えていた。幕府により、尾張において輿に乗れるは斯波家の斯波義銀。かつて、信長が傀儡の国主として推戴していた男である。義元は、義銀を御輿にして、尾張の支配を目論んでいた。義銀を討ち、義元を止めるよう策す信長。が、義元が落馬し、義銀の輿に乗って進軍。それを知った信長は、義銀ではなく、輿上の敵・義元を討つべく出陣する。
【表紙画像】
English: Kano Soshu (1551-1601)日本語: 狩野元秀(1551〜1601年), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
前夜 ~敵は本能寺にあり~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
織田信忠は、本能寺の変の前夜、父・信長を訪れていた。そして信長から、織田家の――信忠の今後と、明智光秀の今後についての考えを聞く。それを知った光秀は……。
【表紙画像・挿絵画像】
「きまぐれアフター」様より


槍一本携えて ~本多忠勝奮闘記~
佐倉伸哉
歴史・時代
慶長十四年、五月。澄み渡る江戸の空を浮かない顔で眺める一人の老男性。
彼の名は本多平八郎忠勝。徳川家康の下で数々の武功を挙げ、相棒『蜻蛉切』と共に生涯五十七度の戦に参陣しながら掠り傷一つ負わなかった歴戦の猛者である。
姉川では合戦の口火を切る単騎突貫を行い、三方ヶ原の前哨戦となった一言坂の戦いでは戦国最強と謳われた武田勢を相手に孤軍奮闘し、本能寺の変で錯乱した主人を一喝し、小牧では五万の豊臣勢に五百の手勢で立ち向かった。その武勇は武田信玄や織田信長、豊臣秀吉から高く評価されることとなり、『天下無双』と呼ばれるまでになった。
その忠勝が、どうして浮かない顔をしているのか? 本多忠勝の歩んできた半生を振り返ってみようではないか―――
<第5回歴史・時代小説大賞>に参加しています!!
皆様の投票、よろしくお願い致します。
お気に入り・感想も大歓迎です! 「ここ直した方がいいよ」という指摘もお待ちしています。
※第八回ポプラ社小説新人賞へ応募 → 落選
※第七回ネット小説大賞へ応募 → 一次選考通過
当作品は第七回ネット小説大賞へ応募した作品に加筆修正を加えた作品となっております。予めご了承下さい。
『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n1299fd/ )』でも同時掲載中です。
浮雲の譜
神尾 宥人
歴史・時代
時は天正。織田の侵攻によって落城した高遠城にて、武田家家臣・飯島善十郎は蔦と名乗る透波の手によって九死に一生を得る。主家を失って流浪の身となったふたりは、流れ着くように訪れた富山の城下で、ひょんなことから長瀬小太郎という若侍、そして尾上備前守氏綱という男と出会う。そして善十郎は氏綱の誘いにより、かの者の主家である飛州帰雲城主・内ヶ島兵庫頭氏理のもとに仕官することとする。
峻厳な山々に守られ、四代百二十年の歴史を築いてきた内ヶ島家。その元で善十郎は、若武者たちに槍を指南しながら、穏やかな日々を過ごす。しかしそんな辺境の小国にも、乱世の荒波はひたひたと忍び寄ってきていた……
空蝉
横山美香
歴史・時代
薩摩藩島津家の分家の娘として生まれながら、将軍家御台所となった天璋院篤姫。孝明天皇の妹という高貴な生まれから、第十四代将軍・徳川家定の妻となった和宮親子内親王。
二人の女性と二組の夫婦の恋と人生の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる