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第四章
①
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翌朝、いつも通りに事務所へ行くと亮次の姿がなかった。
「亮次さん、またどっか出かけてるのか」
「連絡はないのか」
「ああ、特には」
快には一つ、疑問に思っていることがあった。
これは後から思ったことだが、昨夜、事務所に戻ってきた亮次はコンビニ袋を持っていなかった。
彼は、目的もなくただふらっとコンビニに行く、などという行動はしない人だ。買おうと思っていたものがなかったのかもしれないが、つい気になってしまう。
本当にコンビニに行った帰りだったのだろうかと。
「なあ、考えたことあるか。亮次さんが箱を持ってるかもしれないって」
「亮次さんが?」
悠利が軽く眉をひそめて聞き返す。
「朋希が言ったのか」
「うん、まあ。俺と亮次さんが隠し持ってるんじゃねえかって言われてさ」
悠利は少し考えるように黙ってから、答えた。
「……確かに亮次さんは初音家とよく関わっていたが、その可能性は考えていなかったな」
「そっか」
「可能性があるとすれば初音家の本家の人間かと」
「それってこの前の人のことだよな。誠二郎さんだっけ」
「ああ」
誠二郎は箱を探していると言っていたが、悠利はもしかしたら知っているのではないかと多少疑っていたらしい。
そう思うと、朋希が亮次や快のことを疑っていたのも仕方のないことなのかもしれない。
「ちなみにお前については論外だ」
「なんだよそれ」
「お前が俺に嘘をつくはずがないからな」
当たり前のように言い切られて、快は思わず笑った。
「信用されてんな、俺」
「もちろんだ」
昨夜は開けっ放しになっていた亮次の机の引き出しは、何事もなかったかのように閉じられている。
快ですらも開けたことがなかった。
開けるなと言われているわけでもなかったが、亮次の机に用事があることなどなかったし、開けたいと思ったこ
ともなかった。今までは。
「亮次さんがいないうちに事務所の中探してみるかって言いたいとこだけど、ちょっと待ってくれるか」
「お前は亮次さんが箱を持っていると思うのか」
「わからねえけど……もし持ってるなら何か事情があるんだとは思ってる。だから直接聞きたいんだ」
快なら、勝手に事務所の中を家探しすることなど簡単にできる。だがそれでは昨夜の朋希と同じだ。
亮次を信用しているからこそ、本人に聞きたい。
「わかった、お前に任せる」
「うん。ありがとう」
どこかへ行く予定がなかったこともあり、その日は一日のほとんどを事務所で過ごした。
外へ出たのは食事の買い物くらいだったが、結局、亮次が戻ってくることはなかった。
深夜二時を過ぎた頃、閉店後のルミエールのドアを開けると、カウンターからは普段通りの実華子が二人を迎えた。
「こんばんは、快君、悠利君。今日もお疲れ様。二人ともまだ着替えてるからもう少し待ってね」
カウンターの上にはまだコップや皿が残っている。
今夜はどうやら遅くまで客がいたようだ。
「実華子さん、亮次さんがどこにいるかって知りませんか」
快がたずねると、皿を片付けていた実華子が顔を上げる。
「亮? 事務所にはいないの?」
「朝からずっと戻ってなくて」
「そうなの? どこに行ったのかしら」
「快、悠利、お待たせー」
甲高い声とともに、レイナとミユウが奥から出てきた。二人を連れて店から出て行こうとした快と悠利に、実華子が言った。
「あの人なら心配しなくても大丈夫だから、待っていないで帰ったら寝なさいね」
わかってます、と快が言い、店をあとにした。
実華子が一人、再び店の片づけを始めたその五分ほどあとのことだった。閉店後にも関わらず店のドアが開いた。
少し驚いた様子で顔を上げた実華子だったが、入ってきた人物を見て笑った。
「あら。お久しぶりね、誠二郎さん」
「亮次さん、またどっか出かけてるのか」
「連絡はないのか」
「ああ、特には」
快には一つ、疑問に思っていることがあった。
これは後から思ったことだが、昨夜、事務所に戻ってきた亮次はコンビニ袋を持っていなかった。
彼は、目的もなくただふらっとコンビニに行く、などという行動はしない人だ。買おうと思っていたものがなかったのかもしれないが、つい気になってしまう。
本当にコンビニに行った帰りだったのだろうかと。
「なあ、考えたことあるか。亮次さんが箱を持ってるかもしれないって」
「亮次さんが?」
悠利が軽く眉をひそめて聞き返す。
「朋希が言ったのか」
「うん、まあ。俺と亮次さんが隠し持ってるんじゃねえかって言われてさ」
悠利は少し考えるように黙ってから、答えた。
「……確かに亮次さんは初音家とよく関わっていたが、その可能性は考えていなかったな」
「そっか」
「可能性があるとすれば初音家の本家の人間かと」
「それってこの前の人のことだよな。誠二郎さんだっけ」
「ああ」
誠二郎は箱を探していると言っていたが、悠利はもしかしたら知っているのではないかと多少疑っていたらしい。
そう思うと、朋希が亮次や快のことを疑っていたのも仕方のないことなのかもしれない。
「ちなみにお前については論外だ」
「なんだよそれ」
「お前が俺に嘘をつくはずがないからな」
当たり前のように言い切られて、快は思わず笑った。
「信用されてんな、俺」
「もちろんだ」
昨夜は開けっ放しになっていた亮次の机の引き出しは、何事もなかったかのように閉じられている。
快ですらも開けたことがなかった。
開けるなと言われているわけでもなかったが、亮次の机に用事があることなどなかったし、開けたいと思ったこ
ともなかった。今までは。
「亮次さんがいないうちに事務所の中探してみるかって言いたいとこだけど、ちょっと待ってくれるか」
「お前は亮次さんが箱を持っていると思うのか」
「わからねえけど……もし持ってるなら何か事情があるんだとは思ってる。だから直接聞きたいんだ」
快なら、勝手に事務所の中を家探しすることなど簡単にできる。だがそれでは昨夜の朋希と同じだ。
亮次を信用しているからこそ、本人に聞きたい。
「わかった、お前に任せる」
「うん。ありがとう」
どこかへ行く予定がなかったこともあり、その日は一日のほとんどを事務所で過ごした。
外へ出たのは食事の買い物くらいだったが、結局、亮次が戻ってくることはなかった。
深夜二時を過ぎた頃、閉店後のルミエールのドアを開けると、カウンターからは普段通りの実華子が二人を迎えた。
「こんばんは、快君、悠利君。今日もお疲れ様。二人ともまだ着替えてるからもう少し待ってね」
カウンターの上にはまだコップや皿が残っている。
今夜はどうやら遅くまで客がいたようだ。
「実華子さん、亮次さんがどこにいるかって知りませんか」
快がたずねると、皿を片付けていた実華子が顔を上げる。
「亮? 事務所にはいないの?」
「朝からずっと戻ってなくて」
「そうなの? どこに行ったのかしら」
「快、悠利、お待たせー」
甲高い声とともに、レイナとミユウが奥から出てきた。二人を連れて店から出て行こうとした快と悠利に、実華子が言った。
「あの人なら心配しなくても大丈夫だから、待っていないで帰ったら寝なさいね」
わかってます、と快が言い、店をあとにした。
実華子が一人、再び店の片づけを始めたその五分ほどあとのことだった。閉店後にも関わらず店のドアが開いた。
少し驚いた様子で顔を上げた実華子だったが、入ってきた人物を見て笑った。
「あら。お久しぶりね、誠二郎さん」
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