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外伝 殺された皇子と名もなき王女
第弐拾漆話 二人目の義息子
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皓月はすっきりした気分で部屋を見まわした。
叛乱の後処理に遺児の引き取りに見合いに、いろいろなことが続いた。三年の喪が明けて初めての建国祭、それでようやく一区切りと言える。準備は整っているので、あまり憂うことはない。終わったら、西へ連絡を取ろう。遅くなってしまったけれど、彼女との約束を果たす為に。
目を瞑った皓月の脳裏に、玻璃のような柔い笑みが過り――
「おとーさま! あのこ、とってもはんこーてきだわ!」
娘の声で引き戻された。
「黎羽と何かあったのかい?」
「あのねあのね、あのこ、珠喜がいっしょにあそぼっていってもむしするのよ! もじをしらないっていうからいっしょにべんきょうしようとおもってごほんをもっていったら、ほんをふりはらったの! しんじられないわ!」
珠喜はお転婆だが、同時に物語を愛している。皓月は怒る娘を膝の上に抱き上げる。
「珠喜、聞いておくれ。黎羽はね、生まれてからずっと、人に見つからないように、人とあまり話さないようにと言われてきたんだ」
「どーして?」
「叛乱で黎羽のお父様は死んでしまった。黎羽のお母様が、黎羽も死んでしまうのではないかと思って、黎羽を隠したんだ」
「......ふうん」
珠喜の顔によくわからない、と書いてあったので、皓月は表現を改めた。
「ずっと、かくれんぼで見つからないように言われていたということだよ」
「えっ! それは、とってもたいへんだわ」
「そうなんだ。しかも、かくれんぼで、他の人と一緒に隠れてはいけなかった」
「おにーさまとはだめってこと? 珠喜ひとり?」
「あぁ」
「それは、ますますたいへんだわ」
「だろう? だから、かくれんぼはもうしなくていいんだよ、ってゆっくりわかってもらうんだ」
「黎羽はまだかくれんぼしなきゃいけないとおもってるの?」
「そう。他の人に見つかってはいけない、他の人と話してはいけない。そう思っているから、ああいう行動をしてしまうんだ。大変かもしれないけれど、かくれんぼしなくていいんだよ、ってゆっくり教えていこう」
「わかったわ、おとーさま!」
珠喜は頷いて皓月の膝から降りる。かと思えば、皓月の長衣を掴んだ。
「おとーさま、わたし、いまから黎羽とおにーさまとかくれんぼするわ」
「うん」
「おとーさまが鬼よ!」
「え?」
「三百かぞえたらきて!」
「ちょ、」
この後見合いなんだけど――という前に、珠喜は駆け出す。皓月は小さく笑って、追いかけようとした侍従を止めた。
「いい、付き合おう――蔡嬢には、四半刻遅れると連絡を」
「......承知しました」
一、と皓月は頭の中で数える。
引きこもりの慈衍と、狼のように母親以外を警戒する黎羽。
皓月はうまく話が出来なかった。会話の拒絶と一緒に出掛ける試み以外に、何も思いつかなかった。どうか珠喜の破天荒さがふたりの心の壁を取り払ってくれればいい、と皓月は願った。他力本願であることは――百も承知だけれど。
***
「黎羽!」
黎羽はここ最近毎日のように聞いている声に、身を強張らせた。あの子は黎羽を捕まえない、そう母は言っていたけれど、目を刳り貫かれそうになったり、袋叩きにされた記憶は、黎羽が人に心を開くのを難しくしていた。
「――かくれんぼしましょ!」
「......?」
くるくると表情が変わる子の名前は珠喜といった。
「わたしとおにーさまとあなたでかくれるの。おとーさまがみつけるひとよ!」
珠喜の後ろには、珠喜とあまり似ていない、珠喜の兄だという少年がいた。名前は慈衍といったように思う。
「いっぱいおしえてあげるわ。ここは、わたしたちのおうちだから。はしったらちゅういされるところとされないところと、きのぼりしやすいきと、なんでもわたしがおしえてあげる」
「......おうち?」
「そうよ! おでかけして、かえってきて。せかいでいちばん、やすらげるところ、っておとーさまいってたわ」
楽しそうな笑みだった。かつて黎羽に敵意を向けていた者たちとは、似ても似つかない笑みだった。
それがゆえに、黎羽は掴まれた手を、振りほどかなかった。
「いきましょ!」
***
珠喜は困っていた。ここに隠れる、という兄と別れ、黎羽と歩くこと暫く。
迷子になった。
黎羽にいろいろなところを見せてあげよう、と思う気持ちが強すぎたのか、さっぱり見覚えがないところに迷い込んでしまったらしい。どこかの部屋だが、人気がない。不安な気持ちもあるが、銅像を見ている黎羽が嬉しそうなのでいいやと思うことにする。
――おとーさまがみつけてくださるわ。
そう思うのと裏腹に、道が分からないという恐怖が珠喜の中で大きくなっていった。目をきらきらさせる黎羽に悟られまいと唇をぎゅっと噛みしめ、必死で皇宮の地図を思い出そうと記憶を漁るが、全然分からない。珠喜の不安そうな雰囲気を感じ取り、黎羽もつないだ手に力を込めた。
――どうしよう。
いよいよ泣きそうになった時だ。かつん、と沓音が響いた。ふたりは揃って振り返る。
そこに立っていたのは、腕に本を抱え、眼鏡をかけた女性だった。
「ああ、あああ、あ、あの」
「ああああああああ?」
「うえっ、え、と、迷子、です、か?」
本を抱えた女性は、何故か彼女自身が涙を浮かべながらそう言った。
***
「――見当たらないね」
「......はい」
慈衍を見つけて暫く、思い当たるところは探したのだが、見当たらない。焦燥に足を速めそうになって、慌てて慈衍に歩幅を合わせた。
「――最近はどうだい。黎羽が反抗的だと、珠喜は立腹していたが」
「.....いえ、あまりそのようなことは」
「そうかい」
沈黙。
「勉学も剣術も、師範がいたく褒めていたよ」
「身に余るお言葉です。今後も精進してまいります」
「無理だけはしないように」
「はい。お心遣い有難うございます」
「慈衍は真面目すぎて聊か心配だよ。何しろ私の弟は、剣術の稽古を嫌がって、三回に一回はさぼっていたんだから」
「......さようですか」
困った。話が続かない。
皓月はくだらないことでも話題をひねり出したが、慈衍の答えはそっけない。まだしばらく時間がかかりそうだ――と思った皓月は、ふと足を止めた。
「......陛下?」
「いや、今、珠喜の声が聞こえたような......」
耳を澄ませると、確かにどこからか珠喜の声が聞こえる。皓月は慈衍と共に声の方へと動き出す。
「――おとーさまああああああ!」
海棠色の衣を翻し、半泣きで駆けてくる娘、それに追いすがる息子。更に後ろにある人物を認め、皓月は目を瞬いた。
「おどーざまあああああああ! 珠喜、まいごになっちゃったああああああ。こわかったようううううう!」
一頻り泣きじゃくる娘を宥め、泣き疲れて眠った珠喜を護衛に託し、おろおろする黎羽に視線を合わせた。
「――珠喜は、黎羽にいいところを見せようとして頑張り過ぎちゃったみたいだ」
「......俺に?」
「あぁ」
皓月は微笑んだ。俺に?その一言は、初めて黎羽が皓月に反応した言葉だった。
「ここはそなたの家だから。案内すると張り切っていたのだろうね」
「......せかいでいちばん、あんしんできるばしょ?」
「そうなってほしいと、願っている」
黎羽は視線を彷徨わせた。皓月、珠喜、草叢、とあちこちを移動した視線は、結局珠喜のところで制止した。
「......あいつ、どこいくの」
「部屋に。疲れて眠ってしまったみたいだ」
「......おこられる?」
「なぜ? 悪いことをしていないのだから、誰も怒らないよ」
「......へや、かってに、いったら」
「あぁ。気にしないよ。寧ろ喜ぶと思うよ」
黎羽は小さく頷いた。護衛の元に走り寄る。慈衍もひっそりとその脇に佇んでいた。
「ここでお暇します、陛下」
護衛と子供たちが帰っていくと、皓月は立ち上がった。泣いた珠喜の手で乱れた髪に手をやり、苦笑する。視線の先では、所在なさげに本を抱えた令嬢が立っていた。
「失礼、お見苦しいところをお見せしました――蔡嬢」
叛乱の後処理に遺児の引き取りに見合いに、いろいろなことが続いた。三年の喪が明けて初めての建国祭、それでようやく一区切りと言える。準備は整っているので、あまり憂うことはない。終わったら、西へ連絡を取ろう。遅くなってしまったけれど、彼女との約束を果たす為に。
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「おとーさま! あのこ、とってもはんこーてきだわ!」
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「黎羽と何かあったのかい?」
「あのねあのね、あのこ、珠喜がいっしょにあそぼっていってもむしするのよ! もじをしらないっていうからいっしょにべんきょうしようとおもってごほんをもっていったら、ほんをふりはらったの! しんじられないわ!」
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「珠喜、聞いておくれ。黎羽はね、生まれてからずっと、人に見つからないように、人とあまり話さないようにと言われてきたんだ」
「どーして?」
「叛乱で黎羽のお父様は死んでしまった。黎羽のお母様が、黎羽も死んでしまうのではないかと思って、黎羽を隠したんだ」
「......ふうん」
珠喜の顔によくわからない、と書いてあったので、皓月は表現を改めた。
「ずっと、かくれんぼで見つからないように言われていたということだよ」
「えっ! それは、とってもたいへんだわ」
「そうなんだ。しかも、かくれんぼで、他の人と一緒に隠れてはいけなかった」
「おにーさまとはだめってこと? 珠喜ひとり?」
「あぁ」
「それは、ますますたいへんだわ」
「だろう? だから、かくれんぼはもうしなくていいんだよ、ってゆっくりわかってもらうんだ」
「黎羽はまだかくれんぼしなきゃいけないとおもってるの?」
「そう。他の人に見つかってはいけない、他の人と話してはいけない。そう思っているから、ああいう行動をしてしまうんだ。大変かもしれないけれど、かくれんぼしなくていいんだよ、ってゆっくり教えていこう」
「わかったわ、おとーさま!」
珠喜は頷いて皓月の膝から降りる。かと思えば、皓月の長衣を掴んだ。
「おとーさま、わたし、いまから黎羽とおにーさまとかくれんぼするわ」
「うん」
「おとーさまが鬼よ!」
「え?」
「三百かぞえたらきて!」
「ちょ、」
この後見合いなんだけど――という前に、珠喜は駆け出す。皓月は小さく笑って、追いかけようとした侍従を止めた。
「いい、付き合おう――蔡嬢には、四半刻遅れると連絡を」
「......承知しました」
一、と皓月は頭の中で数える。
引きこもりの慈衍と、狼のように母親以外を警戒する黎羽。
皓月はうまく話が出来なかった。会話の拒絶と一緒に出掛ける試み以外に、何も思いつかなかった。どうか珠喜の破天荒さがふたりの心の壁を取り払ってくれればいい、と皓月は願った。他力本願であることは――百も承知だけれど。
***
「黎羽!」
黎羽はここ最近毎日のように聞いている声に、身を強張らせた。あの子は黎羽を捕まえない、そう母は言っていたけれど、目を刳り貫かれそうになったり、袋叩きにされた記憶は、黎羽が人に心を開くのを難しくしていた。
「――かくれんぼしましょ!」
「......?」
くるくると表情が変わる子の名前は珠喜といった。
「わたしとおにーさまとあなたでかくれるの。おとーさまがみつけるひとよ!」
珠喜の後ろには、珠喜とあまり似ていない、珠喜の兄だという少年がいた。名前は慈衍といったように思う。
「いっぱいおしえてあげるわ。ここは、わたしたちのおうちだから。はしったらちゅういされるところとされないところと、きのぼりしやすいきと、なんでもわたしがおしえてあげる」
「......おうち?」
「そうよ! おでかけして、かえってきて。せかいでいちばん、やすらげるところ、っておとーさまいってたわ」
楽しそうな笑みだった。かつて黎羽に敵意を向けていた者たちとは、似ても似つかない笑みだった。
それがゆえに、黎羽は掴まれた手を、振りほどかなかった。
「いきましょ!」
***
珠喜は困っていた。ここに隠れる、という兄と別れ、黎羽と歩くこと暫く。
迷子になった。
黎羽にいろいろなところを見せてあげよう、と思う気持ちが強すぎたのか、さっぱり見覚えがないところに迷い込んでしまったらしい。どこかの部屋だが、人気がない。不安な気持ちもあるが、銅像を見ている黎羽が嬉しそうなのでいいやと思うことにする。
――おとーさまがみつけてくださるわ。
そう思うのと裏腹に、道が分からないという恐怖が珠喜の中で大きくなっていった。目をきらきらさせる黎羽に悟られまいと唇をぎゅっと噛みしめ、必死で皇宮の地図を思い出そうと記憶を漁るが、全然分からない。珠喜の不安そうな雰囲気を感じ取り、黎羽もつないだ手に力を込めた。
――どうしよう。
いよいよ泣きそうになった時だ。かつん、と沓音が響いた。ふたりは揃って振り返る。
そこに立っていたのは、腕に本を抱え、眼鏡をかけた女性だった。
「ああ、あああ、あ、あの」
「ああああああああ?」
「うえっ、え、と、迷子、です、か?」
本を抱えた女性は、何故か彼女自身が涙を浮かべながらそう言った。
***
「――見当たらないね」
「......はい」
慈衍を見つけて暫く、思い当たるところは探したのだが、見当たらない。焦燥に足を速めそうになって、慌てて慈衍に歩幅を合わせた。
「――最近はどうだい。黎羽が反抗的だと、珠喜は立腹していたが」
「.....いえ、あまりそのようなことは」
「そうかい」
沈黙。
「勉学も剣術も、師範がいたく褒めていたよ」
「身に余るお言葉です。今後も精進してまいります」
「無理だけはしないように」
「はい。お心遣い有難うございます」
「慈衍は真面目すぎて聊か心配だよ。何しろ私の弟は、剣術の稽古を嫌がって、三回に一回はさぼっていたんだから」
「......さようですか」
困った。話が続かない。
皓月はくだらないことでも話題をひねり出したが、慈衍の答えはそっけない。まだしばらく時間がかかりそうだ――と思った皓月は、ふと足を止めた。
「......陛下?」
「いや、今、珠喜の声が聞こえたような......」
耳を澄ませると、確かにどこからか珠喜の声が聞こえる。皓月は慈衍と共に声の方へと動き出す。
「――おとーさまああああああ!」
海棠色の衣を翻し、半泣きで駆けてくる娘、それに追いすがる息子。更に後ろにある人物を認め、皓月は目を瞬いた。
「おどーざまあああああああ! 珠喜、まいごになっちゃったああああああ。こわかったようううううう!」
一頻り泣きじゃくる娘を宥め、泣き疲れて眠った珠喜を護衛に託し、おろおろする黎羽に視線を合わせた。
「――珠喜は、黎羽にいいところを見せようとして頑張り過ぎちゃったみたいだ」
「......俺に?」
「あぁ」
皓月は微笑んだ。俺に?その一言は、初めて黎羽が皓月に反応した言葉だった。
「ここはそなたの家だから。案内すると張り切っていたのだろうね」
「......せかいでいちばん、あんしんできるばしょ?」
「そうなってほしいと、願っている」
黎羽は視線を彷徨わせた。皓月、珠喜、草叢、とあちこちを移動した視線は、結局珠喜のところで制止した。
「......あいつ、どこいくの」
「部屋に。疲れて眠ってしまったみたいだ」
「......おこられる?」
「なぜ? 悪いことをしていないのだから、誰も怒らないよ」
「......へや、かってに、いったら」
「あぁ。気にしないよ。寧ろ喜ぶと思うよ」
黎羽は小さく頷いた。護衛の元に走り寄る。慈衍もひっそりとその脇に佇んでいた。
「ここでお暇します、陛下」
護衛と子供たちが帰っていくと、皓月は立ち上がった。泣いた珠喜の手で乱れた髪に手をやり、苦笑する。視線の先では、所在なさげに本を抱えた令嬢が立っていた。
「失礼、お見苦しいところをお見せしました――蔡嬢」
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