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第1話 マキナ、魔王の上に落っこちる
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「いったぁ......えここどこ?」
マキナが周囲を見渡すと、黒の壁紙と不気味な骸骨と目が合った。はて、家ではないぞ。
「......余の上から退け」
「うっわあ人だ! ごめんなさい座標指定間違えたかも。あれお兄さん角あるの、かっこいいね」
マキナは角のある人の上に乗っかっていた。慌てて降りると、マキナが下敷きにしていた人(仮)は立ち上がる。背が高い。2m近くあるんじゃないだろうか。
「ニンゲン。どうやって魔王城に侵入した」
「えっ、ここ魔族とかいる世界線なの。まずったなあ、第六星雲に行く予定だったのに。んー、第八星雲かなぁ、でも地理的には――わあ、今どうやって剣出したの? 魔法?」
首筋に剣を突き出されながらもマキナはのほほんとしている。魔族(仮)の顔は険しくなっていく。
「ニンゲン。余の問いに答えよ」
「んー、えっとね、私人間なんだけど人間じゃなくて。この説明わかりにくいな。ん-とね、この世界に並行世界とかいう概念ある? この世界以外にもたくさん、世界が存在していてね。私は世界を渡り歩きながら生きる一族なんだ。13個目の家に帰ろうとしたんだけど、ちょっと座標間違えちゃったみたい」
「並行世界? 13個目の家......」
「そうそう。星ごとに一個くらい家持っとかないと不便だから。でも一族が適当に使うから誰の家かもよくわかんなくなってきてさ。行こうとしてたとこは俺のおじいちゃんのお姉さんの旦那さんの3番目のお兄さんの息子さんの婿入り先のお隣さんの息子さんの家かな」
「それはもはや他人の家だろう......ところで星とはなんだ」
「あー、簡単に言うと世界。ここは魔族と人間がいるのかな? 生物が、乗り物と徒歩、とここだと魔法か、で行ける圏内を世界って言う感じかな」
「なるほど」
「あ、信じてくれるの?」
マキナは目を瞬いた。
「魔力を持たぬ民は、この世におらぬ」
「なーるほど」
分かりやすい識別方法があってよかった。
「では帰れ」
「あーそれなんだけど。実は、ここの世界、来たことなくて。座標査定と実際に飛ぶまでにちょっと時間もらえないかな。多分事故で飛んじゃったんだけど、出発地と到着地の座標指定しないと、普通は四肢が木っ端みじんに砕けてなくなるんだよね」
「......よく無事だったな」
「だよね、私もそう思う。満月だったからかも」
咄嗟に指定していた座標の東星標を西星標にしたのだが、ここに世界があってよかった。
「いやーさすがに木っ端微塵で昇天はやだからさ。見たくもないと思うし。1か月くらい、ここにいちゃだめ?」
「目の前で木っ端微塵になっても後味が悪いから、許そう」
「やったありがとう! 私マキナ。魔族さんは?」
「余は魔王だ」
「魔王さんだったのか、敷いちゃってごめん。それでお名前は」
「......魔王に名はない」
「えっ不便。私の友達で麻王って子いたから混ざりそうでやだなー、改名しない?」
魔王は珍妙なものを見る目でマキナを見た。
「初対面で改名を要求されたのは初めてだ」
「魔王って名前にこだわりあった?」
「......特にないが」
「じゃあ名前考えてほしいな!」
「.....考えておこう」
「やったーありがと! 魔王さんいい人だね」
魔王は珍妙な以下略。
「......初めて言われたな」
「そうなの? 魔王さん、悪いことでもしてる?」
「そろそろ人間に討伐されるな」
「おやまあ。何か人間にいやなことしちゃったの」
「......魔界から溢れた魔物が人間界に入った」
「わざと?」
「違う! 余の力が足りぬばかりに、抑えられなかったのだ」
「じゃあなんで討伐されちゃうの? 魔王さんを討伐したら、魔物が収まるの?」
「......一時的には。だが、長くなれば逆に魔物が溢れよう」
「えっじゃあ討伐しちゃだめじゃん」
「余が死ねば新たな魔王が生まれる。そういう習わしだ」
「いやな習わし。折角一回しかない人生――魔生? なんだから、もうちょっと平和に、自由に生きたっていいだろうに」
魔王は濃い赤色の瞳を瞬いた。
「平和に」
「平和に」
「自由に?」
「自由に」
魔王は俯いた。夜の闇よりも深い黒の髪が、魔王の表情を隠す。
「えっ、自由嫌いだった? ごめんね魔王さん」
「――くっ、ふ、ふ。あはははは! そうか、自由に生きてよいのか」
「え、だって魔王さんの魔生は魔王さんのものでしょう? 魔王さん以外の誰が決めるの」
「それもそうだな」
魔王は晴れやかに笑う。
「マキナ、ひとまずそなたの居所を定めよう」
「部屋くれるの? ありがとう!」
マキナが周囲を見渡すと、黒の壁紙と不気味な骸骨と目が合った。はて、家ではないぞ。
「......余の上から退け」
「うっわあ人だ! ごめんなさい座標指定間違えたかも。あれお兄さん角あるの、かっこいいね」
マキナは角のある人の上に乗っかっていた。慌てて降りると、マキナが下敷きにしていた人(仮)は立ち上がる。背が高い。2m近くあるんじゃないだろうか。
「ニンゲン。どうやって魔王城に侵入した」
「えっ、ここ魔族とかいる世界線なの。まずったなあ、第六星雲に行く予定だったのに。んー、第八星雲かなぁ、でも地理的には――わあ、今どうやって剣出したの? 魔法?」
首筋に剣を突き出されながらもマキナはのほほんとしている。魔族(仮)の顔は険しくなっていく。
「ニンゲン。余の問いに答えよ」
「んー、えっとね、私人間なんだけど人間じゃなくて。この説明わかりにくいな。ん-とね、この世界に並行世界とかいう概念ある? この世界以外にもたくさん、世界が存在していてね。私は世界を渡り歩きながら生きる一族なんだ。13個目の家に帰ろうとしたんだけど、ちょっと座標間違えちゃったみたい」
「並行世界? 13個目の家......」
「そうそう。星ごとに一個くらい家持っとかないと不便だから。でも一族が適当に使うから誰の家かもよくわかんなくなってきてさ。行こうとしてたとこは俺のおじいちゃんのお姉さんの旦那さんの3番目のお兄さんの息子さんの婿入り先のお隣さんの息子さんの家かな」
「それはもはや他人の家だろう......ところで星とはなんだ」
「あー、簡単に言うと世界。ここは魔族と人間がいるのかな? 生物が、乗り物と徒歩、とここだと魔法か、で行ける圏内を世界って言う感じかな」
「なるほど」
「あ、信じてくれるの?」
マキナは目を瞬いた。
「魔力を持たぬ民は、この世におらぬ」
「なーるほど」
分かりやすい識別方法があってよかった。
「では帰れ」
「あーそれなんだけど。実は、ここの世界、来たことなくて。座標査定と実際に飛ぶまでにちょっと時間もらえないかな。多分事故で飛んじゃったんだけど、出発地と到着地の座標指定しないと、普通は四肢が木っ端みじんに砕けてなくなるんだよね」
「......よく無事だったな」
「だよね、私もそう思う。満月だったからかも」
咄嗟に指定していた座標の東星標を西星標にしたのだが、ここに世界があってよかった。
「いやーさすがに木っ端微塵で昇天はやだからさ。見たくもないと思うし。1か月くらい、ここにいちゃだめ?」
「目の前で木っ端微塵になっても後味が悪いから、許そう」
「やったありがとう! 私マキナ。魔族さんは?」
「余は魔王だ」
「魔王さんだったのか、敷いちゃってごめん。それでお名前は」
「......魔王に名はない」
「えっ不便。私の友達で麻王って子いたから混ざりそうでやだなー、改名しない?」
魔王は珍妙なものを見る目でマキナを見た。
「初対面で改名を要求されたのは初めてだ」
「魔王って名前にこだわりあった?」
「......特にないが」
「じゃあ名前考えてほしいな!」
「.....考えておこう」
「やったーありがと! 魔王さんいい人だね」
魔王は珍妙な以下略。
「......初めて言われたな」
「そうなの? 魔王さん、悪いことでもしてる?」
「そろそろ人間に討伐されるな」
「おやまあ。何か人間にいやなことしちゃったの」
「......魔界から溢れた魔物が人間界に入った」
「わざと?」
「違う! 余の力が足りぬばかりに、抑えられなかったのだ」
「じゃあなんで討伐されちゃうの? 魔王さんを討伐したら、魔物が収まるの?」
「......一時的には。だが、長くなれば逆に魔物が溢れよう」
「えっじゃあ討伐しちゃだめじゃん」
「余が死ねば新たな魔王が生まれる。そういう習わしだ」
「いやな習わし。折角一回しかない人生――魔生? なんだから、もうちょっと平和に、自由に生きたっていいだろうに」
魔王は濃い赤色の瞳を瞬いた。
「平和に」
「平和に」
「自由に?」
「自由に」
魔王は俯いた。夜の闇よりも深い黒の髪が、魔王の表情を隠す。
「えっ、自由嫌いだった? ごめんね魔王さん」
「――くっ、ふ、ふ。あはははは! そうか、自由に生きてよいのか」
「え、だって魔王さんの魔生は魔王さんのものでしょう? 魔王さん以外の誰が決めるの」
「それもそうだな」
魔王は晴れやかに笑う。
「マキナ、ひとまずそなたの居所を定めよう」
「部屋くれるの? ありがとう!」
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