反転の書〜異界の扉が開いた現実世界を鬱を抱えて生きるという事(仮称)〜

煉獄への誘い

煉獄の守護者

「それは？」
扉の前で彼女が取り出した鍵の束を見て彼女に訊ねる。
道すがら彼女は自らを煉獄の者であると称した。
此処は人間達が俗に「煉獄」と呼ぶ数ある地の内の一つであり、自らをその護り手であるという。
「煉獄」では鬼によって誘われた亡者達が門を潜る為の試練を克服し幽鬼となるまでの間、
この街は生活する為の施設を提供し彼等の面倒を見てやるのだと言う。
そしてその幽鬼達の住まうこの地を複数の選び抜かれた「代行者」と呼ばれる鬼達が守護し、管理しているそうだ。
「代行者とは中間管理職のようなものです。他にもいくつか呼び名はありますが、宗派間で見解の相違等が往々にしてあり、死生観上のデリケートな問題が絡むようなので諸事情により無難な呼び名として代行者で通しています」と、そう彼女は言った。