私は最後まで君に嘘をつく

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
42 / 60

超不機嫌な顔も最高です

しおりを挟む

「……亮君って、やっぱり年上女子に受けがよかったね~」

 読み通り。亮君、可愛いからね。蓮君のお母さんとお姉さんがとりこになってるよ。礼儀正しい、中学生の美少年は正義だね。

 それに引き換え、蓮君は超仏頂面だわ。

 実は、亮君がチャイムを押した後、ライン入れたんだよね。すると、凄い剣幕で玄関に出てきてくれたよ。

 見たことがないくらいに目付きが鋭くて据わっている。で、お母さんとお姉さんに怒られてる。体調が悪いせいもあるけど、落差凄っ!! でも、今まで見たことがない蓮君の姿が見れて、新鮮で嬉しい!! 悪戯いたすらが大成功して、楽しくなってきたよ。おかげて、収穫もあったし。

「何、連写してるの?」

 超真剣に写真を撮っている私の隣で、立花ちゃんが若干引き気味で呆れている。

「動画の方がよかった? なら、切り替えるけど」

「違う!! そうじゃなくて。そもそも、私、あいつに興味なんてないし」

 蓮君は立花ちゃんの好みじゃないみたい。包容力があって、優しくてカッコいいのにね。顔もハンサムだし。

「だって、今まで見たことがない仏頂面だよ。これは、なんとしても残さないといけないでしょ」

 私の沽券に関わるからね。

「それ……ある意味、あいつにとっては黒歴史だよね。それに、気付かれたみたいよ」

 あっ!? ばっちり目が合ったわ。こっち来る!? 青筋立てて私の名前叫んでる。

「立花ちゃん、逃げるわよ!!」

 私は立花ちゃんの腕を掴むと、亮君を置いて走り出した。

「逃げなきゃいけないことしてる自覚はあるんだね」

 やや冷ややかな目で立花ちゃんは言う。文句を言いながらも、付き合ってくれるんだよね、そういう所好きだよ。

 だけどさ……それブーメランだよね。立花ちゃんも私に近いことしてたよね。そう反論したくなったけど、それよりも前に訂正しないといけないことがある。

「それは違うよ!! 逃げるのは、捕まったら写真消されてしまうからよ!! 推しのコレクションは、なんとしても死守しないといけないでしょ」

 なので、悪いことをしてるなんて、これっぽっちも思ってないからね。

「三奈さん……さすがに引くよ」

 うわ~って顔されてるね。そんな残念なものを見る目で見なくてもいいじゃない。蓮君が推しにされるのは嫌だけど、推しを尊ぶ気持ちは理解してほしいよ。

「酷っ!! 立花ちゃん酷すぎる~」 

「どこが? 酷いのは三奈さんだよ。あっくん置いてけぼりにして逃げちゃうんだから」

 うっ!! そう言われると耳が痛い。

「まぁ……このあとスーパー寄るの知ってるから、待ってれば来るよ」

「やっぱ、酷っ」

 う~ん、さすがに放置は酷かったかな……

「ちゃんとあとで謝るよ」

「で、さっきから鳴り続けてるスマホどうするの?」

 そうなんだよね~

「……どうしよう?」

「出るしかないでしょ」

 恐る恐る画面をスライドすると、着信履歴、十件越えてるよ!? 五分も経ってないよね!? ラインも引っ切り無しに来てるし!?

「怖っ!! どうしよう……?」

「取り敢えず、電話に出ればいいんじゃない」

「無理無理無理」

 怖くて出れないよ……なら、ラインだよね。さすがに既読無視はできないから。

〈元気そうな顔が見れて嬉しいです。安心しました。私は嘘吐いてないから。ちゃんと、私いかないって書いてたからかね。それじゃあ、ゆっくり休んでね〉

 今までの中で一番の早打ちだよ。

〈はぁ!?〉

 返ってきた返事はこれ。

 ガチギレしてる。盗撮がいけなかったのかな。まぁ、してしまったものは仕方ないよね。私は苦笑するとスマホをミュートにした。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

【完結】君への祈りが届くとき

remo
青春
私は秘密を抱えている。 深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。 彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。 ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。 あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。 彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...