37 / 60
久し振りに、ラキさんに怒られました
しおりを挟む日曜日の夕方に、亮君と立花ちゃんが一旦家に帰った。さすがに、この家からの登校は駄目だからね。お父さんの好意にどっぷり甘えてるけど、ちゃんと節度は守らないといけないと思うから。
久しぶりに、私以外誰もいないリビング。ちょっと寂しいと感じてしまう。前は一人で平気だったのに、すっごい変わりようだよね。自分のことなのに、苦笑が漏れる。
そうそう、蓮君はまだ熱が引かないの。インフルじゃなかったけど、扁桃腺が真っ赤に腫れてるんだって。声が全く出ないって、ラインがきたよ。お見舞いに行こうと思ってラインしたら、速攻で断られた。身体が弱いのに移ったら困るっていう理由でね。ほんと、私って大事にされているよね。
でも正直、心のどこかでホッとしている自分がいるの。マジ、最低だよね……こういう自分が心底嫌になるわ。でも心配だから、亮君にお願いしようかなって思ってる。女子中学生を行かせるわけにはいかないからね。
でもその前に、問題はお母さんのことだよね。杞憂で終わってくれればいいんだけど。そんなことを考えていると、ラキさんが険しい表情をして、私を見ているのに気付いた。
「ラキさん、どうかしたの?」
『どうするつもりですか? 本気で母親の邪魔をしようと考えているのですか?』
ラキさん自身、判子を取りに来たお母さんの態度に腹が立っていたはず。だからといって、これとそれは話が違う。あまり、褒められた行為じゃないもの。ていうか、やったらいけないことなんだよね。
「心は読めないはずなのに、ずばり的確に要点を突いてくるなんて、ラキさん、やっぱりとても有能なんだね」
『ちゃかしても、答えてもらいます』
こうなったラキさんは無双だ。
「……わかってるわよ。やったらいけない行為だって」
『わかっていて邪魔をするつもりだと――』
ラキさん怖い。本気で怒ってる。それだけ、私を心配してくれてるんだってわかってはいるけど……正直、心がモヤモヤする。
「邪魔をするって決めても、実際、どうしたらいいかわからないよ。お母さんは私の存在を感じることもできないし、見えもしないからね。それに、そもそも、私はお母さんが今どこで働いているのか、住んでいるのかも知らないのよ」
血を分けた親子なのに、情けない話よね。
『知っていたら、邪魔をするのですね』
「……ラキさんに嘘は吐けないから、正直に言うけど、知っていたら警告くらいはしてたかな、夢の中とかで。まぁでも、居場所を知らないから無理だけど」
枕元に立てないからね。
『三奈様の気持ちは理解できますが、死者が生者に何かしら悪意を持って行動することはタブーです』
ラキさんが私を思って、強い口調で言ってくれてるってわかっているから、渋々でも頷くよ。
「わかってるって……」
同じ言葉を何度も繰り返す。
『因みに、この家を売れなくすることもタブーですから、覚えておいてください』
えっ!? マジ!? 先手打たれたわ……
それ、考えていたんだよね。脅かすだけなら私でもできそうかなって。とはいえ、もしやれば、私のお父さんにも迷惑が掛かるけど。
「わかった、しない。でも、しない代わりに、亮君や立花ちゃんに言うのはいいよね」
双子ちゃんを通して、お父さんに伝わればいい。今も大概似たことしてるし。
『全く……それは、ぎりぎりグレーですね。但し、嘘を織り交ぜてはいけません。誇張もです。あった事だけなら、大丈夫でしょう』
嘘や誇張は悪意と取られるからだね。
「……気を付ける」
まぁそれもこれも、お母さんが双子ちゃんのお父さんを諦めてくれればいい話なんだけど。こればっかりはね~
私は別にお母さんが不幸になればいいなんて考えていないの。これ以上、私の大切な人たちに関わらないで欲しいだけ。ただそれだけなの。
30
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【完結】君への祈りが届くとき
remo
青春
私は秘密を抱えている。
深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。
彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。
ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。
あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。
彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる