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キャンセルされた最後のデート
しおりを挟む蓮君と会うのは、デートはこれを最後にしよう――
映画館でカップルシートに座ったりしたけど、引っ付いて写真を撮ったりもしたけど、はっきりと蓮君から告白されてもいないし、私も告白してもないから、一般に言うデートっていうのは少し違うかもしれない。やってる内容は巷のデートと一緒でもね。
だけど私は、デートだと思っていたし、そうあってほしいと願っていた。そのつもりで、蓮君と会っていた。自分の願いのためにね。ほんと、自分勝手で酷い女だよね。
そんな私が、さらに自分勝手なことをしようとしている。自分の都合で最後にしようと決めた。
もう、会わないと決めたの――
蓮君の気持ちを無視して一方的に決めたのに、胸がギザギザのナイフで抉られたように痛かった。痛くて痛くて息もできない。血も止まらない。傷口を塞ぐ治療キットなんて持ってない。あっても使わない。タラタラと血を流しながら、それでも、そうするべきだと私は考え決めたの。
そしてこの痛みは、私が背負うべきものであると思っている。
この決断が正しいなんてわからないし、そもそも、正解なんてないんだと思う。もし正解を求めるのなら、切符売り場で会った時、蓮君の手を取るべきじゃなかった。それだけは、正しいと言えるのかな。
色んな人がよく言っているけど、人生ってほんと、選択の連続だよね。一つとして、同じ道なんてない。
個体が違うように、似た道を進んだとしても、それがレールに引かれたものだったとしても、全く同じなんてことはないんだよ。それが、今になってよくわかるよ。
私だけじゃなく、皆、最終的には自己責任で選択して進んで行くけど、本当の意味で自己責任だと思っている人は少ないんだろうな。特に、私や双子ちゃん、そして蓮君の世代はそうだと思う。何か問題が起これば、親が弁護してくれるし、友だちも共感しフォローしてくれる。逃げ込める場所がある。それは、とても素晴らしいことだよ。
だからといって、傷付けていい理由にはならないけどね。
ならせめて……私の大切な人たちの傷が浅いようにしようと考えたの。そしたら、この選択肢しか思い浮かばなかった。
まぁそれに、ここで理由をつけて離れないと、私がズルズルと蓮君に依存してしまいそうな気がしたしね。今も大概なのに、これ以上は、さすがにヤバイよ。それに、蓮君の前で消えるなんて醜態さらしたくはないし。
最悪離れられなくなったら、ヘドロコース行きになるのが目に見えてるしね……直接向かうか、回り道して向かうかの差だけ。だってそうでしょ。誰の目にも映らず、大切な人が老いていき、やがて死んでも、現世に留まり続けないといけない。それって、地獄だよね。そして耐えきれなくて、全てを諦めてヘドロ行き。
正直、今は、できればヘドロコースは回避したいの。昔より、かなり人間らしくなったよね。
そう決めた矢先に、蓮君から今日は遊べなくなったとラインが届いた。
〈わるい、今日遊べなくなった。熱が下がらない〉
こんなこと初めてだった。タイミングの悪さより蓮君の体調が心配で、すぐに返信する。
〈大丈夫!? 熱高いの!?〉
〈八度越えた。取り敢えず、今から病院に行く〉
〈わかった。ゆっくり休んでね〉
心配だな。もうすぐ四月なのに、昨日の夕方から急に冷え込んだからね、風邪でも引いたのかな? インフルじゃなかったらいいけど。インフルじゃなくても、復活するには一週間は掛かるよね……微妙だな。
会わないと決めたばっかりなのに、会えるかどうか、自然に考えている。それに気付いて、私は苦笑した。そして、ポツリと呟く。
「意思弱っ……ほんと、世の中上手くいかないことばかりね……」
蓮君が来れないのなら、どうしようかな?
このまま日向ぼっこもいいけど、まずは、ストーカーしている亮君と立花ちゃんを、手招きしてから考えることにしようかな。
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