28 / 60
君は自己評価が低すぎます
しおりを挟む夜八時頃、スマホの着信音が鳴った。
音の種類でラインだってわかる。当然、誰が送ってきたのもね。別に約束はしてないんだけど、この時間にラインをすることが多くて、いつの間にか、互いにこの時間にラインをするようになっていた。
〈今日の、あれ、何だったんだ?〉
相変わらず、蓮君からのラインは絵文字もスタンプもないね。いきなり要点突いてくる当たり、蓮君らしい。
〈さぁ? でも、撒けたんだから大丈夫だよ〉
あれから、蓮君が周囲を警戒してくれながら、早々にモールを脱出したの。その後は、私たちの駅の近くのゲーセンに行ったりして遊んだ。気になっていたぬいぐるみ、蓮君がゲットしてくれたよ。
あの子たちの姿は、あれから見ていない。
もう少し早くモールを出てたら、水族館もありだったねって話したりして、とっても楽しい時間を過ごして帰って来た。勿論、蓮君が家まで送ってくれた。
〈確かにそうだけど……〉
蓮君、なんか納得してなさそう。まぁ、気持ち悪いっていうか、モヤモヤ感はどうしても残るよね。ランチの間も待っていたようだし。
〈しばらくは、モールに近付かなきゃいいんじゃない? さすがに、最寄り駅は知らないと思うし。で、本当に蓮君の知り合いじゃないんだよね。もしかして、蓮君のファン?〉
〈いや、それはまずねーよ〉
間髪淹れずに戻って来る。その返信に、私はイライラしてきた。
〈どうして、言い切れるのよ〉
〈……俺はモテねーよ〉
いつも、行き着く先はそこ。あ~イライラ度が上がってきたよ。
〈前から思っていたけど、蓮君って、自己評価、かなり低いよね。いい!! 蓮君は優しくて包容力があって、イケメンなの。パーツはいいんだよ!! ただ、目付きが鋭いだけなの。自分を蔑むのは、蓮君自身でも許さないんだから!! わかった〉
常日頃から、言葉にしてるんだけど、蓮君は一向に信じてくれようとはしてくれないんだよね。
と言いながらも、蓮君のファンの可能性は低いと考えている。ファンならファンで、かなり怖いけどね。だって、モールで蓮君を見初めたってことだよね。それで、その行動力だよ。それとも、前から? なら、ストーキングに蓮君が気付いてないのはおかしい。ラキさんも傍にいてくれるし、ストーキングされていれば、どちらかがすぐに気付いたはずだよ。気付いていて黙っていた様子はなかったし、もしそうなら、こんなライン送って来ないよね。
それがなかったってことは、モールが最初の接触になるって考えるのが自然だよね。
〈お前だとは考えねーのかよ〉
〈いやいや、それこそないから。私は平凡中の平凡だからね〉
全てにおいて平均値だからね、私は。身体が弱いのを加味したらマイナスだよ。
〈あぁ!? 何寝言言ってんだ、お前〉
不機嫌モードになる蓮君。自然と口元が緩んだ。
〈蓮君、女子にお前は駄目だよ。私はいいけどね〉
これは、これから先のためのアドバイス。蓮君の魅力を口にするのも、これから先の蓮君の幸せのため。自分に自信を取り戻して欲しいから。それに、自分で自分を下げてほしくはないからね。
自分を少しでも愛せたら、絶対、蓮君は幸せになれると思うの。蓮君にしたら、勝手なお節介だと思うかもね。そうだよ、勝手に私がそう考えてるだけなんだよ。
〈……とにかく、しばらくは警戒しとけよ。何かあれば、いつでも連絡しろ〉
学校行ってるのにね……ほんと、優しいな。
〈ありがとう、蓮君〉
心配性の一面が出てきたあとで、散々警戒しろって言われて、今日のラインは終わった。
そして、次の日――
朝の十時頃。玄関のチャイムが鳴った。両親なら、合鍵を持っているから勝手に入って来るはず。だけど入っては来ない。
また、チャイムが鳴った。
隣の人か販売員かな? 仕方なく、私は玄関に向かいドアを開けた。そして固まる。
そこに立っていたのは、昨日モールで、私と蓮君を付けていた子たちだった。
30
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~
下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。
一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。
かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。
芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。
乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。
その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
水やり当番 ~幼馴染嫌いの植物男子~
高見南純平
青春
植物の匂いを嗅ぐのが趣味の夕人は、幼馴染の日向とクラスのマドンナ夜風とよく一緒にいた。
夕人は誰とも交際する気はなかったが、三人を見ている他の生徒はそうは思っていない。
高校生の三角関係。
その結末は、甘酸っぱいとは限らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる