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第六章 田舎娘なのに王城に招かれました
抜け殻の亡霊
しおりを挟む似てるって言っても少し違うかな……知ってる人がそのまま大人になった感じ。親子や姉妹でも、これほど似ることはないと思えないほどに似ていた。一瞬、言葉が出なくなる。
だから、顔を隠してたの? だってその顔は……
「「……エレーナ王女殿下」」
私とセシリアは友人の名前を口にしていた。
『違うよ、あれはエレーナじゃない』
ハクアの言葉に私とセシリアは困惑しながらも頷く。そうだよね、そんなことありえないよね。
「じゃあ、誰なの?」
『抜け殻の亡霊』
不穏な単語がプラスされたよ。
「抜け殻の亡霊ってなに?」
私はハクアに尋ねた。さっきから、不穏な言葉ばかり出てくるから不安になるのだけど、それよりも、目の前にいる女性の正体が気になって仕方がなかった。
『その言葉通りだよ』
いやいや、答えになってないし。
「ハクア、危険じゃないよね? そもそも、なんの抜け殻なの?」
問題はそこだよね。それに、馬鹿じゃないんだから、少しでも危険なら足を踏み込むつもりはないよ。いくら興味があってもね。
『ユーリアが知らなくてもいいことだよ。特に危険じゃないけど、面倒くさいよ。とてもね……』
ハクアがそこまで渋るのだから、相当面倒くさい事が待ってるってことか……これは勘だけど、ハクアに関係してるのかもしれない。そんなことを考えている間も、女性は私に頭を下げ頼み続けている。
王女殿下と同じ顔で頼み続けられると、断りづらいよ……
「……ハクア?」
いってもいいかな? その言葉はあえて言わずに尋ねた。危険な所じゃなさそうだし。
『もう、仕方ないな~』
「ユーリアって、本当お人好しなんだから」
ハクアとセシリアは呆れた顔をしながらも私の我儘を聞いてくれた。
「ありがとう」
私はハクアとセシリアに満面な笑味でお礼を言った。
「ありがとうございます、ユーリア様」
女性は再度頭を下げてから、ローブを被り直した。まぁそうだよね、誰かに見られたら大変だよね。変な噂が立ちそうだもの。見えていればだけどね……
今まで人じゃない者に出会う回数が多かったからかな、私たちの数歩先を歩くこの女性が人ではないように思えたの。ハクアが亡霊って言ってたし……似たようなモノなのかな? 王女殿下に似ているせいか、不思議と怖くはないんだよね。まぁどっちにせよ、答えはこの先にありそうだけど。
無言のまま五分ほど歩いて到着したのは、こじんまりとした屋敷の前だった。平屋だけど小屋にしては大きくて、扉の上には木の細工が施されてたし、外に置かれている木のテーブルも椅子も明らかに平民が使う物じゃなかった。
そもそも建ってる場所も場所だし、王族縁の人が住んでいるのかな? そのわりには、人の気配はしないけど。
「どうぞ、ユーリア様、主がお待ちです」
女性は私しか見ていない。一度、セシリアの言葉に反応はしたけど、それ以外は眼中に入っていないみたいだった。ハクアもね。
だから、私は予防線を張ることにしたの。だって、切り離される可能性もあるからね。相手が人ならず者なら特に。
「三人一緒なら入るわ。それでもいい?」
危険はないってハクアは言ってたけど、やっぱり緊張するわ。声が固くなったもの。震えはしなかったけど。
「構いません。ユーリア様さえ主に会ってくださるのなら」
女性は気を悪くせずにそう告げると扉を開けた。
「さぁ、どうぞ」
女性に促されて、私たちはその屋敷に足を踏み入れた。
フワッと香ってきたのは木や緑の匂い。灯りは月明かりだけだけど十分だった。いたる所に置かれた植物。よく見たら薬草まであるわ。テーブルには無造作に置かれた本とペンに紙。
室内はまるで小さな研究所で植物園のようだった。
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