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第六章 田舎娘なのに王城に招かれました

ちょっとした悪戯です

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 あれよあれよという間に、私とセシリアはもの凄く豪華な馬車に乗せられた。

 外見も豪華だけど、中がすごすぎた。ゆったりしてて、見えないところにお金かけてたよ。汚すのが怖くてなかなか座れない。これでも、通学用だから地味っていうんだから、王家ってほんとお金があるんだね。ただの移動手段なのに。

 でも、クッションと座席がふかふかなのはいい。王都にくる時、マジでお尻が死んじゃったから。途中、見かねたハクアに回復魔法をかけてもらったのは、いい思い出だよ。

「なにか飲みます?」

 王女殿下が訊いてきた。

 えっ、飲み物まで常備してるの!? っていうか、希望なんて口にできないよ。なので仕方なく、私は無難なものを頼んだ。頼まないのはないからね。

「…………お水で」

「私も同じのでいいです」

 私とセシリアが答える。水も美味しいからね。

「では、二人ともグレアの実のジュースでいいですわね」

 私たちが遠慮するってわかってるから、王女殿下はジュースを選んでくれた。こういう所、良いよね。とはいえ、グレアの実自体、庶民の私にはかなり高価な果物なんだけどね。

 グレアの実はお酒の原料になるから高価なんだよ。なので、ジュースにされる分は少ない。収穫の時期も限られているし、グレアの実のジュースは超贅沢な飲み物なの。学園内では普通に売ってるけどね。さすが、貴族が主に学ぶ学園だよ。

「「……ありがとうございます」」

 私とセシリアはコップを受け取ると飲んだ。濃厚で飲んだ後はサッパリしてる、ほんと美味しい。

「普段、ユーリアの表情筋は死にかけているのに、食べ物に関しては動くのよね~」

 死にかけてるってなによ!! まぁ、豊かな方じゃないけどね。でもね、ちゃんとわかってくれる人はいるんだし、動いてるんだから。

「そこが、可愛いのですよ」

 セシリアがまた変なことを言い出したよ。

「それわかるわ。だから、自分の手でユーリアの表情筋を動かしたくなるのよ」

 それペットと遊ぶ感覚と同じだよね。猫に猫じゃらし的なもののような気がするよ。

「エレーナ王女殿下、お茶会のお菓子の種類が増えた理由はそれですね」

 納得したセシリアがうなずいている。たまにあるんだよね、セシリアと王女殿下だけで会話すること。こういう時、下手に口を出さない方がいいと思うの、なんとなくだけど。

「ユーリアって、意外とお菓子好きだから。食べる姿が可愛くて」

 だから、最近、急にお茶会の回数が増えたのね。美味しいお菓子が食べれるから嬉しいけど。

「自分の手から受け取るさまもなかなかですよ、エレーナ王女殿下」

 その台詞、なんかおじさん臭いよ、セシリア。違う意味でギャップがあるよね。

「それは試したことないわ!! ユーリア、はいどうぞ」

 お菓子まであるんだね。王女殿下はクッキーを一枚手に取ると、ワクワクしながら私に差し出す。ここはちょっと悪戯いたずらしてもいいかな。乗っているの私たちだけだし。

「ありがとうございます」

 私はそう答えると、口で受け取った。ちまたでいう、あ~んてやつ。よく、キッチンでお母さんの手伝いをした時にしてもらったんだ。

 たいした意味はなかったんだけど……なんで、王女殿下は赤い顔して震えてるのかな? やっぱり、マナーが悪すぎた!? セシリアはビックリしてるし。

「すみません、気を悪くさーー」

 謝ろうとしたら、すごい勢いで遮られた。

「か、可愛い!! さぁ、もっと召し上がれ!!」

 王女殿下は嬉しそうに、私の口元にクッキーを持ってくる。怒ってなくてよかったけど、そんなに食べれないよ、王女殿下。セシリアも負けじと持ってくるし。

 そんな感じで、私は緊張せずに初王城したの。


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