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第六章 田舎娘なのに王城に招かれました
お持ち帰りされるみたいです
しおりを挟む今日も良い天気だね。ほんと……お茶会には最高の天気だよ、目の前で拗ねてるセシリアと王女殿下は別として。
赤竜王様との契約? 無事に終えたよ。
赤竜王様の家も黒竜王様と同様、こじんまりとしていて少し懐かしく感じた。でもまぁ、マグマの湖の真ん中に木の家が燃えずに建っていることには驚いたけどね。あとは……マイカさんのことかな。黒竜王様のところにいた、あのマイカさんがいたの。なんでも家の精霊らしくて、黒竜王様のところにいたマイカさんも赤竜王様のところにいたマイカさんも、記憶を共用した双子? 七つ子らしい。よくわかんない。だけど、こっちのマイカさんの手作りお菓子もとっても美味しかったよ。お土産は貰えなかったけど。だって、セシリアや王女殿下に絶対突っ込まれるからね。黒竜王様の時、すっごく困ったんだから。
「……セシリアもエレーナ王女殿下も、そろそろ機嫌をなおしてください。どうしても、行かなければならない場所があったので」
「その場所ってどこですの?」
そう訊いてくるよね。
「すみません、それは言えません」
「セシリアも知らないのでしょ?」
私が口を割らないから、王女殿下はセシリアに話を振る。遠回しにチクチク言われてるよ。
「知らされてませんよ。この前だって、ユーリアの部屋で待っていたけど、いつの間にか帰ってきていて、食堂でジュリアス様とライド様と一緒にご飯食べてましたね」
あれからセシリアは目を合わしてくれない。隣には座ってくれるんだけどね。
食堂で、セシリアに思いっ切り怒られて、心配されて泣かれたわ。「ごめん」って謝っても許してくれなくて、一人寮に帰っちゃった。すぐ後を追おうとしたんだけど、教皇様の報告もまだだったから帰れなくて。そうこうしているうちに門限が過ぎたから、私が寮に帰ってきたのは翌朝になったんだよね。
「私も途中までは待っていたのだけど、さすがに帰らなくてはならなくて……セシリアを一人置いていってしまったの。心細いをさせましたね」
目の前で行われる寸劇に、私はなにも言い返せなくて、ただ「ごめんなさい」って言葉を繰り返すしかなかった。
「……あ~あ、ここまで言っても教えてくれないなんて、よほどのことなんでしょうね。もういいですわ。ただし、危ないことはしないこと、それと……話せる時がきたら話してくれたらいいわ。セシリアもそれでいい?」
「…………いいです」
小さなセシリアの声。やっと、セシリアが目を合わせてくれた。それが嬉しくて泣きそうになった。王女殿下の気持ちも拍車をかけたからね。
「話せる時がきたら、必ず話しますね」
私が言えるのはここまで。セシリアも王女殿下もかけがえのない友だちだから、私は誠実でありたいと思う。嘘は吐かない。でも、真実は話せない。
「……わかりましたわ。今週の休みはどうです?」
圧、すごいよ王女殿下。でも……ごめんなさい。
「すみません、エレーナ王女殿下。しばらく、休みは大神殿に戻らないといけないので」
断るしかない。竜王様はあと五柱いるからね。休みごとに契約しに行くことになってるから。
あ~王女殿下怒ってる。セシリアもおもしろくない顔してる。怒るよね……普通は。
「わかりましたわ。ならば、今日泊まりにきなさい」
「「えっ!?」」
なんで、そうなるの!? 驚く私とセシリアに、王女殿下は立ち上がって見下すと有無を言わさずに告げた。
「セシリアとユーリアの外泊届けは、私の方で提出しておきます。着替えもこちらで用意しますわ。さぁ、行きますよ」
王女殿下の声に即座に反応する侍女と執事。これ、そのままお持ち帰りされるパターン。
もうお誘いでなく命令だよね……
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