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第五章 田舎娘が竜の愛し子になりました

衝撃的な事実を知りました

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 結構、私はやんちゃなことしてきたけど……これは人生初だよ。絶対、ジュリアス様もライド様も初だよね。

 確かに熱くはないよ。熱くはね。ちゃんと息もできる。でも、水の代わりに溶岩が流れてる川の直ぐ脇を歩くなんて思ってもみなかったよ。さすがに、落ちたら死ぬよね……

「大丈夫、落ちても死なないから安心して。少し火傷はするかもだけど」

 少しの火傷って、赤竜王様の少しはどれくらいなのかな? 身体半分? それとも、死なない程度? 人間の私たちより、かなりかけ離れてる気がするんだけど。それでも、骨まで焼ける状態から回避できるのはさすがだよね。

「妙な感心のしかたしないで。あのね、これでも、人間のもろさは知ってるよ!! 俺が側にいるんだから、愛し子に怪我なんてさせるわけないじゃん」

 腕の中にいる赤竜王様が、首だけこちらに向けて抗議してきた。

「そこのところは信頼してます」

「ユーリアって、話し方は超クールだけど、内面は正反対だよね。そういうとこ、好き」

 感情がこもらない話し方は昔から。だから、子供らしくないとか、可愛げがないとか大人たちには何回か言われたわね。でも、当たり前のように内面を見てくれたのは嬉しい。好きって言われたのは正直嬉しいけど、素直に喜べないのは、やっぱりこの軽い口調のせいだよね。

「酷っ!!」

 赤竜王様の瞳がウルウルとしだした。

「我も、前から注意しているだろ。お前の話し方には威厳をまったく感じない」

『どこからどう突っ込んでも、遊び人だからな』

 黒竜王様は溜め息を吐きながらが言った。ハクアも追従する。

 あ~あ、完全に赤竜王様ねちゃったよ。

「私は別に嫌いじゃないですよ、その話し方。内面が遊び人なら距離取りますけど」

「内面は超真面目だよ、俺」

 必死で訴えてくる姿も、ほんわかして可愛いな。

「それはわかってます。赤竜王様が古竜様の一柱としてきちんと役目を果たしてくれているおかげで、今私たちはここにいるんですから……古竜様たちと聖獣様、私たちは常に護られているんですね。ありがとうございます」

 なんか、人族代表みたいになったけど、これが私の素直な気持ち。私がこんな風に思えるようになったのって、ハクアに見付けてもらってからだよね。それまでは、生きることと両親のことで頭いっぱいだったから。そう考えると、かなり狭いとこしか見てなかったよね。あの村ではしょうがないけど。

「…………俺、泣きそう」

「うむ、我の目に狂いはなかったな」

『ユーリア、僕と一緒にいてくれてありがとう!! 僕も大好きだよ』

 三者三様な感想を述べてくれた。ハクアは耳元にスリスリしてくれてくすぐったいけど、とっても幸せ。

「……やはり、毛は必要アイテムなのか」

 黒竜王様が真剣に悩み始めたよ。

「前に言いましたよね、黒竜王様。モフモフとは違う良さがあるって。毛を生やした黒竜王様見たら、たぶん引くと思います」

 想像したら、笑っちゃったよ。だって、おかしいんだもの。

「そっ、それは困る!!」

「だったら、この話はなしで。それより、なんで赤竜王様は火山に住んでるんですか?」

「それは、俺が火を司る神だから。こういう場所が落ち着くんだよ」

 まぁ確かに、火が関連する場所で一番に上げるとしたら火山だよね。誰も訪れない場所だけど。

「つまり、それぞれ竜王様は、司る場所に関連した場所にすんでるんですか?」

「そうだよ」

「だったら、黒竜王様は違いましたよね」

 あの場所は、今まで見た景色の中で一番綺麗な場所だった。

「そうでもないぞ。なぜなら、あの場所には朝がこないからな」

 おかしなことを告げられて、私は首を傾げる。

「朝がこない? それは、夜のままってことですか?」

「我の住処とその周囲だけだがな。ほかは、朝がくる。そうでないと、身体を壊すものもいるからな」

「あぁ、あの狼さんとリスさんですね」

 また会いたいな。あのゴワゴワしたモフモフは捨てがたいからね。あのリスさんの尻尾は最高でした。

「今度、我の家に遊びきたら遊んでいくといい。マヨイも喜ぶ」

「いいんですか!? マヨイさんのお茶とお菓子も美味しいから、楽しみです」

「……ユーリアって、モフモフ好きだよな」

「はい、大好きです。あっ、もしかして、ここにもモフモフがいるんですか!?」

 さすがに、ここで生きていける動物なんていないって思ってたよ。

「いるよ。炎狼って呼ばれている狼が」

 赤竜王様がそう言った時、ずっと黙って空気化していたジュリアス様とライド様が「「えっ!?」」と小さく呟いた。

「どうかしたの?」

 私はジュリアス様とライド様に尋ねた。

「……炎狼って、SS級ランクの魔物ですよ」

 戸惑いながらも、ジュリアス様が教えてくれた。

 えーー!! SS級って、国滅ぼせるほどの魔物だよね!?

「人が勝手にランク付けしたようだが、あながち間違いではない。簡単に国は滅ぼせるな、一頭で」

 黒竜王様のお墨付きもらいました。

「ちなみに、黒竜王様のところにいた狼さんとリスさんは?」

「黒狼と闇の精霊王だか」

 衝撃的な答えに、私たち人族は完全に固まったの。

 黒狼も炎狼と同じくSSランクの魔物。そこまではまだいいわ。なんで、あの可愛いリスが闇の精霊王なのよ!? 精霊王ってなに!? 私、知らなかったとはいえ、リスさんの尻尾を堪能しちゃったよ。

「我が許しているのだ、別に構わぬ」

 でしょうね。一番偉い人が認めてるからなにも言えないよね!! 今度会ったら、速攻謝らなくちゃ。マジ、そういうことはちゃんと言ってよ……

 

 
 
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