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第五章 田舎娘が竜の愛し子になりました
食堂にて
しおりを挟む結局、この騒ぎは学園内に広まっちゃって、噂に尾ひれが付いてレイティア様は次の日から学園にこなくなった。
今までが優等生だったからね……問題児扱いは精神的にキツイよね。ヘタになにか言ったら、さらに悪化するに決まってるし。こればっかりは、時間しか解決方法がないよね……
「……ユーリアは優しいね。ローベル侯爵令嬢のことが気になってるんでしょ」
あいかわらず王子様件天使様は、私をとても気にかけてくれる。
「気にならないわけないじゃない……セシリアはまだ怒ってるよね」
考えてみれば、配慮がなかったよね。それでなくても、王女殿下と王太子殿下、そして、未来の宰相様、目下人気上昇中のセシリアがいれば目立つよね。皆が皆、なんていうか……オーラ的なものをバンバン出してるから。大勢の人の目にとまるよね。ましてや、話してる内容が内容だっただけに。声も大きかったし。
「怒ってるに決まってるでしょ。まだ、ローベル侯爵令嬢様は一度もユーリアに対して謝罪してないんだから」
セシリアの気持ちが嬉しいからなにも言えない。確かに、会う機会はいくらでもあったし、つくることもできたからね。これは王女殿下も同じ意見だって。
「私的には謝罪はもういらないんだけどね」
「けじめだよ、けじめ」
「私、平民だよ」
「だから?」
セシリアにそう訊かれたらこっちが困る。
平民を馬鹿にするなってさんざん言ってきたけど、私自身が一番平民という言葉に囚われてるんだと思う。レイティア様に大きな口をきけないよね。
「……私って、ほんと自分勝手だよね」
「どこが!?」
別にセシリアの悪口を言ったわけじゃないのに、そんな不機嫌そうな顔しないで。
「いろんなところ。それよりも、早く移動しないと授業遅れちゃうよ」
走ったら怒られるから、早歩きで廊下を歩く。
「待って!!」
セシリアが追いかけてきた。
「えっ!? エレーナ王女殿下、私が城にですか……?」
食堂でいきなり、王女殿下に切り出された。
「そう、遊びにこない。連休だし」
ニコニコ顔で誘われてるけど、絶対、王女殿下だけで終わらない気がする。また王太子殿下が現れそうだし、オマケも……
「すみません。誘ってくれたのは嬉しいのですが、その日は大神殿に呼ばれてますので」
もちろん断ったよ。王女殿下には悪いけど。事実、祭日には用事があるからね。赤竜王様に会いにいく大事な用事がね。
「えっ!? そうなの、知らなかった」
セシリアがそんなことを言い出したから、王女殿下の視線がキツくなる。完全に嘘だって思われたみたい。
「ジュリアス様とライド様に呼ばれたの」
赤竜王様の拝謁に、ジュリアス様とライド様が同行してくれることになったの。本当は、教皇様が同行したいって言ってたんだけどね、教皇様が動くと目立つという理由で、ジュリアス様とライド様に却下されてた。
一応、同行者が決まって解決したのだけど、あまりにも教皇様が嘆き悲しむから、黒竜王様がひと肌ぬいでくれた。触らせはしなかったけど、姿を見せてくれたんだよ。なんでも、知らないうちに、私の許可なく私の影と自分の家を繋げたみたい。完全な事後報告だったよ……まぁたまには、美味しいフルーツティーとお菓子がもらえるけどね。
ジュリアス様とライド様の名前が出た途端、王女殿下の目がキラキラと輝いた。うん、次になにが言いたいかわかるよ。
「そうなんだ。でも、私が知らないなんて……」
セシリアはセシリアで、不服そうな顔をして小さな声でブツブツ言ってる。知らないことがあってもおかしなことないよね。
私はそんなことを思いながら、王女殿下が口を開く前に言った。
「ダメです。王女殿下を連れていけませんから。セシリアはその日は自由行動で。たまには、自分の時間を持った方がいいですよ」
きっぱりと、王女殿下とセシリアにNOを突き付けたよ。実際、付いてこられたら困るから。なにも言わなかったら、絶対付いてきたよね。言っても、付いてきそうな勢いだけど。それで、なんでセシリアは涙目なのかな!? 自分の時間大切だよね!?
「「…………」」
二人とも、無言はやめてよ。なんか怖いんだけど。それでも、お腹は空いてたので完食したよ。ご飯、うまっ!!
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