両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
54 / 74
第五章 田舎娘が竜の愛し子になりました

一週間後

しおりを挟む


 オリエンテーションが終わってから、一週間。

 放課後、皆で一緒にお茶会をしようってことになったの。言い出したのは勿論王女殿下。一応、レイティア様も誘ったんだよ。でも断られちゃった。というか、避けられてる。図書室に行ってもいないんだよね。

 王女殿下もセシリアも、レイティア様のことは気にしていない素振りでお茶を飲んでいる。

「……いったい、誰がなんの目的で、あのオリエンテーションをしたのかしら?」
 
 王女殿下がポツリと呟いた。

 黒竜王様の件も〈竜の愛し子〉の件も二人は知らない。どこかられるかわからないからだって。なので、闇魔法を使うことも禁止された。そりゃあそうだよね。秘密を知る人が増えれば増えるだけ、リスクは高くなるからね。せめて、セシリアだけはと思ったけど、教皇様たちに反対されたよ。セシリアがもう少し成長したら、話すかどうか決めるんだって。なので、そこは教皇様に任せることにした。

「さぁ……でも、忘れないオリエンテーションになりました」

 下手なことは言えない。心臓ドキドキものだよ。違う話題にいかないかな。無理だよね……

「そうよね。朝起きたら、すぐそばに道があったのだから」

「魔法で隠されていたのか……全員無事でよかったです」

 王女殿下の台詞にセシリアが答えた。

「お父様もお兄様も調べていますが、魔法の痕跡もなくて、八方塞がりですわ。あまりにも痕跡が見付からなくて、夢を見ていたことにされそうだわ」

 だよね~。黒竜王様がそんな凡ミスしないよね。犯人なんて、一生出てこないよ。といっても、私たちが行方不明になって、大々的に捜索隊が組まれてたし必死で調べるよね。行方不明になったのが、私たちだから特に。どうやって決着つけるのかな。そもそも、国王陛下って知ってるのかな? 確かめようもないけど。

「……私としては、もう二度とこんなことが起きなければいいと願います」

 ほんと、心から願うよ。でも、次の連休は赤竜王様に会いに行かなくちゃいけないんだけどね。

「そうですわね」

「そうですね」

 王女殿下とセシリアが私を見る。絶対、なにか気付いてるよね。でも賢い二人だから、訊いてはこない。それでも、なにも言わずに、こうして一緒のテーブルでお茶を飲んでくれてるんだから、私って幸せだね。ちょっと、胸が痛いけど。

 そんなことを思いながら紅茶を飲んで、お菓子を食べていると、招待していない人がやって来た。

「いつの間にか、仲良くなったんだね」

 そう声を掛けてきたのは、王太子殿下。

「お兄様!?」

「「王太子殿下!!」」

 私とセシリアは立ち上がり、カーテシーする。

「ここは学園だから、正式な挨拶は不要だよ」

 王太子殿下にそう言われて、私とセシリアはカーテシーを解いた。顔を上げると、王太子殿下の後ろに男子生徒が立っているのに気付いた。険しい顔をしたその男子生徒は、私を睨み付けている。

 私、なにかした?

 さりげに、セシリアが私を庇うように前に立った。王女殿下も前に出てきて、私を背に庇ってくれた。彼が睨んでいた理由はすぐにわかったよ。

「ローベル侯爵子息様、私の友人を怖がらせないでくださいな」

 レイティア様のお兄様か!?

「セシリアもエレーナ王女殿下も、そんな喧嘩腰にならなくても」

 私が王女殿下の名前を呼んだ時、男子生徒の眉がピクリと動いた。

「レイティアの次は王女殿下か。うまくたらし込んだものだ。レイティアを利用するだけして、ポイ捨てか、なかなか世渡り上手な娘だな」

 返ってきた言葉は、あまりにも辛辣しんらつなものだった。

 一瞬、なにを言われたかわからない。たらし込んだ……誰を? 誰を利用したの……

「おい!? なにを言ってる!?」

 王太子殿下がとがめる。その声よりも、さらに大きな声が響いた。

「撤回なさい!!」

 王女殿下がマジ切れしていた。
 
 

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

稀代の悪女は死してなお

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~

狭山ひびき@バカふり160万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。 そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。 「……わたしは、妖精が見えるの」 気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは―― 心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。

処理中です...