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第五章 田舎娘が竜の愛し子になりました
一週間後
しおりを挟むオリエンテーションが終わってから、一週間。
放課後、皆で一緒にお茶会をしようってことになったの。言い出したのは勿論王女殿下。一応、レイティア様も誘ったんだよ。でも断られちゃった。というか、避けられてる。図書室に行ってもいないんだよね。
王女殿下もセシリアも、レイティア様のことは気にしていない素振りでお茶を飲んでいる。
「……いったい、誰がなんの目的で、あのオリエンテーションをしたのかしら?」
王女殿下がポツリと呟いた。
黒竜王様の件も〈竜の愛し子〉の件も二人は知らない。どこから漏れるかわからないからだって。なので、闇魔法を使うことも禁止された。そりゃあそうだよね。秘密を知る人が増えれば増えるだけ、リスクは高くなるからね。せめて、セシリアだけはと思ったけど、教皇様たちに反対されたよ。セシリアがもう少し成長したら、話すかどうか決めるんだって。なので、そこは教皇様に任せることにした。
「さぁ……でも、忘れないオリエンテーションになりました」
下手なことは言えない。心臓ドキドキものだよ。違う話題にいかないかな。無理だよね……
「そうよね。朝起きたら、すぐそばに道があったのだから」
「魔法で隠されていたのか……全員無事でよかったです」
王女殿下の台詞にセシリアが答えた。
「お父様もお兄様も調べていますが、魔法の痕跡もなくて、八方塞がりですわ。あまりにも痕跡が見付からなくて、夢を見ていたことにされそうだわ」
だよね~。黒竜王様がそんな凡ミスしないよね。犯人なんて、一生出てこないよ。といっても、私たちが行方不明になって、大々的に捜索隊が組まれてたし必死で調べるよね。行方不明になったのが、私たちだから特に。どうやって決着つけるのかな。そもそも、国王陛下って知ってるのかな? 確かめようもないけど。
「……私としては、もう二度とこんなことが起きなければいいと願います」
ほんと、心から願うよ。でも、次の連休は赤竜王様に会いに行かなくちゃいけないんだけどね。
「そうですわね」
「そうですね」
王女殿下とセシリアが私を見る。絶対、なにか気付いてるよね。でも賢い二人だから、訊いてはこない。それでも、なにも言わずに、こうして一緒のテーブルでお茶を飲んでくれてるんだから、私って幸せだね。ちょっと、胸が痛いけど。
そんなことを思いながら紅茶を飲んで、お菓子を食べていると、招待していない人がやって来た。
「いつの間にか、仲良くなったんだね」
そう声を掛けてきたのは、王太子殿下。
「お兄様!?」
「「王太子殿下!!」」
私とセシリアは立ち上がり、カーテシーする。
「ここは学園だから、正式な挨拶は不要だよ」
王太子殿下にそう言われて、私とセシリアはカーテシーを解いた。顔を上げると、王太子殿下の後ろに男子生徒が立っているのに気付いた。険しい顔をしたその男子生徒は、私を睨み付けている。
私、なにかした?
さりげに、セシリアが私を庇うように前に立った。王女殿下も前に出てきて、私を背に庇ってくれた。彼が睨んでいた理由はすぐにわかったよ。
「ローベル侯爵子息様、私の友人を怖がらせないでくださいな」
レイティア様のお兄様か!?
「セシリアもエレーナ王女殿下も、そんな喧嘩腰にならなくても」
私が王女殿下の名前を呼んだ時、男子生徒の眉がピクリと動いた。
「レイティアの次は王女殿下か。うまくたらし込んだものだ。レイティアを利用するだけして、ポイ捨てか、なかなか世渡り上手な娘だな」
返ってきた言葉は、あまりにも辛辣なものだった。
一瞬、なにを言われたかわからない。たらし込んだ……誰を? 誰を利用したの……
「おい!? なにを言ってる!?」
王太子殿下が咎める。その声よりも、さらに大きな声が響いた。
「撤回なさい!!」
王女殿下がマジ切れしていた。
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