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第四章 田舎娘と古代竜
拒否権はありません
しおりを挟む「ユーリアは進む道を選ぶんだね」
セシリアが真面目な顔で確認してきた。セシリアにもハクアの声は聞こえているはず。それでも、留まる道を選んだセシリアを、私は真っ直ぐ見詰め答えた。
「選ぶわ。私はこのまま、このオリエンテーションを続ける。一人でも」
決意は変わらない。なぜか、そうすべきだって確信してるから。根拠もなにもないのにね。
「もう、オリエンテーションじゃなくなってるけどね……わかった。私もユーリアと一緒に行くよ」
大きな溜め息を吐きながら、セシリアはやれやれといった表情で意見を変えた。それは嬉しいよ。セシリアが一緒なら、もっと頑張れる。だけど……いいの?
「無理してませんか? 私は強要するつもりはありません。セシリアが残っても、誰も責めませんよ」
「強要されてないから、安心して。自分が決めたことだから。私はユーリアとともに行動する。親友を一人行かせるわけにはいかないよ」
セシリアに親友って言ってもらえるのは、すごく嬉しい。嬉しいからこそ、私はセシリアに言った。
「これから先、なにが起きるかわかりませんよ」
「全て承知のうえだよ。ここから先は、自己責任。誰のせいでもないよ」
ニコッと微笑みながら、セシリアは告げた。ほんと、セシリアは王子様で天使様だわ。姿も心も。そこまで言われて、断ることなんて私にはできない。
「……わかった。一緒に行こう」
セシリアにはほど遠いけど、ニコッと微笑む。
「なら、私もご一緒しますわ」
突然、そう高らかに宣言したのは王女殿下。っていうか、その扇いつ出したの!?
「……仲間がふえるのは心強いですが、本当によろしいのですか?」
怪我しても、責任負えないよ。
「ええ、構いませんわ」
「ちょっと!! なにを言っているのかわかっているのですか!?」
王女殿下の言葉に一番焦ったのはレイティア様だった。そんなレイティア様に、王女殿下はいつもの調子で答える。
「わかってますわ!! わかったうえで、言っているのです。だって、そっちの道の方が楽しそうですから」
うん、王女殿下らしい答えだね。
「楽しいって!!」
「よくよく考えれば、現実問題、生存率は進んだ方が高いきがしますの。とどまれば、食料とかどうしますの? 誰かが取りに行かなくてはいけませんよね。レイティア、貴女は攻撃魔法は使えますが、私たちは聖魔法しか使えない。とはいっても、ユーリアさんとセシリア様は、まだ魔法を自由には使えないわね。レイティア、貴女に二人を護れるの?」
驚きです。王女殿下がまともなことを言ってる。頭お花畑なんかじゃない。
『僕も驚いたよ。エレーナって、ただの思い込みが激しい子だったんだ。ちゃんと、考えて勉強してるんだね』
その感想って、かなり残念な子だって認識してたんだねハクアは。確かに、初対面であの態度はね……そう思われても仕方ないかな。
『王女殿下って、根は素直なんだね。そして、ちゃんと話ができる』
そんなやり取りをハクアとしている間も、王女殿下とレイティア様の睨み合いは続いていた。
「…………」
レイティア様は王女殿下に反論することができなくて、とても悔しそうだ。いつもは逆なんだろうな。
「それで、レイティアはどうしますの? 進むの残るの?」
王女殿下、すっごく楽しそう。ここが森の中じゃなかったら、絶対、高笑いしてたね。
「……進みますわ」
「小さくて聞こえませんわ。なんと仰ったの?」
私もなかなかの嫌われキャラだけど、王女殿下も同じだよね。
「進みます!! これでよろしいでしょ!!」
レイティア様が珍しく声を荒げる。いつも冷静沈着なレイティア様らしくない様子に、王女殿下はご満悦。あ~こういうところが、嫌われてる点の一つなんだね。
「そうと決まれば、グスグスできませんわ。進みましょう」
楽しそうに言う王女殿下を、私とセシリアは苦笑しながら見ていた。
始めは、三対一に分かれていたチームだったけど、今は違う。一死団結とまではいかないけど、良いチームだと思う。すこし、個性的で騒がしいけど。
「あっそうですわ。ユーリアさん、これから先、貴女がリーダーを務めるのですよ。責任もって」
王女殿下はそう命令口調で、とんでもないことを言ってきたの。
「なっ!? なにを言ってるんですか!? 一番年下で平民の私が、リーダーなんて務まるわけないじゃないですか!]」
断固拒否したね。
「あら、そうかしら? この四人の中で一番冷静だったのはユーリアさんでしょ」
「いや、冷静ではありません!!」
「冷静でしょ。そもそも、王女である私と侯爵令嬢であるレイティアに意見できるのですもの、立派に務めれると思いますわ。頼みましたよ」
これ、拒否権ないよね。レイティア様もセシリアもなにも言ってくれないし。賛成ってこと? 冗談キツイよ。王女殿下、もしかして、根に持ってる。
「…………わかりました」
そう答えるしかなかったよ。なら、言わしてもらうわ。私は軽く深呼吸してから口を開いた。
「皆様にお願いがあります」
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