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第四章 田舎娘と古代竜
やってきましたオリエンテーション
しおりを挟む今日はオリエンテーション。朝から晴天です。
私たちはレイティア様と王女殿下と一緒に開始の挨拶を聞いている。
さすがに、留年は嫌なよう。王族が留年って恥だよね。まぁ一緒にいるっていっても、一対三のような感じかな。微妙な距離感で、王女殿下は立っていた。本当に、レイティア様と馬が合わないって感じだよ。
オリエンテーションは、四人一組で学園内にある実習の森に入って、課題をクリアするっていうもの。学園内だから、魔物はいないから安心して行えるよね。でも、獣はいるよ。でも、先生たちがいるから大丈夫。
オリエンテーション課題は全部で六つあって、一つ課題をクリアすると、次の課題に進めるってやつ。チームワークが試されるやつかな。このグループにそれを求めるのは無理だと思うけど。現に今もギャーギャー煩いし。騒いでるのは、もちろん王女殿下だけどね。
「私はこちらの道を行くべきだと思いますわ!!」
なぜ、喧嘩ごし。
「そうでしょうか? 私はこちらの道を選びます」
完全に意見は真っ二つに分かれた。第一課題でこれって……
「言い合ってもらちがあきません。ユーリアさん、セシリア様、貴女はどちらの道を選びますか?」
レイティア様は私たちに訊いてきた。
王女殿下はギッと私を睨む睨む。イチャモンは付けられないけど、目や表情で付けてるよね。これはこれで嫌だわ。
「第一課題は、迷子の子供がいて、兵士の詰め所まで連れて行くことになった。近道をするか、遠回りになるが大通りを通るかですよね。なら、私は近道ではなく、大通りを通る方を選びます。セシリアは?」
「私も遠回りの方ですね」
ちなみに、これはレイティア様の方を選んだことになる。別に、レイティア様の方が好ましいからじゃないよ。課題を読んで決めたこと。でも、納得いかないのがここにいる。マジ、面倒くさい。
「どうしてよ!? レイティアの方に懐いているから、そっちを選ぶのですね!!」
いや、違うけど。
レイティア様は完全に呆れたように、溜め息を吐いてるわ。
「三対一で決まりですね、では行きましょう」
王女殿下を無視してそのまま進もうとしてる。
「少し待ってください、レイティア様」
私が止めたことにビックリしたのか、レイティア様もセシリアも目を丸くしてる。
「まず、訂正を。私はレイティア様の意見だから選んだわけではありません。反対にお訊きしますが、王女殿下はなぜ近道を選んだのですか?」
「それは、早く子供を親の元に返してあげたいからですわ」
自分が面倒くさいからではなく、子供のためにか……案外このお姫様、根は優しいかもね。
「私も王女殿下の気持ちに同感です。でも、その近道が安全とはいえますか? もし、人攫いに会って、子供と一緒に逃げ切れますか? もし、そうした場面に遭遇したら、子供は一生親の元には帰れませんよ。だから、私は遠回りしてでも、人通りがある道を選びました」
「王都は安全ですわ!!」
自分の父親が統治してるもの、そう思うよね。でも、この課題に場所指定はない。してても、私は大通りを選ぶけどね。
「そうかもしれません。だとしても、私は近道はしないでしょう。一度、メルセの街で攫われかけましたから」
あの時の恐怖は忘れない。用心深くなるのは、自分の身を護るため。前の自分なら、あまり深く考えずに近道を選んだかもしれない。
「攫われかけた!!」
「本当に!!」
「それで、犯人は!?」
三人に詰め寄られた。近い、近いって。
「犯人はいまだ捕まっていません。郵便屋さんにライド様と一緒に行った帰り、はぐれてしまって。大通りに行こうと歩いていたら、知らない人に。怖くて、逃げ出して、空樽の中に隠れてました」
「よかった……無事で」
セシリアがギュと私を抱き締める。その背中を、私はポンポンと叩く。しばらくは離れてくれないね。
「……だから、ライド様が王都でユーリアさんの手を握っていたのですね」
レイティア様が言った。私は小さく頷く。
「あの時、素直にライド様と手を繋いでたら、あんな怖い思いもしなかったし、皆にも心配させなかったから」
そう答えると、レイティア様は王女殿下に視線を向け静かな声で言った。「これでも、許せませんか」と。
「わかったわよ。行きますよ!! 私に着いてらっしゃい!!」
私たちが選んだ道を歩き出す王女殿下に、レイティア様は苦笑してる。
わかったって声、とても小さかったけど、なんか嬉しくなったな。なんとなく、王女殿下が憎めなくなってきたよ。
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