両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹

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第三章 学園生活の始まりです

私は今日も元気です

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 図書館はめちゃくちゃ楽しい所。パラダイスだよ。本を読むのが楽しくて大好きな私にとってはね。書物の匂いも大好き。紙とインクと埃の匂いが混じったのを嗅いでると落ち着く。ハクアとは違ういやしがあるんだよ。

 本ってすごいと思う。簡単に抱えれる大きさの中に、色んな世界があって、色んなことを知ることができるから。冒険小説なら、その世界に飛び込めるしね。でも、ここ最近は冒険小説は読んでないかな。もっぱら読んでるのは、学術書。それはそれで楽しい。

「これなら、ユーリアでも理解できると思う」

 セシリアが数多くある書物から持って来てくれたのは、魔法力学の基礎本。

「ありがとう」

 私はさっそく学術書を開く。

「わかりそう?」

 セシリアが訊いてくる。私は視線を学術書から離さずに答えた。

「はい。これなら、私にもなんとかわかります」

「なら、よかった」

 隣に座るセシリアも、いつの間にか違う学術書を持って来ていて、並んで一緒に読んでる。時間を忘れてね。

「……そろそろ、閉館の時刻ですが」

 そう声を掛けられて顔を上げたら、外は夕暮れになっていた。声を掛けてきたのは、図書委員のお姉さん。セシリアより少し上くらいな。

「えっ!? もうそんな時間ですか!?」

 三時間も読んでたの!?

「はい、あと十分で閉館ですよ。その学術書、借りれますがどうしますか?」

「もちろん、借ります!!」

「わかりました。貴女は?」

 図書委員のお姉さんはセシリアにも訊いている。

「私もお願いします」

 にっこりと微笑みながら、図書委員のお姉さんは貸出の手続きをしてくれた。

「返却は一週間後です。遅れないようにしてくださいね、ユーリアさん、セシリア様」

「はい」と答えて、私はセシリアと一緒に図書館を出た。寮へと戻る途中、私はポツリと呟く。

「セシリア。あの先輩、私のこと、普通に接してくれてたね」

 学術書を借りる時、学生証を提示するから、私があの噂の問題児平民だって知ったはずなのに、表情一つ変えなかった。セシリアと同じように扱ってくれた。それが私にとって、とても新鮮に映ったの。

「そうだね。よかったね、ユーリア」

「うん、なんか嬉しい。ちょっと!?」

 そう答えてる途中、急にセシリアが抱き着いてきた。腕の中にすっぽりとおさまる私の頭上で、セシリアは呟く。

「まぁ、あの二人があまりにも強烈すぎたのもあると思うけど……ユーリアの頑張りを見ている人は、結構いると思う」

 噂ばかりが独り立ちしている中、色眼鏡もなく、本当の私を見てくれる人がいるっていうのは、やっぱり嬉しいな。

「そうかな……でも、私が一番頑張っている姿を間近で見ているのは、セシリアとハクアです。セシリアの頑張りも私たちが一番見ています」

「ありがとう」って言葉の代わりに、私はそう答えた。途端に、私を抱き締める腕にギュッと力が入ったけどね。あったかいね……

 学園に入学する前は、口には出さなかったけど、不安でいっぱいだった。圧し潰されそうだった。だって、学園の生徒がほぼ貴族様だから。なかでも、聖女科は貴族ばかり。私の勉強と生活の補佐をしてくる人も貴族。正直、上手くやっていける自信がなくて心配だった。

 でもね、いざ飛び込んでみたら、意外と上手くいったの。色々やらかしたけどね。それに、セシリアのことがとっても好きになった。すっごく優しくて、綺麗で、今は大切な親友。ハクアも見守ってくれるし。まぁ色々あるけど、学園生活は楽しいってこと!! 

 だから心配なくていいからね、お父さん、お母さん。私は今日も元気です。


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