37 / 74
第三章 学園生活の始まりです
私は今日も元気です
しおりを挟む図書館はめちゃくちゃ楽しい所。パラダイスだよ。本を読むのが楽しくて大好きな私にとってはね。書物の匂いも大好き。紙とインクと埃の匂いが混じったのを嗅いでると落ち着く。ハクアとは違う癒しがあるんだよ。
本ってすごいと思う。簡単に抱えれる大きさの中に、色んな世界があって、色んなことを知ることができるから。冒険小説なら、その世界に飛び込めるしね。でも、ここ最近は冒険小説は読んでないかな。もっぱら読んでるのは、学術書。それはそれで楽しい。
「これなら、ユーリアでも理解できると思う」
セシリアが数多くある書物から持って来てくれたのは、魔法力学の基礎本。
「ありがとう」
私はさっそく学術書を開く。
「わかりそう?」
セシリアが訊いてくる。私は視線を学術書から離さずに答えた。
「はい。これなら、私にもなんとかわかります」
「なら、よかった」
隣に座るセシリアも、いつの間にか違う学術書を持って来ていて、並んで一緒に読んでる。時間を忘れてね。
「……そろそろ、閉館の時刻ですが」
そう声を掛けられて顔を上げたら、外は夕暮れになっていた。声を掛けてきたのは、図書委員のお姉さん。セシリアより少し上くらいな。
「えっ!? もうそんな時間ですか!?」
三時間も読んでたの!?
「はい、あと十分で閉館ですよ。その学術書、借りれますがどうしますか?」
「もちろん、借ります!!」
「わかりました。貴女は?」
図書委員のお姉さんはセシリアにも訊いている。
「私もお願いします」
にっこりと微笑みながら、図書委員のお姉さんは貸出の手続きをしてくれた。
「返却は一週間後です。遅れないようにしてくださいね、ユーリアさん、セシリア様」
「はい」と答えて、私はセシリアと一緒に図書館を出た。寮へと戻る途中、私はポツリと呟く。
「セシリア。あの先輩、私のこと、普通に接してくれてたね」
学術書を借りる時、学生証を提示するから、私があの噂の問題児だって知ったはずなのに、表情一つ変えなかった。セシリアと同じように扱ってくれた。それが私にとって、とても新鮮に映ったの。
「そうだね。よかったね、ユーリア」
「うん、なんか嬉しい。ちょっと!?」
そう答えてる途中、急にセシリアが抱き着いてきた。腕の中にすっぽりとおさまる私の頭上で、セシリアは呟く。
「まぁ、あの二人があまりにも強烈すぎたのもあると思うけど……ユーリアの頑張りを見ている人は、結構いると思う」
噂ばかりが独り立ちしている中、色眼鏡もなく、本当の私を見てくれる人がいるっていうのは、やっぱり嬉しいな。
「そうかな……でも、私が一番頑張っている姿を間近で見ているのは、セシリアとハクアです。セシリアの頑張りも私たちが一番見ています」
「ありがとう」って言葉の代わりに、私はそう答えた。途端に、私を抱き締める腕にギュッと力が入ったけどね。あったかいね……
学園に入学する前は、口には出さなかったけど、不安でいっぱいだった。圧し潰されそうだった。だって、学園の生徒がほぼ貴族様だから。なかでも、聖女科は貴族ばかり。私の勉強と生活の補佐をしてくる人も貴族。正直、上手くやっていける自信がなくて心配だった。
でもね、いざ飛び込んでみたら、意外と上手くいったの。色々やらかしたけどね。それに、セシリアのことがとっても好きになった。すっごく優しくて、綺麗で、今は大切な親友。ハクアも見守ってくれるし。まぁ色々あるけど、学園生活は楽しいってこと!!
だから心配なくていいからね、お父さん、お母さん。私は今日も元気です。
32
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
稀代の悪女は死してなお
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる