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第三章 学園生活の始まりです

回収してくれました

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 王太子殿下の登場に、食堂は違う意味でざわつき、王女殿下は焦っている。自分が正義だと思ってるんなら、焦る必要ないのにね。

「なにをしてるんだ!!」

 同じこと二回言ったよ。

「……私は一緒に組むオリエンテーションの下級生に挨拶をしただけですわ」

 彼女の中では、あれが挨拶になるんだね。怖い怖い。

「挨拶? 怒鳴っていただろうが!!」

 王太子殿下は盛大な雷を落とした。あ~王女殿下、縮こまってるわ。打たれ弱いみたい。

「せっ、生活態度が悪いので注意しただけです!! 上級生として」

 いやいや、勝手にイチャモン付けてきただけだよね。

「……生活態度ですか? さっきも申しましたが、私は校則を破ったりはしておりません。ましてや、授業も真面目に受けています。それのどこがいけないと? こうやって、自分の意見を言うことがダメだと仰るのなら、私たち平民は、人権すらないのですね。今も、セシリアと普通にご飯を食べようとしていたところです。もしや、食堂でご飯を食べるのもいけないと? それは知りませんでした。ならば、私は皿を片付け購買でサンドイッチでも買います。残っていればいいんですけど」

 噛まずに言ってやった。正論をね。呆気に取られている、王族二人。私はセシリアに視線を向けると言った。

「そういうことなので、私は購買に行きますね。セシリア、一緒にご飯を食べれなくてごめんなさい」

 そこまで言って、片付けようと皿に手をかけた時だった。王太子殿下が慌てるように私を止めた。

「すまない、ユーリア嬢。平民関係なく、食堂を利用するのは学生なら当然の権利だ。それに、平民だからといって、我々貴族にこびへつらう必要はない」

 結構、すごいこと言ってる自覚ないのかな? 正直、驚いたよ。綺麗事とか言われて笑われそうなことを、はっきりと口に出すなんてね。

「お兄様!!」

「お前はこっちに来い!!」

 そう言うと、王太子殿下は王女殿下を首根っこを掴み引きずって行った。

 連れて帰ってくれて万々歳だ。でも去り際言ってたことが気になるんだよね。「近いうちに、謝罪の場をもうける」って。マジ、めんどくさいなぁ。


☆★☆


「どうして!? あの平民を庇うのですか!? 私たちは王族ですよ!!」

 僕に腕を掴まれ、生徒会室に連れられてきた妹は、部屋に入るなり文句を言った。僕は呆れて盛大な溜め息を吐く。始業式前に散々、父上と一緒に言い聞かせたはずなのにな。

「お前のは、ただ気に食わなかっただけだろ? ジュリアス殿やライド殿が自分に付かなかったことが。ファンだよな、推しって言ったか」

「……」

 その通りだから、王女殿下は何も言えない。ただただ羨ましかっただけ。自分の推しを努力もせずに、平民が自分の望んだ、夢に見た場所にいるのだから。ユーリアという少女にとっては、逆恨みもいいところだ。

「……全く。少しは、その頭で物事を考えろ。おそらく、あの少女が一番聖女に近い立場にいる」

 聖女は国王陛下に意見が言え、命令できる立場。それに、あの少女はもう……

「ありえませんわ!!」

「認めたくないだけだろ? 平民という理由だからか? なら、その狭い視野をどうにかしろ。このままだと、痛い目に合うぞ。……いいか、少しはその頭で考えろ。貴族連中をしのぐ魔力を持ち、あのジュリアス殿とライド殿が教育した。そのうえ、教皇が可愛がっていたセシリア嬢を付けた。ましてや、教皇様が後見につかれている。その意味をな」

 ここまで言ってわからないのなら、実力行使しかないよな。実の妹に手荒な真似はしたくない。少し気が強いが、僕にとっては可愛い妹だから。

「お兄様なんて大嫌い!!」

 怒りで真っ赤な顔になった妹は、乱暴に部屋を出て行った。

 僕はやれやれとまた溜め息を吐く。どうしたものか。オリエンテーションの相手を、王族といえども変更することはできない。なら、妹と同調しない奴を選ばないと。慎重にな。となると、一人しか思い浮かばない。小さい頃から妹が苦手な相手。彼女を付けてやれば多少は大人しくはなるだろう。

 
 
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