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第三章 学園生活の始まりです
魔法学の授業でやらかしたようです
しおりを挟む聖女になるためにっていっても、私はもう聖女だけどね。でも、聖女のこと何も知らないし、その力の使い方も知らない。なので、学園で勉強してるんだけどね。
停学あけの公爵令嬢様の視線が突き刺さるわ。ほんと、うんざりする。私やセシリア様にちょっかいを掛けてくることはなくなったけど、その代わりに睨む睨む。視線だけで人を傷付けられるのなら、私は一日何度も瀕死状態になってるわね。取り巻きたちもかなり両親に怒られたのか、公爵令嬢様から離れようとしてるし、それを私のせいにされてもね……まぁ、それは好きにしてくれたらいいけど、なかなか集中できないのには困るよ。神経使う授業なのに。
「では、魔力の基本操作である、魔力循環から始めましょう」
教壇に立つ魔法学の先生が言った。今日は初めての魔法学の日だよ。あとの授業は、魔法科の人と合同で受けている科もあるからね。基本授業っていうの。選択制だから、魔法科とかぶるんだよ。どこに行っても、陰口叩かれて遠巻きにされてるけどね。全然平気。
でも、魔法学は別。授業内容はあまり変らないらしいけど、スキルのせいで、使える魔法に偏りがあるんだよ。聖女科は攻撃魔法は不得意で、代わりに聖魔法に特化している。魔物系に関しては、最強の魔法らしいけどね。あと、有名なのが治癒魔法かな。
「他者との魔力循環は皆していると思います。なので、今日は個人でできるようになりましょう」
先生の言葉に、生徒は「はい」と返事する。
一応、私もジュリアス様とライド様に手伝ってもらって、魔力循環は終わらせている。それで、私の中にある魔力が目覚めたから。しなかったら、一生、自分に魔力があるとは気付かなかったと思う。
一人での仕方は習ってはいる。ジュリアス様やライド様がいない時に、魔力操作の勉強としてするように言われたから。といっても、一人じゃないよ。ちゃんと、ハクアが傍にいてだからね。私は息を深く吸った。
「想像するのです。血液が体中に張り巡らされるように、爪先から頭の先まで」
深呼吸を何回か繰り返すと、先生の言葉が遠くで聞こえているような感覚がする。
まずは心臓に魔力を集める。そして、想像する。そこから流れるエネルギーを。体中に張り巡らせた血管と血液を。想像しやすいように、人体学の本を読んでてよかったよ。
身体がポカポカしてくる。それは、魔力が行き渡り始めたから。これが、頭の先から爪先まで温かくなったら成功。集中をいっそう深くする。結構、気持ちいいんだよね、これ。
『あ~ユーリアの魔力、最高~』
頭上にいるハクアもご満悦。
「そっ、そこまでです!!」
せっかく気持ちよくなってたのに邪魔された。先生だ。いつの間にか私の傍に立っていたみたい。集中が途切れたので、温かさがスーと消えていく。目を開ければ、驚愕した顔が間近で私を凝視していた。セシリア様と先生だ。
「……うまくできてましたか?」
自分ではできてると思っていてもできてない時がありからね、先生に訊いてみた。
「はい、ここまでできれば次に進めるでしょう。時間も掛かりませんでしたし」
先生は驚きながらも、ちゃんと評価してくれた。
「すっ、すごいよ、ユーリア!! 全身が黄金色に光ってた!!」
「えっ、黄金色に?」
それは知らなかったよ。
「黄金色に光るのはおかしなことではありません。聖女のスキルを持っている方、つまり、この教室にいる生徒は聖魔法に特化しています。魔物が漆黒のオーラを纏うように、聖魔法の使い手は黄金色のオーラを纏うのです」
へ~そうなんだ。知らなかったよ。一つ勉強になったかな。私、本当に聖女なんだね。少しだけど、実感できたよ。
「知りませんでした。ご教授ありがとうございます」
「ユーリアさん、そしてセシリアさん、貴女がたは次から魔法学の実習はニ年生と一緒に学びなさい。座学はこの教室で。先生には私から言っておきます」
この学園って、飛び級制度あるの!? っていうか、いきなりランクアップってどういうこと!?
「すごいね!! ユーリア、やったよ!!」
セシリア様はとても喜んでくれてるけど、私は不安しかない。
「あの……私、魔法を習い始めてから、数か月しか経ってません。なのに、ニ年生と一緒というのは……」
私の言葉に教室内がざわつく。先生もさらに驚いているよう。セシリア様だけが満面な笑みを浮かべている。
「魔法を習い始めて数か月……それでも、ニ年生と学びなさい。一年生で学ぶべきものは、実習についてはありませんから」
どうやら、実習に関してはニ年生と一緒に学ぶことになったみたい。先生が良かったからかな。ジュリアス様とライド様、教え方上手かったからね。二人が褒められたみたいで、私はとっても嬉しかった。
でもこれが、いらぬ騒ぎを引き起こすことになるんだよね。あ~でも、私は基本、スルーするから、騒ぎはよそでやって欲しいな。
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