両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹

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第三章 学園生活の始まりです

問題児になりました

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 私が完全にキレたあの騒動は、バッチリと担任の先生に見られてました。

 学園って、貴族社会を小さくしたものだって思ってたから、私が怒られるんだろうなって考えてたけど、実際は軽い注意だけですんだ。

 代わりに怒られたのは公爵令嬢様の方。公爵令嬢様は三日間の停学。取り巻きの方は二日間の停学処分になった。その理由は、セシリア様を殴ったから。

 さすがに、いい気味だとは思わないよ。そこまで性格悪くないし、ゆがんでもないから。それに、入学早々停学って、かなりの痛手を払わなきゃいけなくなったわけだしね。掲示板にも貼られるから、体面的にも恥をかいたんじゃないかな。親が学園に猛抗議したそうだけど、殴られた相手を告げたら静かになったんだって。

 つまり、セシリア様は公爵令嬢よりも偉い立場ってことになるわね。セシリア様は男爵家出身らしいけど。となると、後継人が公爵家を黙らせられる立場に位置してるってことになるよね。

「私の後継人は教皇様だよ」

 だよね。うん、なら手を出したらそくアウトだわ。でも納得。国王陛下より偉い人だからね、教皇様は。

「ちなみに、ユーリアの後継人も教皇様だよ」

 にっこりと笑いながら、ぶちかましてきたわ。

「えっ!? 聞いてないけど」

「ジュリアス様やライド様から聞いてないの?」

「聞いてない!! 聞いてないよ!! ハクアは知ってた?」

『聞いてたけど』

 ハクアはあっけらかんと答えた。

『だったら、なんで教えてくれなかったのよ!?』

 一応、教室内だから念話で。この会話、実はセシリア様にも聞こえている。っていうか、私とハクアだけで話してるの、はたから見たら気持ちいいものじゃないから、聞かれて困らない話なら聞いてもらってもいいって言ったの。その判断はハクアに任せている。

『ジュリアスもライドもちゃんと言ってたよ。学園に行っても大丈夫。御守りがありますからって』

 確かに言ってた。でも、御守りって教皇様のこと!? いやいや、もうちょっとわかりやすく例えてよ。

「気付かないですむなら、気付かなくていいって考えたんだね」

 たぶん、それはジュリアス様とライド様の優しさからだって思う。その気持ちは嬉しいし、わからなくもない。私は学園に来ても、二人に護られてるんだなってあらためて思ったよ。涙出そう。

「知るのが早すぎましたけど。私に食ってかかった時点でアウトってことになりますね」

「そうだね。でも、厄介なことになったね」

 そう言うセシリア様の顔が、若干じゃっかん強張っているのに気付いた。

「厄介なこと? あぁ、平民の私に教皇様が後継人として付いてくれてることですね。いらない憶測おくそくを呼びますよね」

 私からしたら勝手にやってくれと思うけど。

「だよね……前から思ってけど、ユーリアって本当に七歳なの?」

「七歳ですが」

「落ち着きすぎじゃない? 十歳の私よりかなり落ち着いてるよ」

 そう言われても、ピンとはこない。

「そうですか……慌ててもしかたないので。それに、今のように遠巻きにされてる方が心地良いので、別に問題はありません。それに、私にはセシリアという親友がいますから」

 私はにっこりと笑いながら、セシリアの願いを叶える。これも、意外と早く叶ったよね。

「ユーリア!!」

 セシリアは嬉しいのか勢いよく私に抱き着く。そして、私の頬を頬ずりする。やり過ぎじゃない? って思ったけど、内心は嬉しかったので放置。後に、ちょっと後悔することになるんだけど。

「わかったから、少しだけ離れてください」

 なんとか、離してくれたよ。髪乱れちゃったじゃない。手櫛でなおるけど。

「……でも、問題児扱いにされたね」

 セシリアの台詞に、私は小さく頷く。私はこの教室で完全に浮いた存在になってる。先生もどこかぎこちない。当然だよね。

「そんなの、問題にはなりませんよ。私はここに勉強をしに来たのですから」

 問題児扱いされても、平等に教えてくれるならいい。停学中の公爵令嬢のように、理不尽ないちゃもんを吹っ掛けられるより断然マシだから。それに、セシリアに二度と私の身代わりにはなってほしくはない。

「ブレないね、ユーリアは」

「私が立派な聖女になることを望んでくれている方がいますので」

「その中に、私は入ってるかな?」

「もちろん、セシリアも入ってますよ。でもそれよりも、一緒に卒業して聖女になりたいです」

 人をかばえる優しい人だから、セシリアには聖女になってほしいと願う。それに、セシリアが聖女になってくれたら私はとっても嬉しいし、未来が楽しいものになると思うの。


 
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