31 / 74
第三章 学園生活の始まりです
問題児になりました
しおりを挟む私が完全にキレたあの騒動は、バッチリと担任の先生に見られてました。
学園って、貴族社会を小さくしたものだって思ってたから、私が怒られるんだろうなって考えてたけど、実際は軽い注意だけですんだ。
代わりに怒られたのは公爵令嬢様の方。公爵令嬢様は三日間の停学。取り巻きの方は二日間の停学処分になった。その理由は、セシリア様を殴ったから。
さすがに、いい気味だとは思わないよ。そこまで性格悪くないし、歪んでもないから。それに、入学早々停学って、かなりの痛手を払わなきゃいけなくなったわけだしね。掲示板にも貼られるから、体面的にも恥をかいたんじゃないかな。親が学園に猛抗議したそうだけど、殴られた相手を告げたら静かになったんだって。
つまり、セシリア様は公爵令嬢よりも偉い立場ってことになるわね。セシリア様は男爵家出身らしいけど。となると、後継人が公爵家を黙らせられる立場に位置してるってことになるよね。
「私の後継人は教皇様だよ」
だよね。うん、なら手を出したら即アウトだわ。でも納得。国王陛下より偉い人だからね、教皇様は。
「ちなみに、ユーリアの後継人も教皇様だよ」
にっこりと笑いながら、ぶちかましてきたわ。
「えっ!? 聞いてないけど」
「ジュリアス様やライド様から聞いてないの?」
「聞いてない!! 聞いてないよ!! ハクアは知ってた?」
『聞いてたけど』
ハクアはあっけらかんと答えた。
『だったら、なんで教えてくれなかったのよ!?』
一応、教室内だから念話で。この会話、実はセシリア様にも聞こえている。っていうか、私とハクアだけで話してるの、傍から見たら気持ちいいものじゃないから、聞かれて困らない話なら聞いてもらってもいいって言ったの。その判断はハクアに任せている。
『ジュリアスもライドもちゃんと言ってたよ。学園に行っても大丈夫。御守りがありますからって』
確かに言ってた。でも、御守りって教皇様のこと!? いやいや、もうちょっとわかりやすく例えてよ。
「気付かないですむなら、気付かなくていいって考えたんだね」
たぶん、それはジュリアス様とライド様の優しさからだって思う。その気持ちは嬉しいし、わからなくもない。私は学園に来ても、二人に護られてるんだなってあらためて思ったよ。涙出そう。
「知るのが早すぎましたけど。私に食ってかかった時点でアウトってことになりますね」
「そうだね。でも、厄介なことになったね」
そう言うセシリア様の顔が、若干強張っているのに気付いた。
「厄介なこと? あぁ、平民の私に教皇様が後継人として付いてくれてることですね。いらない憶測を呼びますよね」
私からしたら勝手にやってくれと思うけど。
「だよね……前から思ってけど、ユーリアって本当に七歳なの?」
「七歳ですが」
「落ち着きすぎじゃない? 十歳の私よりかなり落ち着いてるよ」
そう言われても、ピンとはこない。
「そうですか……慌ててもしかたないので。それに、今のように遠巻きにされてる方が心地良いので、別に問題はありません。それに、私にはセシリアという親友がいますから」
私はにっこりと笑いながら、セシリアの願いを叶える。これも、意外と早く叶ったよね。
「ユーリア!!」
セシリアは嬉しいのか勢いよく私に抱き着く。そして、私の頬を頬ずりする。やり過ぎじゃない? って思ったけど、内心は嬉しかったので放置。後に、ちょっと後悔することになるんだけど。
「わかったから、少しだけ離れてください」
なんとか、離してくれたよ。髪乱れちゃったじゃない。手櫛でなおるけど。
「……でも、問題児扱いにされたね」
セシリアの台詞に、私は小さく頷く。私はこの教室で完全に浮いた存在になってる。先生もどこかぎこちない。当然だよね。
「そんなの、問題にはなりませんよ。私はここに勉強をしに来たのですから」
問題児扱いされても、平等に教えてくれるならいい。停学中の公爵令嬢のように、理不尽ないちゃもんを吹っ掛けられるより断然マシだから。それに、セシリアに二度と私の身代わりにはなってほしくはない。
「ブレないね、ユーリアは」
「私が立派な聖女になることを望んでくれている方がいますので」
「その中に、私は入ってるかな?」
「もちろん、セシリアも入ってますよ。でもそれよりも、一緒に卒業して聖女になりたいです」
人をかばえる優しい人だから、セシリアには聖女になってほしいと願う。それに、セシリアが聖女になってくれたら私はとっても嬉しいし、未来が楽しいものになると思うの。
32
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
魔法が使えない女の子
咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。
友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。
貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。
【完結】だからウサギは恋をした
東 里胡
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞応募作品】鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」
入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。
困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。
自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。
※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)

妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。
そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。
「……わたしは、妖精が見えるの」
気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは――
心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる