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第二章 出稼ぎライフの始まりです
初給料日です
しおりを挟む今日は待ちに待った給料日。
初給料の日です。
正直、何も仕事をしていないのに、聖女だからって理由で貰っていいのかな、って思ったりもしてるけど、貰えるものは貰っとかないとね。家には、生まれて間もない赤ちゃんがいるんだから。それに、お母さんは今働けないし、そうなると収入はガクンと減るよね。
「…………こんなに、貰ってもいいのですか?」
ずっしりと重い麻袋を受け取って、私はとても戸惑ってる。っていうか、固まってた。だって、見たことがない金額だったんだよ。村だったら、四人家族で一年はゆうに暮らせる金額なんだから。自然と、麻袋を持つ手がプルプルと震えてきたよ。
そんな私を、ジュリアス様とハクアはニッコリと微笑みながら見ている。完全に保護者だ。
「正当な金額ですよ。といっても、ユーリア様はまだ聖女見習いです。なので、一番低い金額となっております」
マジで!?
「えっ!? これで、一番低いんですか!?」
「はい」
「…………」
言葉が出てこない。っていうか、なんか怖くなってきた。
「ユーリア様?」
『ユーリア、どうかしたの? 疲れたの?』
黙り込んでしまった私を気遣い、声を掛けくれるジュリアス様とハクア。
「…………これだけ貰えるってことは、それだけ、重要な仕事があるってことですよね……危険な場所に派遣されることもあるって聞きました。私に、この金額を貰えるだけの働きができるのでしょうか?」
聖女の責任と重圧が、こんな形で、身にしみて知るとは思わなかったよ。
今までジュリアス様やライド様から聞いてはいた。勉強もしていた。でもどこか、現実味がなかったっていうか……実感が持てなかった。
「怖くなりましたか?」
ジュリアス様の問い掛けに、私は小さく頷く。
「それでいいのですよ、ユーリア様。無理にわかろうとしなくていいのです。ただ、その気持ちを忘れないでください」
「はい」
「それで、お金どうしますか?」
「そうですね。半分を家に送って、残りは手元に。でもこんな大金、持って歩くのは怖いですね」
スリや強盗に狙われるのは嫌だよ。私、恰好の餌でしょ。
三分の二、家に送ってもいいと思うんだけど、王都は物価が高いからね、念のためにある程度は手元に置いときたいの。必要な時に使えなかったらダメだから。怪我や病気になった時とかね。私の回復魔法ダメダメだし。二日後が入寮日だから、そんなにいらないと思うんだ。学園はほぼ無料で済むから。それでもね。
『僕が一緒にいるから心配いらないよ』
うん、大丈夫だといいな。
「ありがとう、ハクア」
私がハクアにお礼を言っていると、ジュリアス様が尋ねてくる。
「ユーリア様、この前、ライドに買ってもらった鞄がありましたね。それを少しお貸しいただけませんか?」
「鞄をですか?」
私は不思議に思いながらも、素直にジュリアス様に鞄を手渡した。ジュリアス様は鞄の内側を覗き込み、何かを確認すると言った。
「やはり、魔法を付与できる素材で作られていますね。これならば、付与できるでしょう」
そう言うと、ジュリアス様は鞄の上に手を置き小さな声で言った。「収納」と。同時に鞄が光る。光が消えたら、私に鞄を返してくれた。
「これで、その麻袋が入りますよ」
「ほんとに!?」
試してみると、本当に入ったよ。魔法ってすごい!! でも、鞄の中には何も入っていない。麻袋どこ?
「これで、その麻袋が三つぐらいは入ると思います。色々入れて確認してください。念のためにダミーを用意しておく方がよろしいでしょう。取り出す時は、頭の中で念じれば大丈夫です」
なるほど。さっそく、言う通りにやってみた。すると、ちゃんと取り出せたよ。
「ありがとうございます、ジュリアス様!!」
私は思わず、ジュリアス様に抱き付いちゃった。はしたないって怒られたけど。でもね、とっても嬉しかったんだ。
でもなぜか、ハクアがものすごく拗ねちゃったけど。ジュリアス様が仕事に戻った後に、モフモフし続けたらどうにか機嫌をなおしてくれたよ。
その日の昼過ぎに、ライド様に付き添ってもらって、郵便屋さんに連れてきてもらった。
「無事に届くといいな」
くすねられたり、野盗に襲われたら困るもの。
『大丈夫。ちゃんと届くように細工しといたから、安心して』
なら大丈夫だね。
「ありがとう、ハクア」
私はにっこりと笑ってハクアの頭を撫でた。
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