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第二章 出稼ぎライフの始まりです
聖獣様の名前が決まりました
しおりを挟む聖獣様!! 突然、何を言い出すの!?
文句を言いそうになったけど言えない。当然だよ、これは私のためなんだから。
わかってるから、そっ、そんな期待のこもった目で見ないで~~。ジュリアス様も凝視しないで。
考えてなかったわけじゃないよ。お願いされた時から考えてた。でもね、何度も言うけど、すっごい下手なんだよ。下手すぎて、何度も困惑された。実の両親にね。それほどなんだよ……
それでも、いくつか書き出しては、止めて、また書き出す。何度も何度も繰り返した。最終的に、何個書き出したか数えられないくらい考えた。でも、なかなかしっくりするものが浮かばない。それじゃ、ダメだと思う。
だって、聖獣様の名前だよ、失敗できるわけないじゃない。呼ばれ続けるのは聖獣様なんだよ。そう考えると、責任重大だよね。
『……そんなに深く考えなくてもいいよ。こう、直感的な感じで』
難しいことを言われた。それでも、聖獣様は優しい。もし変な名前になっても、怒ったりはしないと思う。だけと、私が嫌。
悩みに悩んで、一番マシな名前を口にした。
『…………じゃあ、ハクアってどう?』
自信がないから、とても小さな声で尋ねてしまう。
『ハクア? それって、どう言う意味なの?』
あれ? 嫌そうじゃない。まずは、第一段階突破突破でいいのかな。
「ハクって白って意味なの。海を越えた先にある遠い国の言葉なんだって。昔、お父さんが教えてくれたの。でもそれじゃ、味気ないから、私の名前の一文字を付けてみたの……ダメかな?」
おずおずと聖獣様を伺う。
聖獣様の名前に自分の名前の一文字を入れるなんて、不敬すぎて怒られてもしかたないよね。嫌がられるかな? でも、どうしても入れたかったの。っていうか、ボンって浮かんだんだよね。自分の中じゃ、最高傑作だよ。
『ハクア…………ハクアか……うん、気に入ったよ。これから、僕はハクア。ユーリア、これからもよろしくね』
お世辞じゃないみたい。聖獣様の尻尾が左右に勢いよく揺れてるよ。どうやら、気に入ってくれたみたい。ほんとよかった~。ふぅ……緊張で、手汗すごっ。
ジュリアス様も喜ぶ聖獣様を見て、「よかったですね、良いお名前です」って言ってくれてるし、聖獣様と一緒に喜んでいる。そもそも、おかしな名前でも、聖獣様が喜んでくれてるのを見て、「そうですか……おかしな名前ですね」なんで言えないよね。
捻くれている私は、ついそんなことを考えてしまう。こういうどころが、子供っぽくないんだよね。わかってるって。
でもこれが、私なんだ。
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