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第二章 出稼ぎライフの始まりです

手紙

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 旅はとても順調だよ。

 天気も良い日が続いてるし、たまに雨は降るけど、馬車を止めるほどの酷い雨は降らない。心配していた魔物も出ないし、野盗も出ない。神様に感謝だよ。もちろん、聖獣様にもね。

 ご飯も美味しいよ。ただ……ボリュームがあるのがちょっとね。子供にこの量はキツイよ。

 皆は、私の食が細いって言うんだけど、そんなことないって思ってる。ふらっとしたことないしね。

 量を減らしてもらっても完食できない。満腹で馬車に乗ると気持ち悪くなるから、無理に詰め込めないし。残すなんて選択肢は始めからないから困る。なので、聖獣様に手伝ってもらってるの。

 いいのかな? って、始めのうちは思ってたんだけどね。聖獣様は上機嫌だし、ジュリアス様もライド様も注意してこないから、ずっと手伝ってもらってる。いつか、不敬罪で捕まるかも。その時はその時よね。

 ご飯のこともだけど、ジュリアス様とライド様は私のことを一番に考えてくれている。

 こまめに休憩も入れてくれるし、休憩時間もじゅうぶんにとってくれる。三分の一は進んだけど、まだ野営はしたことはないかな。別に野営に抵抗はないんだけどね。平民だし。

 勉強も寝る前にやってるよ。

 といっても、歴史書を読んだり、ジュリアス様やライド様のお話を聞いてるだけなんだけどね。たまに、聖獣様も教えてくれるよ。

 皆のお話は、恋愛小説よりもおもしろいの。冒険小説を読んでいるみたいな感覚かな。すっごく新鮮だよ。知らないことを知るのって楽しいね。昔、サリアから恋愛小説を借りたことがあったけど、さっぱりわかんなかった。私には早すぎたみたい。大きくなってもわかる気がしないのは、サリアには内緒ね。

『まだ寝ないの? もう遅いよ。続きは明日にしたら』

 いつもの勉強会が終わっても寝ない私を心配して、聖獣様はベッドから抜け出しテーブルの上に乗る。そして、私の手元を見た。

「う~ん、でもね、明後日にはメルセの街に着くでしょ。書きたいことがいっぱいあるの」

 だから、時間が足りないの。メルセの街をのがしたら、次は一週間後になるしね。手紙だすの。小さな町や村には、手紙を配送してくれる郵便屋さんがないからね。

『書くこといっぱいあるの? ユーリアは楽しい?』

 たまにこうして、聖獣様は確認してくる。その度に、きまって返す言葉は同じ。

「楽しいよ。だからね、お父さんとお母さんに教えてあげたいの。それに安心するでしょ」

 手紙を見せながら、私はニコッと笑う。

『僕も楽しいよ。でもね、もう寝ないといけないよ。そろそろベッドに入らないと、ジュリアスに怒られるんじゃないかな』

 途端に、怒ったジュリアス様の顔が頭に浮かぶ。怒ると怖いんだよ。怒鳴ったりは一度もしないけど、無表情のまま淡々と言われるのはキツイ。

「えっ!? それは嫌」

 私は慌てて明かりを消すと、聖獣様を抱き上げベッドに潜り込んだ。

 明後日はメルセの街に着く。

 少しは街を見て回る時間があるかな? 起きたら、訊いてみよう。


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