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第一章 田舎娘が聖女になりました
約束事が増えました
しおりを挟むその話し合いなんたけど、途中からは大人たちだけで続けられた。
難しい話だから、私は自分の部屋にいるように言われたの。もちろん、聖獣様と一緒にね。私は聖獣様を抱いたままベッドに腰を下ろす。
『元気ないね、ユーリア。出発が早すぎて驚いた?』
「うん……三日後って早すぎるよ」
沈んだ声で答える。神官様たちが王都に戻る時に、私も一緒に王都に行くことが決まったの。
それが三日後ーー。
お父さんが、もう少し延ばせないかって必死で頼んでたけど、無理だった。本当は、明日王都に帰る予定だったんだって。これでも延ばしたって言われたら、私も両親も何も言えなかっよ。もう一人の神官様が、その準備と私の報告に追われてるって言われたら、なおさらだよね。残念なのは、弟か妹の顔が見れないことかな。
やるべきことはたくさんあるよ。とりあえず、出発までに持って行く荷物をまとめないと。サリアにはお別れの挨拶しとかなきゃね。リナリーにはしないよ。
『正直、今でもギリギリだからね。学園の入学式は二か月後だけど、ユーリアの体力を考えると、王都までの移動に三週間とみたほうがいい。それに、入学までに最低限のマナーと基礎知識は頭に入れとかないといけないし、色々準備するものもあるから大変だよ。制服も既製品じゃないからね、その準備もしないと』
そう言われると、納得するしかないよね。我が儘は言えないよ。
聖獣様が言うように、貴族様も学ぶ学園だもの、平民出身とはいえ最低限のマナーは必要だと思う。平和な学園生活をおくるためにね。平民だっていうだけで風当たりは強いと思うから、できるだけ自分の身は自分で護らないとね。全部、聖獣様に護ってもらうのは違う気がするから。
「立派な聖女になるって約束したからね、頑張るよ。疲れたら、モフモフさせてね」
モフモフはどんな万能薬よりも、私を元気にしてくれるからね。
『ユーリアならいつでも大歓迎だよ。今からモフモフする?』
すっごく心惹かれるお誘い。でもその前に、お礼を言っとかなきゃ。
「聖獣様、ありがとうございます。結界のこともだけど、お父さんに、本当の理由を内緒にしてくれて助かったよ」
『僕はたいしたことしてないよ。でも、ユーリアの気持ちはちゃんと受け取った。本当にユーリアは良い子だよね。お礼が言えるなんて……どうしたの? 僕、何かおかしなこと言った?』
不思議そうな顔をしていたからかな、首を傾げながら聖獣様は訊いてきた。
「おかしなことなんて言ってないよ。ただ、私に甘いなって思っただけ。当たり前のことで褒められたから、ちょっとびっくりしたの」
聖獣様の白いフワフワな頭を撫でながら、私は答えた。撫でやすいように横に耳ペタンとしてくれてる。可愛すぎるわ。
『ありがとうとごめんなさいが言えるのって、褒められることだよ。中には、忘れてしまって、それができなくなった人もいるからね。ユーリアはそんな人にはならないで』
嫌な思いをしたことがあるのかな。聖獣様の声がとても悲しそうだったから気になった。でも訊けなかった。その代わりに、私は聖獣様に告げた。
「わかった、約束するね。そんな人にはならないから。絶対、聖獣様を悲しませたりしないから」
また約束事が増えたね。
だけどそれは、幸せになるための約束事。
私もそんな人苦手だから、絶対守るね。
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