両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹

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第一章 田舎娘が聖女になりました

スキルって、本当に人生を変えるんだね

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『じゃあ、早速、ユーリアの家に行こうよ!!』

 聖獣様の鶴の一声で、続きは私の家で話し合うことになった。

 ここから先の話は、教会でしていたよりも、より具体的なものになるって、神官様は言ってたしね。なら、ちょうどいいと思う。お母さんにも直接聞いて欲しい。その方が安心するでしょ。

 それとは別に、聖獣様が結界も張ってくれるしね。これで、お父さん、お母さんの人の良さに付けこむ悪いヤツはいなくなるよ。

 ややこしくなるから、結界の件は今は横に置いといて、なかなか帰って来ない私たちを、お母さんはとても心配してると思うの。大事な時期のお母さんに、これ以上心労を掛けたくない。早く帰って顔を見せて安心させてあげないとね。

 話す内容は、たぶん、いつ王都に向けて出発するのか。

 学園ではどんなことを勉強し、どんな場所で生活するのか。

 王都を出発する前に何が必要なのか。

 こんなところよね。聖獣様を抱っこしながら、そんなことを考えていた。

 ふと、視線を感じる。

 村人たちが、遠巻きで道を歩く私たちを、ヒソヒソと話しながら観察していることに気付いた。

 目が合うとそらせれた。悪いことなんてしていないのに、ちょっとだけムカついたよ。でも、文句は言わないよ。言っても仕方ないことだから。ここでは、普通が一番なんだ。良いことでも外れるのを嫌うからね。だから、村が発展しないんだよ。良く言えばフレンドリー、悪く言えば閉鎖的。

 歩きながら、チラッと隣を歩くお父さんに視線を向けた。

 お父さんの表情はずっと硬いままだ。それが普通の反応だよね。特に、私の両親は過保護だから強く出ているかも。

 それにしても、聖女だよ聖女。

 こんなど田舎でね。ほんと、怒涛どとうの展開だよ。ついていけないよね。王都に行くって決めた私でも、まだ夢を見ているみたいなんだから。

 そんな私の腕の中で、鼻歌が聞こえてきた。聖獣様だ。ちょっと音痴かな。でもそれがいい。

「楽しそうだね、聖獣様」

 何が楽しいのかな? 何もない田舎なのに。ましてや、村の人の視線気付いてるでしょ。

『楽しいよ。ユーリアが生まれ育った村なんだから』

 つくづく、聖獣様って不思議な存在だと思う。

 いとも簡単に、モヤモヤしていた気持ちを晴らしてくれた。会って間もないのに、ずっと一緒にいたような安心感さえある。それが嫌じゃないんだよね。自然と私は受け入れている。そのことに驚きだよ。だからかな、心から思うんだ。聖獣様に見付けてもらって、私は幸せなんだってね。

「ありがとう、聖獣様。そう言ってくれると嬉しい」

 ギュッと小さな身体を抱き締める。聖獣様は嬉しそうに笑った。私も一緒に笑う。

『ユーリアは笑顔が一番可愛いんだから、いつも笑っていてね』

「うん、約束するよ。聖獣様も私の隣で笑っていて欲しいな。あのね……私もいつか、聖獣様が生まれた場所を見てみたい」

 私にとって、聖獣様はとても大事な存在だから。

『いいよ。いつか、連れて行ってあげる』

「いつかって、いつ?」

『ユーリアが立派な聖女になったらだよ。今は、ユーリアが壊れちゃうから我慢して』

 壊れる? 何が?

「わかった。私、学園で頑張るね。そして、立派な聖女になるの」

 そして、お金もいっぱい稼ぐ!!

 さすがに、これは口には出せないわ。聖女のイメージ完全に潰すよね。

 お父さんは複雑な表情を隠せないでいる。反対に、神官様はとても嬉しそう。二人とも近くにいるんだから、聖獣様と私の会話まる聞こえだよね。

 数時間前までは、なんでもいい、職人になるのが夢だった。手に職を付けて、家族を支えなきゃって考えてた。それが今は、全く違う道を歩もうとしている。

 スキルって、本当に人生を変えるんだね。

 でも……自分が決めた道だから、辛いことや嫌なことがあっても、後悔はしたくないかな。


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