8 / 74
第一章 田舎娘が聖女になりました
スキルって、本当に人生を変えるんだね
しおりを挟む『じゃあ、早速、ユーリアの家に行こうよ!!』
聖獣様の鶴の一声で、続きは私の家で話し合うことになった。
ここから先の話は、教会でしていたよりも、より具体的なものになるって、神官様は言ってたしね。なら、ちょうどいいと思う。お母さんにも直接聞いて欲しい。その方が安心するでしょ。
それとは別に、聖獣様が結界も張ってくれるしね。これで、お父さん、お母さんの人の良さに付けこむ悪いヤツはいなくなるよ。
ややこしくなるから、結界の件は今は横に置いといて、なかなか帰って来ない私たちを、お母さんはとても心配してると思うの。大事な時期のお母さんに、これ以上心労を掛けたくない。早く帰って顔を見せて安心させてあげないとね。
話す内容は、たぶん、いつ王都に向けて出発するのか。
学園ではどんなことを勉強し、どんな場所で生活するのか。
王都を出発する前に何が必要なのか。
こんなところよね。聖獣様を抱っこしながら、そんなことを考えていた。
ふと、視線を感じる。
村人たちが、遠巻きで道を歩く私たちを、ヒソヒソと話しながら観察していることに気付いた。
目が合うとそらせれた。悪いことなんてしていないのに、ちょっとだけムカついたよ。でも、文句は言わないよ。言っても仕方ないことだから。ここでは、普通が一番なんだ。良いことでも外れるのを嫌うからね。だから、村が発展しないんだよ。良く言えばフレンドリー、悪く言えば閉鎖的。
歩きながら、チラッと隣を歩くお父さんに視線を向けた。
お父さんの表情はずっと硬いままだ。それが普通の反応だよね。特に、私の両親は過保護だから強く出ているかも。
それにしても、聖女だよ聖女。
こんなど田舎でね。ほんと、怒涛の展開だよ。ついていけないよね。王都に行くって決めた私でも、まだ夢を見ているみたいなんだから。
そんな私の腕の中で、鼻歌が聞こえてきた。聖獣様だ。ちょっと音痴かな。でもそれがいい。
「楽しそうだね、聖獣様」
何が楽しいのかな? 何もない田舎なのに。ましてや、村の人の視線気付いてるでしょ。
『楽しいよ。ユーリアが生まれ育った村なんだから』
つくづく、聖獣様って不思議な存在だと思う。
いとも簡単に、モヤモヤしていた気持ちを晴らしてくれた。会って間もないのに、ずっと一緒にいたような安心感さえある。それが嫌じゃないんだよね。自然と私は受け入れている。そのことに驚きだよ。だからかな、心から思うんだ。聖獣様に見付けてもらって、私は幸せなんだってね。
「ありがとう、聖獣様。そう言ってくれると嬉しい」
ギュッと小さな身体を抱き締める。聖獣様は嬉しそうに笑った。私も一緒に笑う。
『ユーリアは笑顔が一番可愛いんだから、いつも笑っていてね』
「うん、約束するよ。聖獣様も私の隣で笑っていて欲しいな。あのね……私もいつか、聖獣様が生まれた場所を見てみたい」
私にとって、聖獣様はとても大事な存在だから。
『いいよ。いつか、連れて行ってあげる』
「いつかって、いつ?」
『ユーリアが立派な聖女になったらだよ。今は、ユーリアが壊れちゃうから我慢して』
壊れる? 何が?
「わかった。私、学園で頑張るね。そして、立派な聖女になるの」
そして、お金もいっぱい稼ぐ!!
さすがに、これは口には出せないわ。聖女のイメージ完全に潰すよね。
お父さんは複雑な表情を隠せないでいる。反対に、神官様はとても嬉しそう。二人とも近くにいるんだから、聖獣様と私の会話まる聞こえだよね。
数時間前までは、なんでもいい、職人になるのが夢だった。手に職を付けて、家族を支えなきゃって考えてた。それが今は、全く違う道を歩もうとしている。
スキルって、本当に人生を変えるんだね。
でも……自分が決めた道だから、辛いことや嫌なことがあっても、後悔はしたくないかな。
43
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
稀代の悪女は死してなお
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。
そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。
「……わたしは、妖精が見えるの」
気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは――
心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる