両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹

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第一章 田舎娘が聖女になりました

教会にやって来ました

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 今日は朝からいいお天気。

 昨日まで雨が降っていたから、それだけで、ちょっと特別な日って感じがする。

 今日はね、教会に行く日なの。自分の〈スキル〉がわかる日なんだよ。

 とてもとても大事な日だから、お母さんも一緒に来て欲しかったけど、臨月だからね、お留守番なんだ。だから、私はお父さんと一緒に教会に来ていた。小さい村だから、ほとんどの人が顔見知りだよ。皆両親そろって来ている。中には、じじばばもいたよ。

 当然、教会に来ている子供たちも、私の遊び仲間。まぁ中には、どうしても好きになれない子もいるんだけどね。あの子のように。

「あんたの母親、どうしたのよ」

 お父さんが私から離れた隙を狙って、そう高飛車に声を掛けてきたのは、この村で商会を営んでいるリナリー。おはようの挨拶もない。

 少しお金を持っているからって、いつも上から目線。だからかな、結構、皆から煙たがれているわね。本人は気付いてないみたいだけど。特に、私は他の子よりも強く当たってくるかな。そんなに気に食わないのなら、話し掛けてこなくていいのに。頼まれても、こっちから話し掛けないから。話したくないけど、無視したら無視したでめんどくさいのよ。特別な日なのに溜め息吐きそう。

「お母さんは、もうすぐ赤ちゃんが生まれてくるから、家でお留守番をしているわ」

 知ってるはずなのに、訊いてこないでよ。

「へぇ~貧乏なのに大変よね。ますます、貧乏になるんじゃない?」

 大きなお世話。

「そんなの、リナリーには関係ないでしょ」

 ほっとけ。苛立ちから、口調がキツくなる。

 貧乏をネタにからかわれるのには慣れている。っていうか、そこしかからかうネタがないからね。ほんと、馬鹿の一つ覚えみたい。そうわかってるのに、やっぱり馬鹿にされると腹が立つわ。

「いいこと、平凡で貧乏のあんたがどんだけ頑張っても、いいスキルなんて貰えないのよ。せいぜい、メイドか農民がいいところよね。なんなら、私が特別に雇ってあげてもいいのよ」

 あんた何様。ここまで、上から目線なんて……ほとほと呆れるわ。いらないお世話だよ。

「結構です」

 死んでも嫌。速攻、NOで。

「全然、可愛くない!! 知らないんだから!!」

 私の返答がおきに召さなかったみたい。そんな捨てゼリフを残して、リナリーは人混みの中に駆けて行った。涙目で。

 なんで、リナリーが涙目になってるのよ。打たれ弱かったら、構ってこなくていいのに。ほんと、何がしたいのよ。そんなことを考えていると、後ろから声を掛けられた。

「おはよう。ユーリアって、リナリーに気に入られてるよね」

 振り返らなくても誰かわかった。こんな勘違いなことを言い出すのは一人しかいないからね。振り返ると、やっぱり隣に住むサリアだった。

「どこが? 気に入られた要素なんて、微塵みじんも感じないんだけど」

「素直じゃないし、こじらせてるからね、リナリーは」

 どう解釈したらそうなるのよ。違う意味で呆れるわ。サリアは素直じゃないって言うけど、私は素直だと思うけどね、悪い意味で。

「言ってる意味がわかんない」

「まぁ、わかんないよね。だって、ユーリアって子供って感じしないし」

 そういうサリアもね。

「それって、褒めてないよね」

「半々かな」

 サリアって可愛いしぐさをしながら、さり気なく毒を吐くよね。でもそういうところ、嫌いじゃない。

 そんな話をサリアとしていると、教会の扉が重い音を立てながら開いた。

 ワイワイと騒いでいた声が消えシーンと静まる。神官様が二人中から出て来た。

 いよいよ始まるのね。

 どんなスキルが授かるのかな、すっごく楽しみ。

 来い!! 職人系!!




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