護国神社の隣にある本屋はあやかし書店

第四冊 手帳

序章

　何度も話し合った。

　話して、話して、時には喧嘩して、それでもまだまだ足りない。俺ではなく、彼女の方が。

　一緒にいられるのはこの道しかないのに。ほんと、おかしな話だ。俺がこれでいいんだって言ってるのに。それでも、彼女は話し合いの最後には必ずこう俺に訊いてくる。

「本当にそれでいいの？　後悔しない？」と。

　その度に俺はこう答える。

「ああ。俺が望んだことだ。俺が考えて考え抜いて選んだ道だから、君が気に病むことじゃない」

　そう言っても不安な君は、少し眉間に眉を寄せ念をおしてくる。

「本当に？」

　そんな君を見て、俺は笑みを浮かべてしまう。君は真剣じゃないって怒るけど。

　だって、嬉しいじゃないか。君の不安は俺を想ってのことだろ。君が怒るのも、俺との未来を真剣に考えているからだ。それだけ想われていて、微笑むなって酷じゃないか。俺は君に惚れぬいてるのに。君なしじゃ生きていけない程にだ。

　だから、俺の答えは最初から決まっていた。君には悪いけど。それが君を苦しめることになってもだ。

「本当に。だから、安心して。俺は君に会えて幸せだ。これから先も君と歩んでいける。幸せだよ。俺には君と歩む未来があるんだから」

　その未来を手に入れるために、俺の存在全てを、人間であることさえ、捨て去ることになろうとも後悔しない。

　君という存在を知ってしまった俺が、君のいない未来を歩くことなど、絶対不可能なんだ。自分でもかなり重いって自覚してるけど、仕方ないじゃないか。それが本心だし。君は知らないけど。

　優しい君のことだから、自分のせいだと苦悶するだろうね。

　たがそれは違う。

　これは、俺の我儘なんだ。