裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
34 / 34
第二章 ラッシュ港攻略

選ばせてやる

しおりを挟む
「すみません。もしかして・・・私、お待たせしてしまったでしょうか?」

私は服部さんに謝罪した。

「いえ、そんな事ありません。実は車で来たので、早めに来ていたのですよ。」

服部さんはにこやかに言う。

「そうだったのですか?それではいつも姉の所へ来るときは車だったのですか?」

「いえ、普段は電車で来るのですけど・・・今日は初めて車で来たのです。取り合えず、どこかお店に入ってお話しませんか?」

「ええ、そうですね。」

そして私と服部さんは駅の並びのカフェに入ることにした。


カランカラン

ドアを押して中へ入るとお洒落な真鋳のドアベルが鳴った。

「加藤さん、真ん中よりも奥の席へ座りませんか?その方が落ち着いて話が出来ると思うので。」

先を行く服部さんが振り返ると話しかけてきた。

「ええ、そうですね。」

服部さんの意見に頷いた。

「それではあの席にしましょう。」

示した場所は窓際の一番奥のボックス席だった。2人で向かい合わせに座ると、服部さんがメニューを広げてきた。

「どうぞ、加藤さん。」

「ありがとうございます。」

お辞儀をし、メニューを受け取るとパラリとめくった。うん・・・やっぱり無難なところでアイス・コーヒーにしよう。パタンとメニューを閉じると私は言った。

「あの、私はアイス・コーヒーにしようかと思います。」

「それでは私も同じものにします。」

すると、そこへタイミング良く、若い男性ウェイターが水の入ったグラスを2つ運んできた。

「失礼致します。」

コトンコトン

私達の目の前にグラスを置くと、ウェイターは言った。

「ご注文の品はお決まりでしょうか?」

「アイスコーヒー2つお願いします。」

「はい、かしこまりました。アイス・コーヒーを2つですね?少々お待ち下さい。」

ウェイターは頭を下げると去って行った。そして服部さんが口を開いた。

「今更ですが、改めてご挨拶させて頂きます。この度、加藤忍さんの担当になりました服部と申します。」

「加藤鈴音です。こちらこそよろしくお願い致します。」

私も頭を下げると、服部さんが言った。

「ところで加藤さん。体調は・・いかがですか?交通事故の後の後遺症等で苦しんでいませんか?何かあれば私どもにご相談下さいね?」

「後遺症・・・ですか?」

少し考えた後、私は尋ねてみる事にした。

「あの・・・後遺症と言っていいのかどうかは分りませんが・・しょっちゅう、急激な眠気に襲われて・・一度眠ってしまうと何時間も眠ってしまう症状が合って少し困ってるんです。」

「急激な眠気・・・ですか?う~ん・・・・。」

服部さんは腕組みをして暫く考え込んでいたが、やがて頭を下げてきた。

「申し訳ありません・・・今まで聞いたことが無い症例なので・・・。」

「い、いえ。いいんですよ。来週、退院後初めて病院を受診するので、その時にお医者さんに相談するつもりなので。」

「ですが・・・。」

服部さんはショボンとしている。何だか、かえって悪い事をしてしまったような気分になってしまった。その時・・・。

「お待たせいたしました。」

タイミングよくアイスコーヒーが運ばれてきた。ウェイターは私達の前に細長いグラスに注がれたアイスコーヒーを置き、マドラーとコーヒーミルク、ガムシロップを置くと一礼した。

「ごゆっくりどうぞ。」

ウェイターが去ると、早速私は言った。

「服部さんはブラック派ですか?それとも甘い方がお好きですか?」

「は?あ、そうですね。私はブラック派です。」

「気が合いますね。私もブラック派なんです。」

そして私は一口ストローでアイスコーヒーを飲んだ。うん、苦みの聞いたコーヒーの味が頭をシャキンとさせてくれた気がする。

「服部さん。早速ですが、姉の今の病状を教えて頂けますか・・・?」

私はじっと服部さんを見つめた―。





しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...