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第二章 ラッシュ港攻略
そして魔物は生まれる
しおりを挟むしっかりと大地を踏み締め、やけに晴れ晴れとした顔で、エルヴァン聖王国に戻るユリウスたちの背中を、俺は水晶越しに見ていた。
これで会うのは最後だな……
もうこの背中を見ることはないだろう。
十年振りに会ったユリウスに、懐かしさは少しも感じなかった。ただ同じ顔の奴がいるぐらいにしか思えなかった。力の器は別として、最も自分に近い存在の筈なのに。ほんと不思議だ。だけど同時に、血の拘束も断ち切ることが出来た気がして嬉しくなった。そんなことを考えてると、音もなくマリアが隣に立った。
「……ほんと、アークって優しいよね。さっきのアイツらの会話、流したままにしてたでしょ」
バレてたみたいだ。でも、優しい訳じゃない。ただの気まぐれだ。マリアがボソリと呟く。それを皮切りにジムやレイも口々に口を開く。
「まぁそれが、アークらしいっちゃらしいけどな」
「だから、俺たちは安心して、アークに付いて行けるんだろ」
当たり前のようにマリアたちは言う。俺は苦笑するしかない。
本当に、こいつらは……自分らが何を言ってるか全然分かってないんだろうな。
常々思う。何気なく放つその言葉がどんなに嬉しいのか、絶対マリアたちは気付いていないだろう。大袈裟でもなく、気を使った訳じゃない。本心でそう思っている言葉に、俺がどんなに救われてるか……だからこそ、改めて思う。
俺の居場所はここなんだとーー
「……王都の人間は受け入れるかな?」
マリアが尋ねてきた。
ユリウスたちをか?
「そうだな。正直、被害者意識に凝り固まった奴らがどう反応するかなんて、分からないな」
俺がそう答える。その後レイが続く。
「全否定するか。それとも、現実逃避するか。どっちにしても、聖王国の未来は変わらない」
破滅しかない未来。
その道しか許さない。
全員の願いだ。自分たちが引いたレールから外れることは、最早誰にも出来ないし外させない。エルヴァン聖王国に住む人間の未来は変わらないのだ。
「でもそれって、帰るまでに国が残ってたらの話じゃねーの」
あっ、ジムの言う通りだ。根本的なこと忘れてた。
「「「確かに、そうだよ(ね)な」」」
魔物はこの世界の膿だ。その膿の正体は負の感情。
大聖女の結界がなくなり、神様と精霊王の最低限の加護も、俺が名乗り出たことで殆ど解けている。今では微かにあったかなぁって匂わす程だ。
そこで、この青空の映像を見せたらどうなる? 贅沢品の甘味を見せたらどう思う? 真実を教えたらどうなる?
真っ先に胸に抱くのは疑心暗鬼だ。勇者という存在が絶対視されていた中で生まれる疑心暗鬼。信じていたものが根本から崩れ去った時、絶望し、裏切られたと一方的に怒りだす。
それは純粋な怒りだ。
そしてその怒りは、負の感情を引き寄せ呪詛を生み出す。
エルヴァン聖王国と聖国に。
となると、当然結魔物が発生するよな。
エルヴァン聖王国のあちこちで。特に王都を中心に。魔物は人を喰らい、また人はこの世界を憎む。エンドレスに続く負の連鎖。
ユリウスたちが王都に戻るのは、どんなに急いでも人の足だと有に三週間は掛かる。そこまで国が保っていればいいけどな。魔物を相手にしていない騎士団、兵士、使えるのは中ランクのハンターたちだけで、果たして持ちこたえられるか……見物だな。
それじゃあ一仕事終えたら、裸の王様に転落した糞陛下がどうなってるか、この目で直に見に行くとするか。
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