24 / 34
第二章 ラッシュ港攻略
生贄【SIDE:貴族たち】
しおりを挟むその日も変わらず、朝から曇り空だった。
雨が降らないだけマシだが、肌寒い。暦では初夏に入ろうとしている季節なのだが、相変わらず上着がいる。
そんな中、この場所は特に寒かった。ガタガタと身体が震える程に。
原因は国王が放つ殺気だっだ。
「何故、小麦と大麦の物価が急激に上がってるんだ!? 答えろ。大臣」
謁見の間で、財務大臣を無理矢理跪かせ、その首に刀の刃をあてがいながら、国王は殺気を放ちながら低い声を放ち詰問する。その顔色は幽鬼のように青白かった。
「そっ、それは「それは何だ?」
恐怖でどもる財務大臣に、容赦なく追求し追い詰める国王。国王の手に力が入る。大臣の首に赤い線が浮かぶ。襟を赤く染めた。恐怖のためか、大臣は痛みを感じないようだ。
「ラッ、ラッ、ラッシュ港からの積荷が入って来ないからです!!」
冷や汗をタラタラと流しながら、必死で理由を述べた。
「どういうことだ? 野盗に積荷を浚われたのか? それとも、代官が自分の懐にいれたか?」
重ねて、国王は財務大臣を詰問する。どちらも十分考えられることだった。しかし、ここで曖昧な返事はできない。なので、回答は一つしかない。
「……どちらも、報告を受けておりません」
小さな声で答える財務大臣。
「受けておらぬか。なら、何故だ? ……どうして黙っているんだ、大臣。まさか、分からぬで済ませていないだろうな」
それは財務大臣だけではなく、法務大臣か騎士団長に振るべき話だろうと、国王以外は思った。二人共この場にいるのだから問える。だが、我が身が大事な彼らは卑怯にも押し黙る。
彼らは財務大臣を生贄にしたのだ。
何度も言うが、謁見の間には法務大臣と騎士団長がいたにも関わらず、尚もしつこく財務大臣を詰問し続ける国王。
このままでは、死ぬのは自分だけだと考えたのだろう、逃げる法務大臣と騎士団長の腕をしっかりと財務大臣は掴み引っ張った。
「…………法務大臣と騎士団長と協力して、目下調査中です」
それが、この答えだ。間違ったことは言ってはいない。事実を述べただけだ。
名指しされた法務大臣と騎士団長は、面白い程に顔色を変える。反対に、国王はまるで狂ったように笑い出した。
「クックック。アハハハ。そうか、そうか。調査中か。調査中なんだな」
ひとしきり笑う国王。つられるように、財務大臣の口角が上がる。
財務大臣は国王と目が合った。その瞬間、財務大臣は自分が失敗したことに気付いた。国王の目は全く笑ってはいなかったのだ。鋭い目で、財務大臣を見据える。
「そんなにおかしいか……?」
瞬間、国王は財務大臣の肩から胸に掛けて刀を振り下ろす。財務大臣の口からゴホッと血が溢れ、大理石の床を汚す。そしてそのまま、財務大臣は前のめりに崩れ落ちた。国王自身も返り血を浴びる。
その惨劇に謁見の間に悲鳴が上がる。
だが、国王は気にしない。悲鳴を上げる貴族たちを剣呑な目で睨み付ける。そして、冷たく言い放つ。
「無能はいらん。いいか、今日中に原因を突き止めろ。突き止めなければどうなるか、分かってるな?」
財務大臣の背中を踏み付けながら、国王はその場にいる貴族たちを今一度見渡す。特に、法務大臣と騎士団長に視線を止めてだ。その上で、再度、その場にいる全員に言い放った。
「無能を食わす金も余分な食糧もない。財務大臣は我が身を犠牲にして国に貢献してくれた。その勇気に拍手しようじゃないか!!」
シーンと静まり返った謁見の間に、国王の拍手が響く。誰も拍手はしない。そんな臣下たちに尚も国王は言い放つ。
「続きたい者がいれば名乗れ。この私が自ら送ってやる」
そう訊かれて名乗り出る者などいるものか。それでも、国王は引き下がらない。後何人殺せば、気が済むんだ。いつ、自分たちが開放されるんだ。グルグル回るのはそんな考えばかりだ。
元々昔から、国王は過激な性格だった。只怒鳴り付けはしていたが、臣下を殺したりはしなかった。我が子は殺そうとしたが……それには理由があったからだ。しかし今は……
もう何人も理不尽な理由で殺されている。
唯一、国王と対等に話していたエモンズ大司祭はさっさと見切りを付けて、この国から出て行った。
頼みの綱である勇者は、国王の愚行を止めることができずに、真っ青な顔で固まっている。
五年ーー
そうたった五年で、全てが変わってしまったのだ。
太陽が消えただけで、この国はおかしくなった。
重苦しい空気と緊迫した空気が混雑している中で、誰もが息を潜め、生贄から逃れようと目線を下に向け、国王と視線が合わないようにする。
そろそろ限界だと大勢が思った時だった。その空気を破るように、扉をノックする者があわられた。
国王の許可をえて近衛騎士が入って来た。室内の惨状に息を飲むが、すぐに平常心を取り戻し要件を述べる。
「陛下。ラッシュ港に派遣していた騎士が謁見を申し込んで下りますが、どう致しましょうか?」
この時、この場にいる国王以外の全員がこう思った筈だ。
天は自分たちを見放さなかったと。新たな生贄が自ら飛び込んできたとーー
だがそれは、新たな地獄の始まりだと気付くのはすぐ後だ。
そう……新たな地獄が、真の地獄が始まろうとしていた。
「通せ」
国王のこの言葉によって。
51
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる