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第八章 死亡フラグと監禁フラグ、同時に叩き折ってやります
作戦会議(二)
しおりを挟む「教皇様に会うって……簡単に言うけどな…………」
ケイ兄さんが呆れながら言った。
コネがあったとしても、おいそれと会える存在じゃないからね。Sランクのケイ兄さんもニノリスさんも、会ったことはまだないらしい。会える人も一握りだって聞くよ。
完全に、雲の雲の、はるか上に存在する人。
「全く可能性がないわなけじゃないわよ。とりあえず、あの神官に面会さえできれば道はひらけるわ」
限りなく細いけどね。ゼロじゃない。
「あの神官? って、前にギルマスの所で会ったあの聖教国の神官か!?」
キルが納得した顔をする。
「〈聖王の器〉の護衛を頼まれた件か……いきなり、鑑定魔法を使われたって言ってたよな」
ケイ兄さんの顔が少し歪む。
ケイ兄さんとニノリスさんには一応話してあったからね、すぐに誰を指してるかわかったみたい。
「そうそう。私もできれば関わりたくないけど、ここは背に腹は代えられないでしょ。我慢するわよ、色々。でも、こうなるってわかってたら、名前くらい訊いてたわ」
あの時は、神官だからって邪険にしてたからね。マナー違反はされたし、別に邪険にしても咎めはされなかったんだけど。
「なら、ギルマスが知ってるんじゃないか? 元々はギルマスを通して依頼してきたわけだし」
「キルって、今回冴えまくってるね。今から、ギルマスに訊いてくる」
部屋を飛び出そうとしたら、ニノリスさんに止められた。ちょっと、イラッとする。
「何?」
「とりあえず、座れ。神官の名前がわかっても簡単にはいかないだろ」
ニノリスさんが肩を竦めなから言った。
「確かに、ニノリスの言う通りだな。相手は、仮にも〈聖王の器〉を回収に来た神官だぞ。それなりに、高位の神官だろう。真正面から面談を申し込んでも、一蹴されるか、何年も先になる可能性が大だろ」
確かに、ケイ兄さんの言う通りだ。何年も待てやしない。名前だけ知っても、それが武器や鎧になるのはかなり先。
前段階で積むわけにはいかないの。
考えろ!! 考えろ、アキ!! 思い返せ!!
記憶からヒントを得ようとして思い返していると。あることを思い出した。
「……あっ、聖教国の神官と繋がりがある人いたわ」
「誰だ?」
ケイ兄さんが尋ねる。
「暗殺ギルト。私の監視を依頼されてた。そんな依頼をするってことは、聖教国側は私との繋がりが欲しいはず。なら、そこを突けばいい」
「……そうだね。そこが、一番確実だ」
ニノリスさんが私の案に乗ってくれた。
「ニノリスさん、ユリアいる? できれば一緒に行きたいんだけど」
ユリアは暗殺ギルトのギルマスの娘。
こんな風にユリアのことを使いたくはないけど、失敗は許されない以上、使える手は使うべきだと思う。
「今、呼ぶよ。そろそろ、頭が冷えた頃だと思うし」
クスリと笑うニノリスさん。思わず、キルと私は身体を仰け反らせる。知らないうちに、何かのスイッチ押しちゃったみたい。
「……ありがとう」
お礼も小声になるよ。
「じゃあ、ここからは二手に分かれるか。ギルマスんとこには、キルとニノリスが。セルシストには俺とアキ、ユリアで行く」
うん、妥当な班分けだね。暗部たちの主人なんだから、できる限り遠くに行かない方がいいよね。でも、神官と会う時はいて欲しいかな。
「仕方ないな、それでいくか……アキ、会う日取りは三日後に指定してくれる。場所は廃神殿と言えばいい。余計な情報は流さず、要点だけ伝えるんだよ」
「三日後で廃神殿だね。うん、わかった」
私がそう答えた時、ドアをノックする音がした。ニノリスさんが入るよう促すと、ドアはゆっくり開き、ユリアがいつものメイド服を着て入って来た。
そして、私を見るなり、部屋の隅に隠れてしまったよ。ブルブル震えてる。まるで、新しい部屋に来た飼いウサギのよう。
なんで!?
「何してるのかな? ユリア」
ニノリスさん、微笑みながら額には青筋が。
私はユリアの傍まで移動すると、しゃがみ込む。
「ユリア久し振り。元気にしてた?」
顔を下から覗き込む。
「……勝手にキルに嫉妬して、情けない所を見せてしまいました。アキ様にも嫌われて……」
力ない声で、ユリアはぽつりぽつりと話し出す。
「えっ!? 別に嫌ってないけど」
そもそも、一度も嫌いなんて言ってないけど。
「本当ですか!?」
「本当だよ!!」
「良かった~~!!」
ユリアは私をギュッと抱き締めた。久し振りのユリアの抱擁は、温かくて、やっぱり苦しかったよ。
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