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第八章 死亡フラグと監禁フラグ、同時に叩き折ってやります
作戦会議(一)
しおりを挟む一夜明けて、手に入れた情報で作戦会議をしてるけど、完全に行き詰まっていた。
サルシナ先生たちを助けるだけじゃすまなくなったからだ。
「思い切って、魔石を破壊したいところだけど、そんなことしたら、まず間違いなく私たちは犯罪者になるよね。根本的な問題は解決しないし」
つい、そんなことをボヤいてしまう。
ユリアがいたら、「犯罪者? それが、どうかしましたか?」って言われそう。今はニノリスさんの用事でいないけど。
魔石そのものがなくなれば、監禁されている生徒とセシル、サルシナ先生は救出できるよ。魔石を壊さなくても、術式さえ解ければ救出は十分可能だね。
でも――王都を覆っている結界は消える。
「アキは、この国を残したいか?」
ケイ兄さんが真顔で訊いてきた。
たぶん私の返答次第で、作戦のゴールが違うんだと思う。
「正直、消えてもいいとは思うけどね。聖王国に良い思い出ないし。上層部は屑ばかりだし。だけど、それは善良な市民が避難してからだよね」
屑のせいで、力ない人たちが犠牲になるのはおかしいし、間違いだと思う。私は聖人様じゃないから、誰も彼も手を差し伸べたりはしないし、助けられない。だから、切り捨てる時は切り捨てる。冷たいけどね。
それで恨まれたとしても、受け入れるよ。ちゃんと責任は取るつもり。
じゃあ、この国を駄目にした屑たちは、責任取らなくていいの?
私は取るべきだと思う。といっても、何もできないだろう。なら、せめて、この国の最後を見届けるべきじゃないかな。
「つまり、避難の時間を稼げばいいってことか……」
「それが一番難しいよな」
ニノリスさんの台詞に、ケイ兄さんは頭を抱える。
「まずは、避難を重点に考えるべきじゃかいか?」
黙って聞いていたキルが口を挟む。
「視点を変えるってこと?」
私がそう尋ねると、キルは「違う。優先順位を変えるんだ」と答えた。
「優先順位を変えるって、人命を後回しにするってこと!?」
さすがに、それはどうかと思うよ。
「考えてみろ。魔石に魔力を注ぐために誘拐されたんだろ、なら、すぐには殺さないはずだ。サルシナさんや他の生徒たちは、かなりの魔力量を持っているから捕まった。頭の悪いあいつらでも、早々に、使いものにならないようなことはしないだろ。とことん、長く使おうとするんじゃないか?」
確かに、キルの言う通りだ。でも、監禁されている人たちの負荷は、かなりのものになるよね。取り返しがつかないほどの、心の傷を負わせるかもしれない。
キルは心の傷よりも、多くの命を優先したんだ。
それは間違ってはいないと思う。思うけど……
「……つまり、ボロボロにされてポイッと捨てられる前に、市民を避難させるってこと」
かなり、高難度のミッションだね。
少しキツイ言い方になっちゃった。キルは気分を害せず続ける。
「少し違うな。周知させるだけでいいだろ。危ないから他国に避難しろってな」
周知させるだけ……
「逃げるか逃げないかは、本人が決めればいいってことね」
「そうだ。そこまでの責任を負う必要はないだろ」
「なるほど……さすがだね、キル。だいたい、キルが言いたいことがわかったよ。それなら、時間は短縮できるね」
「まぁな。だけど……」
「問題は、誰が先導するかだな」
キルの代わりに、ケイ兄さんが問題を提示した。
王族や神官以外で市民に影響力がある人って、一人しか思い浮かばない。
「それなら、心当たりがあるわ」
「ああ、奴しかいないな」
たぶん、私とニノリスさん、同じ人を想像してるわね。彼なら大丈夫。この聖王国の誰よりも、影響力があるわ。無条件に信じ動くくらいにね。
「問題は、どうやって面会にもちこむかよね……」
方針は決まったけど、問題はそこ。相手は雲の上の人だからね。
「それなら、大して問題にならないだろ。アキ次第だけど」
確かに。私に興味津々だったからね。
「あ~気は進まないけど、やるしかないわね」
こんな事態が起こらなければ、絶対避けていたわ。
「聖竜も連れて行った方がいいな。俺も同行しよう」
私とニノリスさんの間でトントン拍子に話を進めていると、ケイ兄さんがちょっとイライラしながら訊いてきた。
「おい!! 誰に会いに行くんだ!?」
「そんなの、決まってるでしょ。教皇様に会いに行くのよ」
私がそう告げると、ケイ兄さんもキルも固まちゃった。まぁそうなるよね。
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