大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。

井藤 美樹

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第八章 死亡フラグと監禁フラグ、同時に叩き折ってやります

無邪気な笑顔に癒やされます

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「なんで、戻って来た!? さっさと帰れ!! お前らも連れて来るな!!」

 私たちの顔を見た瞬間、ニノリスさんにめっちゃ怒鳴られた。

 舌打ちまでされたよ。完全にキャラ変わってない? でも、それだけ危険で心配してくれたんだと思うと、なんか嬉しいな。

「アキ!! 笑うな!!」

 顔に出てたみたい。さらに、ニノリスさんの怒鳴り声は大きくなる。

「なんか嬉しくて。ニノリスさんが心配してくれるの。でも知ったからには、無視できないよ。冒険者として、人として、やったらいけないって思うから」

 私がそう答えると、ニノリスさんはやたらでかい舌打ちをした。

「だから、知られないように夜中に連絡いれたのに。全く、ミスりやがって」

 そう悪態をつきながら、ニノリスさんは後頭部をきむしる。

「しょうがないだろ、アキが夜中に起きてきたんだ。それも、ご丁寧に認識阻害魔法と防音結界を張ってな」

 ケイ兄さんが渋々弁明する。

 ニノリスさんの視線が痛いほど突き刺さるわ~

「……だって、しょうがないじゃない!! 水飲みに途中まで下りてきたら、真剣そうな話を、固まって小声でしてるから。漏れ聞こえる単語も物騒だったし……それで、サルシナ先生と行方不明の生徒たちは無事なの!? 監禁場所とか特定されてるの!?」

 私はニノリスさんに詰め寄り、彼の目を見る。そして、逃さないように彼が着ているシャツを両手で掴んだ。

 納得いくまで聞かないと、この手離さないんだから。

「……しょうがない。わかった。だから、その手を離せ」

「嫌!!」

 溜め息を吐きながら、ニノリスさんはそう言ってたけど、私は首を左右に振り断った。

「あ~わかった、わかった。じゃあ、そのまま聞け」

 根負けしたニノリスさんは、また小さな溜め息を吐いてから話し出した。

「サルシナの詳細な監禁場所はまだ特定できていないが、だいたいは把握できている。無事かどうかは確認できていない」

「何故?」

 この大陸のトップクラスの暗部がいるのに?

「結界が邪魔している。あの結界を下手にいらうと、警報がなる仕組みだ。それ以外にも、色々細工がしてある。迂闊うかつには手を出せない」

 なるほど、迂闊うかつに手を出せば、最悪、サルシナ先生の身に危険が及ぶ可能性があるわけね。そこまでして、閉じ込める理由って……

「わかった。それで、行方不明になった生徒たちは?」

「それに関しては、確認できている。全員無事だ。サルシナも生徒たちも同じ建物内に監禁されていた」

 生徒たちが無事でよかった。でもそれは今だ。この先はわからない。早く助け出さないと――

「どこに?」

「監禁場所は神殿だ。生徒たちは地下室に。サルシナはおそらく、最下層に監禁されている」

 最下層ね……

 そう言えば、結界の効力は全く落ちてはいない。まだ、落ちるまできてないかもしれないけど、サルシナ先生を最下層で厳重に監禁しているってことは、そういうことだね。

「それと、生徒の中にセシルがいた」

「セシルが!?」

「明らかに、暴行のあとがあったらしい。おそらく、気付いたんだな、自分の親が神官と一緒にしていることを」

 結界の弱体化は神殿だけじゃなく、国の問題。だから、この誘拐事件は国レベルの犯行だってことか……第三王子のセシルなら気付く可能性は大だわ。

「セシルは国王や神殿のやり方に反発していた。国王にとったら、クソ生意気な子供なんでしょうね」

 排除したいほどに。

「まさか、自分の子供を!?」

 キルはショックを受けてるけど、あいつらならやりかねない。

 私はニノリスさんから手を離すと、キルに向き合う。

「キル、この世には、子供を平気で利用し捨てる親がいるわ。殺そうとする親もいる。私の実親のようにね。国王も、セシルを除く王族たちも、貴族も、神官たちも、全員屑なの。屑の中の屑なの。そんな奴らに、親の愛情なんてあるはずがない。わかった?」

 私が低い声でそう吐き捨てると、キルは小さく厳しい声で「わかっている」と答えた。

「作戦は明日練ろう。でだ、それは聖竜か?」

 ニノリスさんは、ケイ兄さんの肩にいるセイを指差しながら尋ねる。

「セイ」って呼ぶと、小さな竜は嬉しそうに私の元に飛んできた。両手でセイを抱っこする。可愛いな。

「セイは新しく私の仲間になったの。セイって、聖竜だったんだ、だから、あの池は神聖魔法所持者しか入れなかったんだね」

 納得、納得。

『そうだよ。ニノリス、よろしくね』

 めっちゃ明るい声で、セイは唖然とするニノリスさんに挨拶した。さっきまでの暗くて重たい空気が払拭ふっしょくしたよ。

「セイ、挨拶できて、偉いね」

 撫でてあげると、セイはすっごく上機嫌で笑った。無邪気な笑顔って、ほんと癒やされるね~


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