大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。

井藤 美樹

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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます

身体強化は必須です

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 綺麗……

 陽の光が水の中でキラキラ光って、魚の鱗にも反射してる。まるで、星の中泳いでいるみたい……

「アキ、聞こえる?」

「聞こえるよ、モアさん」

 少し遠いけど、モアさんの中性っぽい声がはっきりと聞こえた。

「そのまま潜ると、横に人工的な洞穴ほらあなが見えてくるはずだよ。精霊石はその洞穴の奥にある」

 洞穴の奥?

 それって、まさか――

「おい、それって、主の住処じゃないよな!!」

 ケイ兄さんの焦った声がする。実は、私もそう思ったの。

「そうだよ、そこは主の住処。でも、この時間帯なら巡回に出ているからいないはずだよ」

 耳元でモアさんの声がする。

 モアさん、はずは絶対じゃないんだよ。それに、音がしなくても、身体を動かす度に振動が伝わっていたはずだから、テリトリー内に侵入者がいるって考えるよね。だったら、巡回だとしても引き返すよね。

「アキ?」

 返事がない私を心配して、モアさんは名前を呼ぶ。

 後ろを振り返らなくてもわかる。だって、私を覆い被さるように不自然な影ができているから。

 ……あれ? 襲って来ない?

 一口でパクってされると思ったんだけど、攻撃仕掛けてこないね……もしかして、私を伺ってる?

 相変わらず、耳元はケイ兄さんの焦りと怒りが混じった煩い声がしているけど、そんなのどうでもいい。

 敵意は感じないけど……

 振り返るしか――

 パニックになって、背中を見せたまま逃げるのは悪手。野生動物も魔物も追い掛けて来て捕まえてなぶる。
 
「アキ、もしかして出会ったの?」

 モアさんの緊張感がない声がした。

「……そのまさか。今から振り返るところ」

「会っちゃったか~。身体強化掛けてるから大丈夫だね。大丈夫、食べられはしないから、安心して」

 すっごい、明るい声がした。同時に、ケイ兄さんのキレる声がしたけど、すぐに聞こえなくなった。

『……クロードだよね?』

「えっ!?」

 頭に直接響く声。声変わりする前の少年のよう声だった。私は反射的に振り返る。

 そこにいたのは、一頭の竜だった。

 その頭部だけで私より大きい。でも、全身の鱗がキラキラ光ってて、怖いと感じるより神々しく感じた。

 攻撃しない方がいいって……確かにそうだね、モアさん。自死行為だわ。

『クロードじゃないの?』

 また、頭に直接話し掛けてくる。不快ではないけど、不思議な気分。慣れるまで時間掛かりそう。
 
 それはそうと、可愛らしく頭を傾げても、迫力があるだけだよ!! でもここは、興奮させない方がいい。でも、嘘は吐けない。竜は人の心を読むって本に書いてた!! っていうか、この場でパニックにならない私凄くない!?

「……クロードって誰ですか?」

 おずおずと訊きなおす。

『知らないの? 君たち人族の中で、超有名人なのに? 君、もぐり? でも、クロードと同じ気配がするんだよね。僕が間違うくらい。君、何者? どうやって、ここに来たの? 何が目的なの?』

 矢継早に質問してくる。

 いつ攻撃してくるかわからないなら、ここは真摯な態度で接するべきよね。

「私名前はアキ。冒険者をしてます。ここを案内してくれたのは、エルフのスモアフラさん。目的は精霊石を取りに来ました」

 端的に、言葉を飾らず。訊かれたことだけ答える。

『スモアフラ? そうなんだ……』

 竜はそう呟くと、鼻先を私に近付けた。鼻息かな、水圧が地味に掛かって飛ばされそう。

 もしかして、匂い嗅がれてるの!?

『やっぱり、クロードだ!! すっごく、可愛くなったね!! ちゃんと、約束守ってくれた!! 僕、とても嬉しい!!』

 興奮しながら叫ばれると、頭が痛くなる。でも、そんなこと気にする余裕がなかったよ。だって、竜の両手で抱き締められたから。

 そしてそのまま、もの凄いスピードで私を抱えたまま竜は泳ぎ出す。

 モアさんが、身体強化を掛けてるか確認してきた意味わかったよ!! 掛けてなかったら、死んでるわ!!


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