84 / 104
第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます
強さの種類
しおりを挟む裏庭に移動して狼さんを解放したら、樹の裏に隠れてしまった。逃げようと思っているけど、逃げれないって感じ。
「狼さん、そんなに震えないで。別に取って食ったりはしないから。ごめんね、無理矢理連れてきちゃって」
そう声を掛けたら、恐る恐る狼さんは顔を出す。狼さんには悪いけど、マジ可愛い。そんな狼さんを、鶏さんたちはくちばしで突いてる。
「種族違うけど、なんか兄弟みたいだね。弟分って感じ。ほんと、仲いいね……いいなぁ~そういうの」
見てるだけで癒やされちゃう。自然と笑顔になるよ。
すると、鶏さんが「コケッ」と鳴いた。まるで、「そうか」って言ってるよう。
「マジで、君たち、私たちの言葉理解してるでしょ」
つい訊いてみた。
「「「コケッ」」」
鶏さんたちの鳴き声が綺麗にハモったよ。もうそれ、確定だよね。狼さんも軽く頭を上下させてるし。
「さすが、モアさんの家族。狼さん、ほんとは強いでしょ、鶏さんよりも。もしかしたら、フェンリルの子供かな」
私の台詞にビクッと身を竦ませる狼さん。バレバレだよね。この森だもの、伝説級の魔物がいてもおかしくないよね。
となると、鶏さんは普通の鶏なの?
〈鑑定〉スキルを使えば簡単にわかるけど、それ反則な気がするんだよね。知り合いや仲間には使いたくない。
「わかるよ、〈鑑定〉スキル使わなくても。漏れ出てる魔力の濃度が濃くて純粋だからね。ユリアもね、すっごく強いんだよ。昔は私の稽古相手になってくれてね、私いつもやられてた。今はどうかな? でも、ユリアがスキルを使って挑んできたら危ないかも……ユリアって、強さが正義って所があるから、キルに負けたのが許せなかったんだろうね。でもさ……強さには色んな種類があるって思ってるんだけど、違うのかな? 難しいよね」
後半は愚痴になっちゃったよ。
返事はちょっと痛かった。鶏さんたちに突かれ、狼さんは私の手を舐めてくれた。慰めてくれてるってことぐらいわかるよ。
「ありがとう」
私は狼さんに抱き付く。一羽の鶏さんが私の膝の上に乗る。後の二羽は私の横で座り込む。狼さんは私の背中に。
もたれていいのかな? もたれちゃうよ。
恐る恐るもたれてみたけど、狼さんは嫌がりもせず移動もしなかった。
「温かいね……ありがとう」
天気もいいし、日向ぼっこ日和だね。風も気持ちいい。なんか、瞼が重くなってきたよ……
「こんな所で寝ちゃって。アキ、ほんと可愛いな」
「こうしてると、ほんとに子供みたいだね」
遠くで、ケイ兄さんとモアさんの声がするけど、返事するの面倒くさいよ。別に、返事しなくていいよね。
「子供なんだよ、まだアキは。大人にならないといけなかったから、なってるだけでな。……警戒もせずに寝られる場所を提供してくれて、すまない、モア。心から感謝する」
身体がフワッと浮く感覚がした。何かに包まれてるみたい。
「しばらく、ここに住んだらいいって言ったら、速攻断られたけどね」
「甘えるのが苦手なんだ。っていうか、甘え方を知らないんだ。俺は甘え倒したいけど、アキは望まない。俺たちのことを考えて」
「それに、負けず嫌いだしね」
「まぁな、それでここまで来れたんだ」
「お兄ちゃんは大変だ」
「ああ。でも、幸せだ」
ケイ兄さんはそう言うと、私を室内へと運んでくれた。
165
お気に入りに追加
464
あなたにおすすめの小説
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】
小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。
魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。
『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
王城内で開かれたパーティーで王太子は宣言した。その内容に聖女は思わず声が出た、「え、どうしましょう」と。*世界観はふわっとしてます。*何番煎じ、よくある設定のざまぁ話です。*書きたいとこだけ書いた話で、あっさり終わります。*本編とオマケで完結。*カクヨム様でも公開。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います
かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。
現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。
一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。
【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。
癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。
レイナの目標は自立する事なのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる