大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。

井藤 美樹

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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます

強さの種類

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 裏庭に移動して狼さんを解放したら、樹の裏に隠れてしまった。逃げようと思っているけど、逃げれないって感じ。

「狼さん、そんなに震えないで。別に取って食ったりはしないから。ごめんね、無理矢理連れてきちゃって」

 そう声を掛けたら、恐る恐る狼さんは顔を出す。狼さんには悪いけど、マジ可愛い。そんな狼さんを、鶏さんたちはくちばしで突いてる。

「種族違うけど、なんか兄弟みたいだね。弟分って感じ。ほんと、仲いいね……いいなぁ~そういうの」

 見てるだけで癒やされちゃう。自然と笑顔になるよ。

 すると、鶏さんが「コケッ」と鳴いた。まるで、「そうか」って言ってるよう。

「マジで、君たち、私たちの言葉理解してるでしょ」

 つい訊いてみた。

「「「コケッ」」」

 鶏さんたちの鳴き声が綺麗にハモったよ。もうそれ、確定だよね。狼さんも軽く頭を上下させてるし。

「さすが、モアさんの家族。狼さん、ほんとは強いでしょ、鶏さんよりも。もしかしたら、フェンリルの子供かな」

 私の台詞にビクッと身をすくませる狼さん。バレバレだよね。この森だもの、伝説級の魔物がいてもおかしくないよね。

 となると、鶏さんは普通の鶏なの?

〈鑑定〉スキルを使えば簡単にわかるけど、それ反則な気がするんだよね。知り合いや仲間には使いたくない。

「わかるよ、〈鑑定〉スキル使わなくても。漏れ出てる魔力の濃度が濃くて純粋だからね。ユリアもね、すっごく強いんだよ。昔は私の稽古相手になってくれてね、私いつもやられてた。今はどうかな? でも、ユリアがスキルを使って挑んできたら危ないかも……ユリアって、強さが正義って所があるから、キルに負けたのが許せなかったんだろうね。でもさ……強さには色んな種類があるって思ってるんだけど、違うのかな? 難しいよね」

 後半は愚痴になっちゃったよ。

 返事はちょっと痛かった。鶏さんたちに突かれ、狼さんは私の手を舐めてくれた。慰めてくれてるってことぐらいわかるよ。

「ありがとう」

 私は狼さんに抱き付く。一羽の鶏さんが私の膝の上に乗る。後の二羽は私の横で座り込む。狼さんは私の背中に。

 もたれていいのかな? もたれちゃうよ。

 恐る恐るもたれてみたけど、狼さんは嫌がりもせず移動もしなかった。

「温かいね……ありがとう」

 天気もいいし、日向ぼっこ日和だね。風も気持ちいい。なんか、まぶたが重くなってきたよ……



「こんな所で寝ちゃって。アキ、ほんと可愛いな」

「こうしてると、ほんとに子供みたいだね」

 遠くで、ケイ兄さんとモアさんの声がするけど、返事するの面倒くさいよ。別に、返事しなくていいよね。

「子供なんだよ、まだアキは。大人にならないといけなかったから、なってるだけでな。……警戒もせずに寝られる場所を提供してくれて、すまない、モア。心から感謝する」

 身体がフワッと浮く感覚がした。何かに包まれてるみたい。

「しばらく、ここに住んだらいいって言ったら、速攻断られたけどね」

「甘えるのが苦手なんだ。っていうか、甘え方を知らないんだ。俺は甘え倒したいけど、アキは望まない。俺たちのことを考えて」

「それに、負けず嫌いだしね」

「まぁな、それでここまで来れたんだ」

「お兄ちゃんは大変だ」

「ああ。でも、幸せだ」

 ケイ兄さんはそう言うと、私を室内へと運んでくれた。

 
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