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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます
平和な朝
しおりを挟む所々、危ない単語がポンポン出ている。
酒の肴的なものじゃなくなってるよね……もう。こうなったら、もう止められない。始めから、止める気なんてないけどね。
だって、私を殺そうとした人や使い潰そうと目論んでいた人を助けるほど、人間できてないわ。聖女って言われても、私は冒険者だし。聖女だからって、言われたくもないんだよね。まぁ、そんなことをほざくのは教会の神官だけなんだけど。
「セシルとサルシナ先生、ギルドの皆は省いてね」
セシルは第三王子。クラスメイトなんだけど、冒険者でもあるの。あのお花畑屑王族の中で、かなりまともなんだよ。慰霊祭にも参加してたしね。
「わかった。セシルって、確か第三王子だったな」
ケイ兄さんが確認する。
「うん、そう」
「あの屑の中で、唯一まともに育った子だよね」
ニノリスさんも知っているようだった。
そんな話をしながら、キルの言っていた、聖王国から出れない人リストは着実と作られていったの。
一度寝て、お水をもらいに下に下りたら、まだやってたから、明け方までしてたんじゃないかな。
一応、ゲンジュール聖王国ぶっ潰し会議はまとまったみたいだよ。モアさんの手元にあるリストの束、絶対、買い物リストじゃないよね。追及するのはやめておこう。私は何も見てませんし、聞いてません。
「おはよう、アキ」
「おはよう、モアさん。寝てないんじゃない?」
いつもの優しい笑顔。起きているのは、私とモアさんだけ。あとは鶏と狼だけね。他の皆はまだ夢の中。
「大丈夫。私は眠りが短くて浅いからね」
それはそれで心配だけど、たぶん、それを可能にしているのは魔力量の多さだね。魔力を生命活動の方に回せれば、最悪、食事も睡眠もなしで生活できる。魔力が尽きれば最悪、心臓が止まるかもしれないけど。大概は、仮死状態になるかな。
実際、私もスタンピードの時や座学のテスト前は、一週間食事も睡眠も取らなかった。この前のスタンピードは、慣れない魔法を使ったから負荷が掛かって、途中、少しダウンしたけどね。
可能だけど、褒められたことじゃないのはよくわかってる。
「なら、いいけど。ご飯食べたあと、自分で片付けるから少し休んできていいよ」
「ありがとう、アキ。だったら、少し休ませてもらおうかな」
「うん、そうしてよ。作っている間に、卵取ってくるね」
竹かごを持って庭に出る。
モアさんが飼っている鶏は放し飼い。だから、ちょっとした宝物探しで楽しいの。でもさ……鶏って、木の上に巣を作るのかな? モアさんの鶏だけだよ。野生化したのかな……不思議。
でも、そんなことで驚いていたら駄目だよ。
実はこの鶏、番犬ならぬ、番鶏。闘鶏ってやつ。でも、羽毛は白で鶏冠は赤いけどね。そこら辺にいる魔物を一蹴するほどの強さなの。ここに来た時、私の稽古相手をしてくれたんだよね。規則的な攻撃じゃないから、勉強になったよ。密かに、人語を理解してるって思ってる。
今も、卵を拾おうと腰を屈めた瞬間、「クエッ」と鳴きながら、三羽が三方向から襲ってきたよ。勿論、躱しながら採取してる。鶏が踏ん張った地面が抉れてるよ……マジ、鶏なの?
それで、番犬でもある狼さんは、その間隅でガチブル状態なんだよね。可愛いけど、普通逆じゃない? あとで、モフらせてもらおう。日向の匂いがして気持ちいいんだよ。特に、お腹の毛が最高なの。
ほんと、平和だよね。
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