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第七章 知らない所で死亡フラグと監禁フラグが立ってます
伝言とマジックバックと蜂蜜酒
しおりを挟む買い物を終えて店を出ると、魔紙を一枚取り出し魔鳩を召喚した。
「サルシナさんに知らせるのか?」
「うん、念のためにね」
知らないよりは知っておいた方がいい。情報は武器にも防具にもなるから。
魔力で空中に文字を書き、それを魔石に記憶させる。それを、魔鳩に食わせた。その後、サルシナ先生のフルネームを、また魔力で空中に書くと、それを魔鳩の胸に移動させる。するとそれは、スーと魔鳩の胸に消えた。
「頼むわね」
私はそう言いながら、魔鳩の胸と小さな頭を撫でて上げると、「ポッ」と一声泣いてから、学園に向かって飛んで行った。
「……直接、伝えに行くかと思った」
ここから学園までそんなに遠くないからね。それに内容が内容だから、そう思って当然だね。
「本当はそれが一番なんだけど、私の立ち位置って今微妙だからね……できれば、あまり王都に住んでいる人と接しない方がいいと思って。巻き込みたくないし」
聞いたせいだからか、なんか王都を覆っている空気が違う気がした。うまく説明できないけど。てっきり、祭りのせいだと思ったけど違うみたいね。
「そうか」
「うん。まぁ、試験は顔を出すつもりだけどね。でも、それも状況次第かな」
無理に通わなくてもいいし、最悪辞めてもいい。そうなったら、サルシナ先生がどうにかしてくれるだろう。
魔鳩の姿が完全に見えなくなってから、私とキルは王都の出口に向かって歩き出した。認識阻害の魔法を掛けたまま。
「ただいま~」
私はドアを開け食堂に入る。
「おかえり、早かったね」
にっこりと微笑むモアさんは、ほんと綺麗だよね。
「ちょっと、きな臭いことになって来たから、寄り道しなかったよ。ユリアはどう?」
私はマジックバックをモアさんに手渡しながら答えた。
「ユリアならまだ寝てるよ。それより、きな臭いって何があったの?」
モアさんの顔が少し険しくなる。
「教皇様が聖王国の独立を認めたんだって。だから、二、三日中に入口を閉じるって言ってた。新しい入口はリステラークに開けるって」
「そうなの……」
そう呟くと、モアさんは黙り込む。そして、マジックバックを持ったまま、キッチンの奥に消えた。
「ローブ脱いでくるね」
一声、モアさんに声を掛けてから二階に上がろうとしたら、キルが私を呼び止めた。
「いいのか? 手伝わなくて」
「手伝う? 何を?」
「買ったもの出さないといけないだろ」
「その必要ないよ。あのマジックバックに入った品は、整頓されて収納されてるから」
「どういうことだ?」
「こういうことだよ」
私が持っているマジックバックはモアさんと同じものだからね、見た方が早いかな。
「マジックバック」
そう言うと、空中に一覧表が絵柄付きで出てきた。
「見てわかると思うけど、入っている商品と個数がわかるようになってるの。取り出すのも、選んで必要な数だけ出せる機能も付いてるわ。滅多に使わない機能だけどね。いつもは、商品を頭に浮かべて出す方が多いかな」
「……高性能すぎないか?」
ごもっとも。巷で売られてるマジックバックって、収納に特化しただけだからね。こんな機能付いてない。
「超便利だよ。だから、わざわざ倉庫にしまう必要ないの。それに、マジックバック内は時間が止まってるから食品保存に最適だよ」
そう答えると、キルに両肩をガシッと掴まれた。ちょっと痛い。
えっ!? 何!?
「絶対、表に出すなよ。盗まれないように注意しないといけないな」
それを聞いて笑ったよ。笑いながら教えてあげる。
「私から盗もうなんて、どんな強者なの。心配してくれてありがとう。でも大丈夫。盗んでも取り出せないから。それに、落としても戻るように魔法付与してるから、平気」
「……Sランクは持ち物までとんでもないな」
引かれること言ったかな?
「何してるの? 二人とも。お茶とおやつ用意したから、早く荷物置いておいで」
立ち止まったままの私たちに、モアさんが声を掛けてきた。
「は~い。あっ、これ、モアさんにお土産」
私は蜂蜜酒をモアさんに押し付けてから、ユリアの様子を見るために二階に駆け上がった。
なんか、照れるんだよね。
プレゼントなんて滅多に渡したことないから。
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